高集光型PVセルが大電力レーザ給電を可能にする
高性能、高電圧VMJ光起電力セルが、レーザ光による電力の大電力送電を可能にする。アプリケーションには、小型UAVやリモートセンシングのリモート給電などがある。
レーザ給電では、レーザ光源から自由空間(PB:Power Beaming)もしくは光ファイバケーブル(PoF:Power over Fiber)のいずれかにより光起電力(PV)レシーバまで電力を伝送することが必要になる。PVレシーバには、PVセル、またはPVセルアレイが含まれており、特定のレーザ波長を高効率で電力に変換するように最適化され、一般的には30〜50%の範囲となっている。用途には、無人機(UAV)、ロボット、苛酷環境、あるいはリモートセンサの遠隔給電などのアプリケーションがある。
台湾のMH GoPower(MHGP)は、大電力レーザ給電を可能にする高性能シリコンベース垂直多接合(VMJ)光起電力(PV)セルを製造している。VMJPVセルの3Dデザインは、シリコンのバルク特性を利用した大電力レーザ給電中の熱マネージメントを行う。これは、デバイスにフィンが集積されていることによる。ここでは、自由空間PB及びPoFのアプリケーションと価値提案を探求し、併せてハイパフォーマンスVMJPVセルの背後にある技術を展望する。
なぜ電力放射供給なのか
バッテリー源からの電力と比較したとき、フリースペースPBが持つ利点には、運用時間の増加、再給電の減少または排除、潜在的な軽量化がある。こうした利点をUAVアプリケーションの検討を例に説明する。電力がUAVのPVレシーバに放射供給され、電力に変換されて、それが利用する電力を上回る限りにおいて、UAVの飛行時間は理論的には無期限に延ばせる。
飛行時間を延ばすことにより、運用に影響し技術的な危険な、再充電のための着陸戦略の必要性が減少する。また、滞空延長が必要なら、予備のバッテリを追加してUAVの重量を増やすよりも、軽量なPVレシーバを設置して滞空延長要件を達成することができる。これは、最大積載量をさらに増やせることにもなる。
なぜ光ファイバ給電か
電力を銅線ではなく、光ファイバで伝送するメリットはいくつかある。銅線による電力供給は、RFや磁界干渉を受けやすい。これは電力サージあるいは装置に障害を起こす他の信号異常の原因となり、システムの信頼性を損なう。さらに、銅線は落雷の接地経路となり、高圧あるいは絶縁不良環境ではスパークを起こす。レーザ光による送電にはこうした問題は全く存在しない。
こうした利点の恩恵を受けるアプリケーション例には、センサや他のデバイスがある。これらは苛酷、爆発性、高電圧環境(電流センサ)で動作するもの、雷などの苛酷な気候に晒される機器(一例として屋外のビデオ監視カメラ)、雑音耐性が要求される機器(医療モニタリング装置や軍用アプリケーション)がある。
市場参入障壁
レーザ給電アプリケーションの主要な制限要因はシステムコストであった。これらのコストの評価基準は、給電ワットあたりのコスト(コスト/W)である。デバイスサイズの縮小と効率向上により、レーザシステムのコスト/Wは飛躍的に下がってきており、さらに下がり続けると見られている。しかし、レーザはレーザ給電ソリューションのコストの一部でしかない。他の重要コンポーネントはファイバ(PoF用)、オプティクス、PVレシーバ(セルアレイ)サブシステムである。
PoF用のオプティクスは、システムコスト全体で小さな部分である。しかし、フリースペースPB(power beaming)では、集光用光学部品のコストは、アプリケーションの距離の増加にともなって増加する。これは、レンズサイズが大きくなるためである。その結果、オプティクスのコストは直ぐに、フリースペースPBシステムのコストを支配するようになる、したがって実用域では制限要因となる。とは言え、数kmの範囲では、経済的、技術的に利用可能である。
最後に、レーザ給電ソリューションの実行可能性では、PVレシーバパワー密度が重要要素になり得る。最終的にシステムコストを抑制するには、レシーバパワー密度をより高くすることが必要になる。また、これは2つの方法で実現可能だ。①PVレシーバの光強度増強のためのパワー向上、あるいは②PVレシーバの効率向上である。
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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2015/05/LFWS201505_ft2_laser-powered_devices.pdf