レーザ核融合やプラズマミラーなど、高エネルギー密度科学の展開を議論

2014年6月2日に国際シンポジウム「大型レーザーによる高エネルギー密度科学研究の新展開」(主催:日本学術会議)が開催された。大型レーザに関する研究を取り巻く環境が変化しつつある。米ローレン
ス・リバモア国立研究所の超大型レーザNIFが2014年2月に自己加熱による燃焼を初めて達成した。一方エネルギー供給の観点からは磁場閉じ込め式核融合のITER計画が進行しつつある。シンポジウムでは国内外の大型レーザ研究者だけでなく、利用者やエネルギー政策などさまざまな立場の関係者が集まり、レーザ核融合の今後の展開や、大型レーザを用いて可能になる高エネルギー密度科学研究の在り方が議論された。
 日本の大型レーザの研究拠点である大阪大学 レーザーエネルギー学研究センターはレーザ核融合の研究を行ってきたが、その過程で新技術や産業界とのつながりを生み出してきたと同センター長の疇地宏氏はいう。さらにレーザ核融合によって太陽の中心と同じ状態を作り出すことにより、かつてない新しい科学を生み出すことになるとする。一方、レーザ核融合と磁場閉じ込め核融合の違いは、プラズマ密度、プラズマの存在する大きさ、反応時間において大きく違い、異なる核融合の実現手法としてどちらも研究される必要があると述べた。
 大阪大学大学院工学研究科、光科学センター長の兒玉了祐氏は、日本の高エネルギー密度科学分野の現状について報告した。ハイパワーレーザを固体や気体に照射すると、一瞬のうちにプラズマ化する。そのプラズマをどのようにしてコントロールするかがこの分野の課題といえる。最近のレーザおよびプラズマ制御技術の進歩により、高エネルギー密度科学の世界が広がってきた。研究対象として、一つは固体でありながらエネルギー密度の高い状態、もう一つは密度のまったくない真空と光の相互作用があるという。
 同分野で開発されたプラズマを操る技術の一つがプラズマミラーだ。固体を極めて短い時間で、電離させると、イオンが動くまでには時間が掛かるが電子は自由に動く。つまり金属のように電子が光を反射する。普通の金属とはエネルギー密度が大きく違うため、1000倍もの大きな強度の光を操ることができるという。これは超小型ミラーや、通常は使えない場所でミラーを利用するなど新しいデバイスとなる。またプラズマを利用した加速器も研究されている。この装置を使って、ダイヤモンドよりもさらに固いと予想される炭素の同位体の構造を観察する計画が進められているという。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2014/07/4d86266d397aaa3d15b16489cc2e7e91.pdf