ピンライトアレイで実現する軽量シースルー型ヘッドマウント・ディスプレイ

従来のヘッドマウント型の拡張現実ディスプレイは、現実と仮想現実を組み合わせる方式(そして量)において多様である。1つはグーグルグラスだ。これは小さなディスプレイを片方の眼の正常な視野から離した位置で使うため、歩きながらあるいは仕事をしながらでもディスプレイを利用できるが、ほとんど瞥見するだけの機能になる。もう1つは、両方の眼の視野を完全に覆うバーチャルリアリティゲームヘッドセット、オキュラスリフトだ。これはより深い実体験感を作り出すが、外界との直接的接触をすべて遮断する。
 1つの妥協案は、視野上に透明な画像フィールドを重ねるヘッドマウント型ディスプレイの利用である。これを使用するための従来法は、半透明のビームスプリッタを通して眼に画像を投影する光学系が必要である。これらの光学系は通常重くてかさばる。
 米ノース・カロライナ大チャペルヒル校(UNC;University of North Carolina at Chapel Hill)とエヌビディア研究所(Nvidia Research)の研究チームは、彼ら自身のユニークなアプローチを開発した。それは、従来の光学系を全く使用せず、代わりに、「ピンライト」アレイ(図1)を利用して透明な広視野画像オーバーレイを形成する方法である(1)。結果として生まれたのが拡張現実メガネであり、軽量で、110°の視野を持つ。これは一般のメガネとほぼ同じである。

図1

図1 離散的な六角形のピンライトアレイからの光(上部)は、空間光変調器(SLM)を通して投影され、眼の網膜上に広視野画像を生成する。ピンライトアレイとSLM(1つの眼に対してそれぞれ1つ)は眼鏡のフレームに取り付けられる、軽量のウェアラブル拡張現実ディスプレイである。右図はその概念を示す。(資料提供:UNC)

タイル状の網膜像

拡張現実メガネでは、左右の眼それぞれがそれ自身のピンライトアレイを備えている。このメガネは白色光でエッジ照明される透明アクリルシートから成り、そこには内部全反射された光を捕え、光のピンポイントを生成する小さな窪みの六角形アレイがある。ピンホールカメラがレンズなしで像を形成するのと同じ方式で、ピンライトアレイは集束光学系(ユーザの瞳孔を除く)を不要にする。
 眼とピンライトアレイとの間に、空間光変調器(SLM)が、ピンライトアレイから眼の方向に13.5mmの位置に置かれている(プロトタイプでは、研究チームはソニーから市販されているモノクロ液晶ディスプレイ(LCD)を使用した)。
 単一のピンライトと眼の瞳孔によって定義される光円錐は丸いエリア上でSLMを横切る。ピンライト効果によって、画像セグメントがSLM上で表示されると、同じ画像セグメントが眼の網膜に投影される。ピンライトの全アレイが多数の小さな画像セグメントの投影を可能にし、それらのすべてが網膜上で組み合わされ、ディスプレイ画像を形成する。同時に、眼はほとんど透明なSLMとピンライトアレイを通して見るので、投影画像は外界のビュー上に薄く重ねられる。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2015/01/LFWJ0115_wn_p10.pdf