レイトレーシング機能が追加されたコムソルマルティフィジックスソフトウエア

スウェーデンCOMSOL社製の有名なスイート、コムソルマルティフィジックスソフトウエアパッケージは、多様なタイプの物理現象を数値的にモデル化する機能をもつが、最近、さらにフォトニクス分野で活躍する科学者や技術者向けの特別な幾何光学モジュールが追加された。その結果、これまでスイートのRFおよび波動光学モジュールを使って高周波(電波と光の周波数域)電磁モデリングを行ってきた科学者や技術者たちは、今や、相対単純性と新しいレイトレーシング法を活用して物理モデルを作成することができる。
 このような過程はこのソフトウエアパッケージの他の複数のモジュールを使って個別または他の任意の物理学と組み合わせてモデル化できるので、熱、機械、電磁気、電気、化学、流体流などを含むさまざまなタイプの物理現象の同時かつ相互に関係づけられたモデルの構築も可能である。
 RFモジュールと波動光学モジュールはいずれも、いわゆる電磁波の周波数域のインターフェースを含み、電磁波方程式の全波解を計算する。「全波解は2、3の波長の長さスケールで非常に正確な結果を生むが、有限要素メッシュによってすべての振動を決定しなければならないため、高周波域で大きな幾何構造において使用すると計算コストが高くなる」と、コムソルソフトウエア開発者、クリストファー・バウチャー氏(Christopher Boucher)は説明する。
 「幾何光学モジュールは、幾何光学インターフェースを含み、光学的に大きすぎて有限要素メッシュを使った個々の波動の決定が非現実的となる距離の電磁波伝搬のモデリングを容易にする」とバウチャー氏は語っている。「電磁波、ビームエンベロープインターフェースと比べると、幾何光学インターフェースはより近似的になるが、波動伝搬の方向を事前に知る必要がない。それゆえ、幾何光学インターフェースは、境界で反射と屈折を起こしながら波動が多数の方向に伝搬する大きな構造のモデリングに有利である」。

熱誘起焦点シフトのモデリング

幾何光学モジュールの追加は、例えばレンズ内の熱誘起焦点シフトの物理学ベースのモデリングを可能にする(図1)。「ここで、レンズを通って伝搬する光線はガラスに吸収され、その強度を部分的に失い、その結果レンズを熱くする」とバウチャー氏は語っている。「レンズの温度が変化すると、屈折率が変わり、レンズは変形する」。これらの効果が光線軌跡を乱す可能性があるため、正確な解を得るには、熱変形したレンズ系で光線追跡を再実行する必要が生じる。幾何光学モジュールを使って、自己無矛盾な解が得られるまで、光線軌跡の計算と結果としての温度場との間を行ったり来たりするソルバーループも作成できる」。
 幾何光学モジュールを使って光線強度を計算し、各光線のストークスパラメータと主波面の曲率半径に変数を割り当てれば光線の偏光も解析することができるとバウチャー氏は指摘する。

図1

図1 1対のシングレットレンズは3kWの光ビームをコリメートし、集光する。レンズによる光の吸収とその結果としてのレンズが受ける光学的および熱機械的効果がモデル化される。光線追跡は結果として生じる焦点シフトとスポットサイズの変化を決定する。(資料提供:コムソル社)

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2015/03/LFWJ1503_worldnews_COMSOL.pdf