放射線の位置を突き止める携帯式イメージングスペクトロメータ

ミシガン大からスピンアウトした米H3D社は、ポラリス‐H(Polaris-H)と呼ぶ軽量(4kg)の携帯式放射線カメラを商品化した。これは、ガンマ線源の同位体組成を識別するだけでなく、放射
線源の分布位置を撮像することもできる小型イメージングスペクトロメータである。
 高解像度スペクトロメータは高エネルギーのガンマ線検出を通して放射源を特定する。高純度ゲルマニウムを使った標準高解像度スペクトロメータは662keVで0.4%以下の半値全幅(FWHM)のエネルギー分解能を達成できるが、低温冷却が必要であり、放射線イメージング機能がない。
 これまで、ガンマ線イメージングは3つの方法のうちのいずれか1つで実行されてきた。符合化開口結像では、高原子番号のマスクを検出器面の前に置き、そのマスクが検出器上に落とす影を使って順方向の放射線源分布をデコンボリューションする。しかし、ガンマ線の約半分がマスク内で失われるため、イメージング効率は低い。イメージングは、関心の方向に回転する検出器上の厚いコリメータを使って実行することもできる。しかし、検出効率はまったく低く、観測に要する時間も非常に長い。3つめのイメージングは2つの検出器面を使って、それらの面間のコンプトン散乱対を記録することによって実行される。各面の1つの相互作用によるイベントの確率は小さいので、イメージング効率も低い。
 対照的に、H3D社のカメラは、1つのブロックの結晶材料を使って、シールドなしで撮像できる。これはピクセル化されたテルル化カドミウム亜鉛(CdZnTeまたは「CZT」)結晶を使用し、50keVから3MeVのガンマ線相互作用に対してゲルマニウムベーススペクトロメータと同程度のエネルギー分解能を維持しながら、放射線源の位置の確認と撮像の両方を実行するイメージングスペクトロメータとして機能する。さらに、スチルベンまたは結晶シンチレーション検出法とは異なり、ガンマ線エネルギーをより正確に決定し、線源分布の画像も形成する。

3D位置検出

ポラリス‐H検出器は、ピクセル化され、パターン化された121ピクセルから成るアノード表面をもつバルクCZT結晶で構成され、特定用途向け集積回路(ASIC)チップに接合されている。
 貫通性が非常に高いので、ガンマ線はあらゆる方向から20×20×15mmのCZT結晶に入射するであろう。そのとき、ガンマ線はコンプトン散乱を受け、検出器内で二度相互作用することになる。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2014/07/869398dcd0fc54688a6eacfdce35056e.pdf