高速通信のエネルギー需要削減に向けた、シミュレーションを用いた光学部品冷却

ドーナル・ハーノン、ライアン・エンライト

シミュレーション駆動型設計は、指数関数的に増加するデータネットワークのエネルギー需要とコストを理解し、削減するために用いられる。

エネルギー需要は、複数の業界にまたがる障害になりつつある。ビルの運用に関連するエネルギーコストの削減から、指数関数的に拡大する高速ネットワークの維持にいたるまで、エネルギーの検討は成功に欠かせない要素である。エネルギー効率を改善する必要性が、拡張可能でエネルギー効率の高い方法で新しい技術を設計および実装するための研究を促す要因となっている。
 仏アルカテル・ルーセント社傘下の米ベル研究所(Bell Labs Research AlcatelLucent)は、「GreenTouch」コンソーシアムを設立した。情報通信技術(ICT:Information and Communications Technology)機器、プラットフォーム、およびネットワークのCO2排出量削減を目指す研究者のための組織である。GreenTouchの目的は、ネットワークのエネルギー効率を2010年の水準の1000倍に高めるために必要な主要要素を、提示して実証することにある。
 アイルランドにあるベル研究所の熱管理およびエネルギーハーベスティング研究グループ(Thermal Management and Energy Harvesting Research Group)は、さらに長期間にわたるアルカテル・ルーセント社の研究を、電子部品の冷却とエネルギーハーベスティング技術の開発へと展開させている。同グループは、多大な節減効果を約束する、新しい省エネルギー手法を開発した。ある研究プロジェクトでは、光ファイバ通信ネットワークを介したレーザ光によるデータ伝送に用いられる、フォトニクスシステムをめぐる熱管理を改善することによって、1ビットあたりのエネルギーを50〜70%削減することを目指している。

マクロTECからマイクロTECへ

ここ数年間のデータトラフィック量の爆発的な増加は、現行のネットワークに多大な歪みを引き起こしている。現行のネットワークは、エネルギー効率よりも、コストの低減とカバレッジの拡大を目的として設計されている。エネルギー管理は、次世代の電気通信製品を導入する際の主要な障害になりつつある。
 この問題に対処するために、熱管理チームは、電子部品と光学部品の冷却に関するすべての側面を調査している。同研究チームは、マイクロメートルスケールからマクロレベルにいたるまでの複数の長さスケールにおいて、マルチフィジックス・シミュレーションを用いることによって、製品性能に影響を与えるメリットを実現している。
 今日のフォトニクスパッケージには、すべてのレーザを周辺温度未満に冷却するための大きなマクロ熱電モジュールが採用されている。熱電部品は、精密な温度制御に用いられるが、非常に効率が低い。各レーザは、それぞれの非常に近くに配置される抵抗加熱器によって特定の周波数にチューニングされる。各抵抗加熱器は、レーザ周囲の局所的な熱流束を直ちに倍増させるため、それがさらなる熱問題の要因となる。つまり、今日のフォトニクスパッケージの熱設計において、各レーザは、再び加熱が生じる非効率的な方法で冷却されている。
 この手法はスケーラブルではないというのがわれわれの見解である。ネットワークにおけるデータトラフィック量の爆発的な増加によってパッケージサイズがますます小型化していること、そして、長期的にはシリコンフォトニクスに移行して、基板面積とコストの削減に向けた究極的な高集積化が必要であることを考えると、特にそういえる。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2015/01/LFWJ0115_ft_p28.pdf