照明器具用LEDの効率向上は続くが、大きな市場圧力は存在する
LEDの技術と現在の市場状況は連携して、この多様な光源が信じられないほど急速に普及している。照明器具用LEDの前途は技術革新で切り開かれているとは言え、差し迫った市場課題も散見される。
わたしのお気に入りの若手技術系ライターの1人にスティーヴン・ホーキング(Stephen Hawking)がいた。「時間の略史」(A Brief History of Time)は、シカゴの長い冬の日に読んだ素晴らし
い娯楽だった。固体照明(SSL)の歴史は実に浅く、本当に面白いものだ。思うに、2004年、照明用LEDは珍しい存在であり、ほとんどの照明会社がシートメタルに目を向け塗装したりしていたが、エレクトロニクスの世界に対する知識や関心はほとんどなかった。
この間、効率、色度、演色評価数(CRI)、相関色温度などの用語はほとんど知られておらず理解もされていなかった。最終的にはランプメーカーは、そうした詳細が大事であると考えるようになった。静電放電(ESD)は禁句であった。光度試験には相対基準が用いられており試験技術者の報告には光源のルーメンが記載されていた。「LEDフィクスチャのルーメン値とは何を意味するのか? それが今測っているものではないのか?」。
蛍光照明の効率は恐るべきものであり、従来の反射板タイプが85+ルーメン/W(lm/w)で3000ルーメン、コストは30ドル。それと比べて600ルーメンのLEDダウンライトはかろうじて25lm/W、製造コストは100ドルを超え、見たところ勝ち目はない。さらに状況を悪化させたのは、LEDを造るコンポーネントメーカーの数社が照明メーカー変更に抵抗し、当時使用している旧式の光源にするように挑んできた。
幸いなことに、照明器具メーカーは、その挑戦を受け入れた。投資回収計算表のようなツールで武装したエネルギー省固体照明(DOE SSL)計画、CALiPER、エネルギースター(Energy Star)、また
様々な高等教育機関のガイドにしたがって適応し、過去10年で大きく進歩を遂げた。初めて設計されたLEDフィクスチャは、従来の光源で使用された同じフィクスチャのLED版だった。今日、照明器具は、LEDの利点を最大化するようにLED技術の周囲を含めて設計されるようになっている。後で考えると、すべて非常に面白いが、困難な課題だが何とか切り抜けている。
白色LEDの選択肢
知っての通り、白色光は可視光域の多くの波長の合成物である。LEDを使ってこのスペクトルを作る方法はいくつかある(図1)。今日使用されている主要技術は蛍光体変換LEDであり、主に青色色素と蛍光を直接あるいは間接に発光面と接触させて作る。第2の手段は狭帯域エミッタを追加して同じ効果を出すが、より明確なギャップが可視光スペクトルにある。
しかし白色LEDを作るごく最近のトレンドは、赤/緑/青(RGB) LEDの活用である。ここでは、RGB(A)とRGB(B)+青/蛍光体変換(PC)を使う、これは光スペクトルがアンバー(琥珀)RGB(A)もしくは他の狭線幅エミッタ、RGB(n)によって強化される方法。デザインによっては、このスペクトル強化は、PC LEDを主光源に使用した上で用いる。さらに、特別なスペクトル成分を用いて光の雰囲気を変え、色を根本的に変えない。真昼の太陽あるいは夕日をシミュレートするような効果が実証されている。
このRGBオプションは、色混合チャンバを使用する照明器具では一段と勢いが強まり始めている。色混合チャンバによってスペクトルが混合され、フィクスチャの内部で均一化される、あるいはフィクスチャの発光面で色混合ができるような面が存在する。いずれの場合でも、効果は色分離がない均一な光源となることである。これは、赤+PC LEDを使用する確立した技術とは別である。赤+PC LEDでは、スペクトルは赤色成分で強化されるが、全体的な色温度はフィクスチャの寿命を通じて一貫しており、コントロール入力をベースにした色の変化は起こらない。ここでは、色品質向上、自然昼光を再現することが目的である。フィクスチャに統合制御を加えると、この新しい技術はリアルタイムの照明要求に適合する理想的な照明空間に向けた要求に対処し始める。
全体として、これら後者のRGBと赤+PC法は興味深いトレンドを表している。しかし、最終的には、マルチスペクトルエミッタやPC+RGBオプションが最良の選択になり、概して、つまり全体として、蛍光体変換だけを回避することになるかも知れない。また、これらのオプションはフィクスチャの出力を最も望ましい色に調整できるという利点も加わる。
2013ハイブリッド赤+PC LEDオプションに対するDOE 2014複数年プログラム計画(MYPP)からの現在のデータポイントは、他のオプションよりも効率が高いことがチャートに示されている(表1)。ここでは、光放射効率(LER)は実際の測定値であり、LER(最大)は入力光ワットあたりの理論的発光効率として定義されている。LER/LER(最大)は、実際の値または期待値を示すパーセンテージとして示されており、最大の理論的ルーメン出力を乗ずることで実際のルーメン/W効率を示す。
DOE MYPPロードマップは、2020年照明器具LED目標を定めている。業界は適度に密着して、このような目標を追求してきたので、定まった期間内の目標達成は、すでに開発された改良の多くによって可能である。最先端を前提とすると、理論的な目標とは、達成できるとは限らない最大の可能性を表すものである。
どんな理論的最高値でも同じことだが、実際的な現実世界の問題のために、克服できない要素があるかも知れない。RGBとPC(蛍光体変換)の表成分からのデータを用い、赤色の単一スペクトル赤が15%加わったと仮定すると、様々なオプションに対する調整され、重み付け(規格化)された数字は、提案された方法の全てに対して長期の理論的なLER(光放射)が統計的に等しくなることを示している。しかし、2020年の目標が、達成される可能性がある最大の実用的な結果であるなら、PCLEDと赤+PCが明確なリーダーとして立ち現れることになる。赤+PC技術が過去5年にわたり享受してきた利益は、PC LEDのLERにおける進歩によって消し去られることになる。
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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2015/03/LFWJ1503_Photonics_Applied_LED.pdf