熱IRイメージングを低価格にする薄形シリコンフレネルレンズ

フランスの研究グループは、熱赤外線(IR)カメラを単純化して、低価格化することが可能な、小型で薄いシリコン(Si)フレネルレンズを設計し、作製した(1)。このレンズの解像度はさほど高くはないが、人の存在やいくつかの一般的な特徴を明らかにするには十分である。このイメージャの潜在的アプリケーションは、特に家庭用の、より安価な監視などがあると研究者たちは語る。
 この非球面レンズは、厚さが1mm、f/#が1.5、直径が4mm弱、そしてフレネル面がレンズの内側(像側)に形成されている(図1)。レンズストップは、レンズの前1mm以内の、ほぼテレセントリックな位置にセットされている。その結果として、65°入射角の視野周辺の光線はレンズのエッジ近くの領域によって集光され、入射角0°の光線を集光させるレンズ領域とは重ならない(そして、もちろん、主光線は、テレセントリックに、すべて光軸に平行である)。
 レンズを薄くすることで、通常は使えないとされているSiをIRスペクトル領域の屈折光学材料としての利用を可能にした。重要なことは、このレンズは、フレネル面がSiの分散をほぼ完全に補償するため、7 ~ 14μmのスペクトル範囲にわたって色収差がない。
 著者らは、彼らの薄いレンズ設計は、ゲルマニウムやカルコゲナイドなどの従来材料よりも安い材料を使用したことが、熱IRカメラレンズの低コスト化に向けたブレークスルーになった、と語っている。彼らは、仏ONERA(国立航空宇宙研究所)とInstitut d’Optique(光学系高等学校)、CNRS(国立科学研究センター)、ULIS(図書館情報大学)に所属する。

図1

図1 厚さ1mm、直径4mm弱のフレネルレンズは、比較のために、ユーロセントと並べて示されている(挿入図)。このレンズは、Siレンズでは通常不可能なIR波長での撮像を可能にした。(資料提供;オプティクス・レターズ)

スーパーゾーン回折光学素子

フレネルレンズは、通常、2つの形がある。①「灯台」形;個々のゾーンが比較的大きく、屈折だけで集光させる(このタイプは分散が屈折材料によるものだけのため比較的小さい)。②回折バージョン(通称「フレネルゾーンプレート」);これは光の位相をステップ状に正確に集光させる小さいゾーンで構成され、回折だけで焦点を合わせる(このタイプは回折本来のスペクトル特性によって分散がかなり大きくなる)。
 新しいシリコンレンズは灯台スタイルと回折フレネルレンズスタイルの中間である。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2014/10/WN2-_LFWJ201409-2.pdf