2つの卓越した赤外光学材料、ALONとスピネル

モーハン・ラミセッティ、リー・コールドマン、スリ・サストリ、ウダイ・カシャリカール、ナジェンドラ・ナグ、スリーラム・バラスブラマニアン

ALONとスピネル(尖晶石)は、赤外(IR)オプティクスに使われる2つの透明セラミックスであり、それぞれ優れた特性の組合せを示している。2つを比較することによって工学技術者は、仕事に適した材料を選択することができる。

2つの赤外光学材料、アルミニウム酸窒化物(米サーメット社〈Surmet〉がALONという名で商品化)は、立法スピネル結晶構造、それにマグネシウムアルミネートスピネル(通常スピネルと言う)は、いくつかの価値のある優れた特徴を備えている(1)。中でも耐久性、広帯域スペクトル透明性(UVから中赤外まで)に加えて、耐薬品性、高硬度、高力価が挙げられる。
 これらの材料は何十年も前からラボレベルの研究はされてきたが、市販されるようになったのはつい最近のことである(図1)。防衛やオプティクス産業に対する関心の高まりに後押しされて、ここ数年でこれらの材料が市場に出てきた。さらに、それらの機械的、光学的特性を組み合わせることで、その材料は多くの他の分野でも極めて魅力的になっている。
 両方の材料ともガラスと同じように見えるが、ALONやスピネルの何が特別なのか。この問いには多面的に答えることになる。まず、ALONとスピネルは幅広い範囲の波長に透過性がある。つまりガラスがスチールと同様に不透明であるスペクトル領域で、それらは透明である。第2に、その優れた機械特性によって非常に優れた環境耐性が生まれ、それらはガラスと比べると耐摩耗性は10倍程度高い。また、
温度耐性もガラスが耐えられるよりも遙かに高く、化学環境に対しても耐性が著しく高い。
 別の透明セラミック材料、サファイア(アルミナの単結晶形)も硬く、耐性が高く、透明である。では、ALONやスピネルのサファイアとの違いは何か。透明になるためにサファイアは単結晶ブールまたはシートとして成長させられ、続いてカットして研磨し、最終コンポーネントになるには滑らかになるまで磨かなければならない。一方、ALONやスピネルは、その立方結晶構造のお陰で、多結晶形態で透明であるため、従来の粉末加工技術を用いて製造できる。
 サファイアは、成長率が非常に遅い(100kgブールの成長に18日かかる)という限界もあり、複雑な形状や大きなサイズ(現状の最大サイズは約16in.幅)を造ることができない。サファイアが高硬度(モース硬度ではダイヤモンドの次)であることを考慮に入れると、このブールから最終コンポーネントを彫り込むのは非常に時間がかかる、高価な提案になる。
 一方、 サファイアに近 い硬 度 のALONとスピネルは粉末加工で製造できる。ここでは、コンポーネントの基本形、いわゆる「グリーン体」(成型体)は粉末から造られる。これには、通常使用されている技術、粉末冶金、射出成形、冷間静水圧プレスなどを用いる。グリーン体は、チョークの堅さであり、50%程度の密度しかなく、かなりの空隙率である。グリーン体は、一般に扱いやすい強度であるが、手で壊せる程度の弱さである。さらに、一連の熱処理段階により、完全な光学密度と全強度を実現できる。その粉末加工経路により、これらの材料は大きなサイズで製造でき、単結晶サファイアでできる。少なくとも、実用的にできるよりも複雑な形状に製造できる。
 ALONとスピネル光学セラミックスは、単結晶サファイアの代替品となるほど安価ではないが、大きなサイズあるいは、複雑な形状のコンポーネントを必要とするアプリケーションには、よりよいソリューションとなる。粉体加工で容易になる、もう1つの優れた特徴は、コンポーネントの中に金属構造を埋め込み、それでいて透明性を維持できることである(例えば、図1上段右端の方形タイル)。

図1

図1 サーメット社が製造したALONおよびスピネルコンポーネントの例を示している。金属グリッドを埋め込んだコンポーネントも含まれる(上段右)(資料提供:サーメット社)。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2014/11/feature3-_LFWJ2014_11-9.pdf