極細光ファイバと表面音響学で微小センサを実現

ティボー・シルベストル、ジャン-シャルル・ボノ

微小なサブ波長径の光ファイバ、つまりマイクロファイバ内の表面音響波によって生ずるブリルアン光散乱を利用して低コストの新しい光センサを作ることができる。

サブ波長径の光ファイバは、光マイクロファイバ、マイクロワイヤー、ナノワイヤーとも言われ、標準的な光ファイバの微小な仲間である(1)、(2)。これらの髪の毛のようなガラスのシルバーは、光ファイバを一本の髪の毛よりも100倍細くなるまで延伸して製造する。これらは、基礎物理学や技術応用の両方で非常に魅力的な数多くの光学的、機械的特性を持っている。
 強い光閉じ込めと強化された非線形光学効果に加えて、光マイクロワイヤーは大きなエバネセント場も持ち、比較的大きな光ファイバでは、現状ではできないようなアプリケーションも可能にする。また、スーパーコンティニウム生成用途で、マイクロファイバは、カー効果(Kerr effect)や誘導ラマン散乱を大幅に強めることができるが、この小さな導波路におけるブリルアン光散乱は、まだ研究されていない(3)。
 人の髪の毛よりも50倍細いシリカ光マイクロファイバに光を閉じ込めることによって、フランスのブザンソンにある国立科学研究センター、CNRSFemto-ST研究所のグループは、パリの光学研究所(Institut d’Optique)の研究者と協働して、初めて表面音響波からの新しいタイプのブリルアン光散乱を観察した。この現象は、ファイバの環境によって変わるものである。これを利用して、新しいアプリケーションを狙う、ローコストの光ディフューザや画期的な高感度光センサを開発することができる。

図1

図1 概略図が示しているのは次の通り。テーパーシリカマイクロワイヤー(a)はブリルアン実験セットアップ(b)で使用される。DFBは、分布帰還レーザ。FCは、10/90ファイバカプラ、EDFAはエルビウム添加光増幅器。スペクトル(c)は、2つの表面弾性波と3つのハイブリッド横・縦波による周波数サイドバンドを示す。

音からの散乱光

ブリルアン散乱は、光ファイバにおける最も重要な非線形光学過程の1つであり、光と音響波とのコヒレント相互作用から生ずる。重要なアプリケーションとしては、光センサから通信まであり、またスローライト、ファストライト伝搬も可能にする。標準的な光ファイバでは、光は体積弾性波の横波と縦波を起こして相互作用させ、導波音響波型ブリルアン散乱(GAWBS)や誘導ブリルアン散乱(SBS)などのよく知られた物理効果を生成する(4)、(5)。
 サブ波長径の光ファイバでは、われわれは先頃初めて、表面音響波からのブリルアン光散乱の実験観察を報告した(6)。こうした波を観察するために、1μm径のシリカファイバにレーザビームを注入した。レーザビームがファイバを伝搬するにしたがい、電歪光学力によりワイヤー内に微小な振動を引き起こし、これが表面を数ナノメートル動かす。
 この歪が表面音響波となる。音響波は、ワイヤー面に沿って3400m/sの速度で伝搬する。今度はこの音響フォノンが光伝搬に影響を与える、つまり、光の一部が後方に散乱する。これはドップラ効果によるキャリア周波数のわずかなシフトによるものである。この周波数シフトは、5〜6GHzのオーダーであり、標準的な光ファイバの標準的なブリルアン周波数シフト(約11GHz)に及ばない。
 実験に使用したシリカマイクロワイヤーは、オプティク研究所で標準シングルモード光ファイバ(直径125μm)を加熱し、8cm長で直径1μmとなるまで引き伸ばして製造した(図2)。FemtoST研究所のわれわれの実験室で、音響波を検出するための実験セットアップを行った。

図2

図2 シリカマイクロワイヤーにおける音響波スペクトルと変位の数値シミュレーションを示す。上図画像は、ワイヤーの直径が0.6〜3.5μmまで変化するときの周波数の関数として音密度を色プロットで示している。白い矢印は表面音響波、ハイブリッド音響波、強い結合作用による反交差を示している。下図は、A、B、C、Dとラベルを付けた表面モードおよびハイブリッド音響モードと関連するハイブリッドワイヤーにおける横方向と軸方向の変位を示している。

(もっと読む場合は出典元へ)
出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2015/05/LFWS201505_ft1_specialty_fibers.pdf