レーザ溶接された高分子のテラヘルツマイクロプローブによる検査

レーザ溶接された高分子の溶接部の最終検査は、一般に、高価につく製品破壊を通して行われる。光学顕微鏡法(可視光または赤外光)などの現在の非破壊試験法は、多くのプラスチック、特にポリプロピレン、ポリアミド、繊維強化高分子などの不透明な材料に対しては、強い吸収または散乱によって適用が制限されるためである。
 テラヘルツ(THz)イメージングはほとんどの高分子を透過するその高い透過率ゆえに高分子コンポーネントの非破壊試験に極めて有用である、しかし、波長が長いため、遠視野アプローチでの空間分解能は1〜2mm程度に制限される。これは、レーザ溶接における典型的なエアボイド欠陥の直径が50〜100μmであることを考えると、検査用として十分ではない。この問題を回避するために、いずれもドイツ・アーヘンに存在するプロテミクス社(Protemics)とフラウンホーファーレーザ技術総合研究所(フラウンホーファー ILT)の研究者は、ミクロンスケールのボイドや欠陥の検出に、THzマイクロプローブを、遠視野検出ではなく、溶接ポリマの表面近くで利用している(1)、(2)。

THz散乱シグネチャー

遠視野アプローチとは異なり、マイクロプローブを使った検出は溶接部内の局所不均一性による散乱光を高効率で測定する。溶接線の底部から入射され、エアボイドまで伝搬したTHz平面波パルスは、その後、欠陥から遠ざかるすべての方向に伝搬する第二の球面波を発生する。バルク材料に比べてエアボイド内は位相遅れが少ないため、散乱波の未偏向の順方向伝搬部分は平面波の直前を走り、そして両波は干渉を起こす(図1、図2)。
 100fs、80MHzのパルス化した780nmエルビウムファイバレーザを使って光導電性THzエミッタを光励起し、古典的なポンプ/プローブ法でプローブする。こうして、接合相手を透過して材料厚さ1000μmの不透明なポリプロピレンシート内の横方向直径380μmの溶接部を分析する。マイクロプローブチップを溶接表面上の数10マイクロメートルの距離にあるバーチャルな平面を横切って走査し、その時間領域内に送られた電磁場を測定する。

図1

図1 時間領域電磁場シミュレーションからのスナップショット画像は、入射したTHzパルス平面波がレーザ溶接ポリマ内のエアボイド位置で発生した散乱光を示す。ここで、THz電磁場振幅はボイドからの横方向の電磁場ベクトル成分を参照している。(資料提供:プロテミクス社)

図2

図2 測定されたデータは、エアボイドによって引き起こされたTHz波散乱を、波のピーク振幅がマイクロプローブに達したとき(a)とさらに散乱された230fs後(b)について示した。(資料提供:プロテミクス社)

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2014/07/8784c7185d6e6642ed4f521d55168517.pdf