シリコン微光PDはフォトンを逃さない

ジョン・ウォレス

アバランシェフォトダイオードやシリコンフォトマルチプライヤの派生技術が微光検出ニーズに役立つ。必要とされればシングルフォトンカウンティングにも使える。

フォトダイオード、半導体ベース固体光計測デバイスは、一般にコンパクトで効率的であり、耐久性が高い。これら3つの特徴についてはフォトニクス技術者の満足度は特に高い。(4番目の特徴、ローコストは的を射ていることもあるが、アプリケーションによる)。
 フォトダイオードは、吸収したフォトンから電子・ホール対を生成する。結果としての光電流によって入射光の特性が明らかになる。光電流に加えて、暗電流は、微光計測の重要要素になる。PIN接合を持つフォトダイオードは一般に、p-n接合のフォトダイオードよりも高速応答である。
 多くの多様な半導体がフォトダイオードの基盤として使用でき、シリコン(Si)、インジウム・ガリウム・ヒ素(InGaAs)、ガリウムナイトライド(GaN)は3つの一般的な材料である。各材料は、それ固有の波長範囲を持っており、長波カットオフは材料のバンドギャップによって決まる。例えば、GaNは室温バンドギャップ3.4eV(365nm)。InGaAsは1.42〜0.34eV(870nm〜3.6μm)の範囲であるが、混合に依存する。Siのバンドギャップは1.1eV(1.1μm)なのでGaNは紫外(UV)で、Siは近紫外から可視を越えたところまでに使える。InGaAsは一般に、近赤外(NIR)で用いられる。
 利用できる多くのタイプのフォトダイオードをカバーすると一冊の本を書くことになるので、ここでは範囲を1つのフォトダイオード材料(Si)と1つの極めて重要なアプリケーション、微光センシングに狭める。

APDとSiPM

アバランシェフォトダイオード(APD)は、多くの微光計測デバイスやシステムの心臓部にある。APDはリニアモードまたはシングルフォトン感度では、デバイスのブレイクダウン電圧の上、いわゆるガイガーモードで使用できる。ガイガーモードで動作する多くのAPDは、いわゆるシリコンフォトマルチプライヤ(SiPM)を形成するために長方形アレイに組み込むことができ、これは多くの微光アプリケーションで、従来の(非半導体ベース)光電子増倍管(PMT)と競合する。
 米SensL社の販売・マーケティング担当VP、ウェイド・アプルマン(WadeAppleman)氏は、微光センシング市場は広く認められている幅広い技術カテゴリーに定着しているとの見解を披露している(表1)。
 SensL社は、様々な形態のSiPMを提供している。これに含まれるのは、表面実装マイクロリードフレーム(MLP)スタイル、それに1×1、3×3、6×6mm2面積の能動型ディテクタサイズがあるとアプルマン氏は記している。SensL社の最新SiPM、C-Seriesは、2014年8月に発売され、スペクトル範囲は300〜800nm、ピークフォトンディテクション効率は(PDE)は420nmで41%となっている。
 C-Seriesデバイスは、アプルマン氏によると暗雑音が非常に低く、暗計数率<100kHz/mm2である。他の特性としては、出力均一性±10%、ブレイクダウン電圧低下はデバイスからデバイスまで±250mVの範囲。
 「SiPMは微光に感度があるアプリケーションで幅広く用いられている。医療イメージング、危機管理と脅威検出、自動車や産業用ライダを含む」とアプルマン氏は言う。「医療イメージングでは、最も一般的なアプリケーションは核医療陽電子放出型断層撮像法(PET)スキャナのディテクタとして用いている。この場合、ガン検出で用いられる全身スキャナには3万個を越える3mm SiPMディテクタが搭載されていることもある。放射線モニタリングや放射線特定では、SiPMはアイソトープ特定用にハンドヘルドページャサイズデバイスに用いられている、あるいは出荷コンテナやトラックのイメージングにガントリー型ポータブルスキャナでも用いられる。自動車では、自動車運転者支援(ADAS)アプリケーションで段々と興味深い利用法がでてきており、SiPMはPINダイオードやAPDの代わりに用いられる。その理由は、明るい光のアプリケーションでもよく見える、また一段と小さな反射レーザパルス信号を区別できるからだ」と同氏は説明している。
 米レーザコンポーネンツDG社は、2004年にSiAPDの内製を始めた。400nmから850nmを越える波長範囲で動作するシングルフォトンAPDシリーズを生産している。デバイスの範囲には、エピタキシャルおよびリーチスルー構造が含まれる。アクティブエリアの径は230μm〜3.0mmであり、シングルフォトンカウンティングモジュールでもある。リーチスルー設計では、電子増幅は薄い高電場領域で起こる、それに対して入射フォトンは遙かに厚い領域で吸収される。エピタキシャルデザインは、厚いウエハ上での製造を可能にするSi構造ステップを追加しており、これがなければ直列抵抗が大幅に増えることになった。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2014/11/PP_LFWJ2014_11-12.pdf