MIXSEL: 簡素化する超高速

マリオ・マンゴールド、クリスチャン A. ゾーグ、サンドロ M. リンク、アライン S. マイヤー、マチアス・ゴリング、ボーク W. ティルマ、アーシュラ・ケラー

光励起モードロック集積外部共振器面発光レーザ(MIXSEL)は、可飽和吸収体を集積した超高速高出力半導体ディスクレーザである。簡素なストレートキャビティ内のパッシブモードロックが、ローノイズ超高速ギガヘルツレーザの新たなベンチマークになる。

今日使われているほとんどの短パルスダイオード励起固体レーザは半導体可飽和吸収ミラー(SESAM)モードロックをベースにしており、アプリケーションは光通信や精密計測から顕微鏡、眼科、マイクロマシニングまで重要な産業分野に広がる(1)。最近の成果では、このパルス生成アプローチが新たな種類の半導体レーザに広がった。ここでは、利得と吸収体の両方をウエハスケールで集積して垂直放射構造にした。これによって、この技術には量産市場に展開する可能性がでてきている。この技術が最初に実証されたのは2007年、モードロック集積外部共振器面発光レーザ(MIXSEL)と言われていた(2)。
 MIXSELは、半導体ディスクレーザ(SDL)、垂直共振器型面発光レーザ(VCSEL)ファミリーの一部である。光励起VCSELは、異なるIII-V半導体材料系で量子井戸(QW)と量子ドット(QD)のバンドギャップエンジニアリングを用い、650nmから2.2μmを超える波長範囲で平均出力ミリワットを生成する。
 外部共振器と組み合わせたこの薄いSDL媒体により優れた出力ビーム品質が確保できるだけでなく、多様な線形および非線形エレメントを非常にコンパクトなキャビティデザインに集積することも可能になっている。例えば、キャビティ内第二高調波発生(SHG)により前例のない出力で可視光やUV波長を生成する(3)。キャビティ内SESAMは、平均出力ミリワットで安定したパルスを生成する(4)。さらに単一周波数、デュアル周波数動作、イントラキャビティテラヘルツ生成も達成されており、SDL技術の信頼性と多様性が示されている(5)〜(7)。
 キャビティ内周波数変換機能を持つ光励起VCSELは米コヒレント社が、光励起半導体レーザ(OPSL)製品ポートフォリオで商用化に成功している。ダイオード励起固体レーザと対照的に、OPSLでは動作波長域は遙かに広くとれ、それでもローノイズ動作が維持できる。
 光励起MIXSEL技術は、ピコ秒やフェムト秒パルス生成に向けた新しい製品ファミリーにつながると考えられる。この新しい製品ファミリーは、マルチワットの平均出力(図1)、広い波長の柔軟性、ギガヘルツのパルス繰り返しレートでほぼ量子雑音限界パフォーマンスとなる(8)、(9)。利得と吸収体層を単一のウエハに集積することで、簡素な直線的キャビティが実現可能となる。キャビティ長は調整してパルス繰り返しレートを約1GHzから100GHz以上にすることができる。アプリケーションは、テレコム、データコム、周波数コムがある。また、折り返しキャビティでは、医療や生体光アプリケーション向けにもっと低いMHzのパルス繰り返しレートまでカバーできる(10)。

図1

図1 様々なギガヘルツ基本モードロックレーザのピークパワーを比較している。MIXSEL技術は、15〜100GHzパルス繰り返しレートで記録的に高いピークパワーを達成している。

SESAMモードロックVCSEL

MIXSELは、V形状もしくはZ形状キャビティ構成にイントラキャビティSESAMを加えたパッシブモードロックVCSELから発 展した。SESAM内 のQWまたはQDいずかの可飽和吸収体により、パッシブモードロックが始まり、安定化する。グラフェン可飽和吸収体は、現状では、損傷のために、パフォーマンスが制約される(11)。
 イオンドープ固体レーザと違い、半導体レーザでパルス形成のためにネットゲインウインドウをオープンにしておくには、より低いパルスフルエンス(面積あたりのパルスエネルギー)では、動的利得飽和と損失飽和とでより一層の注意深いバランス達成が必要である。イオンドープ固体レーザではこれは問題にならない。と言うのは、利得は大きな動的利得飽和を示さないからであり、時間非依存の値まで単純に飽和して、決まったイントラキャビティ平均パワーとなるからである。次に、パルスは一定時間で吸収体を飽和し、短パルス生成をサポートする。つまり、ソリトンモードロックを安定化するネット
ゲインウインドウを開くだけである。したがって、SDLにおける安定パルスの生成には、低い吸収体飽和フルエンスと高速吸収回復力学が必要とされる。
 平均パワーが1Wを超える初のフェムト秒VCSELが2011年に実証された。最近になって、SESAMモードロックVCSELのパフォーマンスが他のグループによって一段と改善された。結果として得られたデバイスは400fsパルスを生成し、繰り返しレート1.67GHzで平均出力3.3Wだった。または、1.7GHzで平均出力5.1W、682fsパルスを生成した(12)〜(14)。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2014/07/VCSEL_LFWJ07-12.pdf