対話式ソフトウエアの恩恵を受ける光学設計

ジョン・ウォレス

光学設計プログラムは、レンズや照明器具の設計、解析、公差、測光法的に適応させた設計、外部のCADソフトウエアとのインタフェースを網羅する。

コンピュータが登場する前は、レンズ設計は、膨大な数の計算-数学の公理、数式の単純化、長年かけて開発された技術に依存していた。これらは、薄型レンズ理論以外では、「4光線法」「整合原則」など多くのアプローチを含む(1)。たとえそうだとしても、レンズ設計ソフトウエアが利用できる前に設計された光学系の多くは、パフォーマンスや正確さにおいて、正に驚嘆に値するものであった。
 しかし、コンピュータの利用は、高速性、高度な最適化アルゴリズムというメリットをもたらし、製造公差を直接的に考慮できるようにした。これらのことから、未熟練の設計者でも許容範囲の結果を出し、熟練設計者は視野サイズ、スペクトル幅、その他重要な光学系の品質を改善することに集中できるようになった。これは、イメージングレンズ設計ソフトウエアが利用できるようになる前なら考えられないレベルである。
 光学設計ソフトウエアは、照明系、など非結像オプティクスの設計と解析、迷光解析にまで拡張している。これらの機能は、さまざまな程度でレンズ設計プログラムの一部をなすことが多いが、追加もしくは単独ソフトウエアとしても提供されている。
 事実上、これらの設計プログラムの全てが、レンズやレンズマウンティングデータの結果を外部のCADソフトウエアにエクスポートして、設計図面作製を容易にしている。これら全てのタイプの光学設計パッケージ向けに選択されたコンピュータプラットフォームは完全に一貫性がある。この記事で触れた全てのソフトウエアプログラムは、マイクロソフトウィンドウズで動作する。

結像系の設計

結像レンズ設計プログラムは通常、多くのパラメータを一度に最適化することを狙っている。光学系にもよるが、含まれるのは、スポットサイズ、エンサークルドエナジー、ザイデル(Seidel)収差とその他の収差、スペクトル幅、物理的なサイズ、許容されるガラスの範囲、許容公差、対象と画像の距離、瞳孔位置とサイズ、回折面、インコヒレントおよびコヒレント画像特性、その他多数である。
 米シノプシス社(Synopsys)が作製したCODE V光学設計ソフトウエアは、公差に対するシステム感度を分析するために高速波面差法を備えている。「典型的な光学系では、モンテカルロ法のような従来の公差法と比べて100〜1000倍高速にできる」とCODE V製品マネージャー、デイビッド・ハーゼンナウア氏は言う。「アルゴリズムが高速であるのでわれわれは、そのアルゴリズムをCODE Vオプティマイザに組み込み、ユーザーは、RMS波面誤差法を組み込まれているものとして直接最適化できる。4要素、完全非球面の携帯電話カメラレンズに関する最近の例では、平均値プラス2σのパフォーマンス確率だったフィールド平均値が、公差感度を考慮せずに最適化された系に対して11%改善された(図1)。この改善は、公差減感エラー機能を持つ大域最適化を使うと24%大きくなった。
 米ラディアントゼマックス社(Radiant Zemax)の製品マネージャー、リック・ピレット氏は、同社のOpticStudioは、3つの重要エリアで改善されていると言う。ユーザーインタフェース、データプロッティング・チャート化ビジュアリゼーション(可視化)、データキャッシングである。「プログラムの特徴は、経験レベルに関係なくユーザーが必要としていることを効率よく見つけることができるように作業と類型で整理されており、分厚いマニュアルを通読する必要はない。ウィンドウズをマルチワークスペースに組み込んだり、独立にフローティングしておけるので、利用できる全てのモニタを最大限に活用できる」と言っている。
 米ラムダリサーチ社(Lambda Research)のレイアウトと最適化光学ソフトウエア(OSLO)レンズ設計プログラムは、3つの能力レベルで提供されている。各版に組み込まれている特徴は、次のより高度な版に入っている特徴のサブセットとなっている。販売とマーケティング担当VP、マイケル・ゴーバン氏によると、OSLOには問題解決に役立つ高速マクロ言語が含まれている。また、OSLOは、同社の照明系設計ソフトウエア、トレースプロ(TracePro)とシームレスに連動するように設計されている。
 米キオプティック社(Qioptiq)が販売するソフトウエアパッケージに含まれるのは、WinLens 3Dレンズ設計と解析ソフトウエア、Tolerancer、Glass Man­ager(ガラスと光学材料データベース)、Material Editor(特注光学材料作製用)だ。また、「簡単計算」スタイル機能向けConcept Developmentユーティリティも含まれており、同社の開発者ジョフ・アダムス氏によると、これは重要なシステムパラメータを規定するのに役立つ。例えば、所定の作業向けの実効焦点距離、ビームウエスト、発散などのパラメータなどである。
 最も一般的なアプリケーションに含まれるのは、多要素系の特注デザインとともに、一連のキオプティックR&D装置用光コンポーネントのモデリング、他の社員やコンサルタントによるデザイン点検である。このソフトウエアは、アダムスによると、ゴースト反射の解析に秀でている。

図1

図1 携帯電話用のレンズは、公差感度を制御することなくCODE Vで最適化された(a)。同様の携帯電話レンズを公差感度誤差関数を含むCODE Vで大域的に最適化。結果として、RMS波面誤差で24%の改善が得られた(b)。累積確率チャートが示しているのは、指定補償を用いて一連の許容公差内に作製した系の表示された波面誤差達成確率。カーブはさらに左に行くので、完成された時のパフォーマンスはもっとよくなる(資料提供:シノプシス社)。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2014/10/pp-_LFWJ201409-10.pdf