バイオイメージングのコントラストと解像度を量子増強するスクイーズド光

光子間の量子相関を使えば、生体顕微鏡使用アプリケーションにおけるショット雑音や回折限界を超えることができる。生物学的な細胞内構造の物理的サイズは可視光の回折限界よりもはるかに小さいので、量子増強イメージング法を使ったサブ回折限界結像が可能である。
 原理証明量子増強実験でエンタングルメント光子を使ったイメージング改善が示されたが、残念ながら、エンタングルメント光子源のパワーレベルは低く、そのような実験もまた回折限界の制約を残したままであった。オーストラリアのクイーンズランド大学(University of Queensland)とオーストラリア国立大学(Australian National University)の研究チームは、その代わりに、光のスクイーズド状態を使って生物学的構造のサブ回折限界イメージングを実現した(1)、(2)。

スクイーズド光の発生

スクイーズド光は、その要素(振幅または位相)の1つの雑音が標準量子限界以下となる、非古典的な光の状態である。換言すれば、その光で測定される光電流は非常に低く、古典的なフォトンから予測される雑音よりもさらに低いということだ。さらに、スクイーズド光は、エンタングルメント光子源とは異なり、画像コントラストを改善するために任意のパワーレベルの光源を使って発生させることもできる。
 酵母細胞内の粒子を追跡する実験装置では、スクイーズド光を生成するための振幅スクイーズド局部発振器と暗視野照明を提供する振幅変調プローブを使って、プローブ散乱光と局部発振器との間の干渉信号を介して粒子を追跡した(図1)。生きた酵母細胞内の粒子のリアルタイム粘弾性測定によって、コヒーレントなレーザ光使用よりも64%速い収集速度で、細胞の構造と機能に関する情報を得た。健康あるいは癌化した細胞を識別することもできた。

図1

図1 酵母細胞内の細胞内構造を追跡し、画像化するための実験装置は、局部発振器からの振幅スクイーズド光とプローブ光源を使用する。粒子はトラッピングフィールド(黄色)によって操作され、イメージングフィールド(緑)によってCCDカメラ上に可視化される。PBS=偏光ビームスプリッタ; λ/2=半波長板。(資料提供:クイーンズランド大学 )

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2014/11/WN2_LFWJ2014_11-3.pdf