精密製造を支援する産業用顕微鏡

ジョン・ウォレス

近代産業の多くの部門で微細公差が必須になっている。このため必然的に、検査、アセンブリ、評価で顕微鏡を利用するようになる。

顕微鏡は生物学や他の科学で不可欠の道具であるが、同様に産業分野でも必要とされている。微細な製造トレランス(公差)のために、多くの作業で微細画像が必要となるからである。産業用顕微鏡は、顕微鏡の行う作業同様に多様な構成で提供される。
 顕微鏡を選定するときは、汎用装置か特定作業に特化されたものか、低倍率、高倍率あるいは両方、目視ベースかカメラベースイメージングか、手動または自動ハードウエア、仕事に最適な波長域、さらに当然のことであるが費用と性能の適切なバランスを決めなければならない。

多用途性

多くの顕微鏡メーカーが様々な汎用顕微鏡装置を製造している。ユーザーは、ここからハードウエアを選択して、各自の目的に装置をカスタマイズするという方法がある。完全カスタマイズシステムという別の選択肢もある。例えば、米サンタバーバラ・イメージングは、30mm〜50μmまでの視野を持つ低倍率、高倍率アプリケーションに使える顕微鏡を製造している。
 同社の低倍率顕微鏡は、固定または可変ズーム拡大で提供される。照明は一般にリングライトか、グースネックランプとなる。高倍率顕微鏡は無限修正タイプで、同軸LED照明組込で提供され、イメージャはCマウント、対物レンズはねじ込み式となっている。すべてのシステムがイメージャとモニタもしくはコンピュータを使用してオブジェクト表示を行う(接眼レンズ無し)。
 「低倍率顕微鏡は一般にアセンブリ、検査用途に使われる。例えばコネクタの半田付けや品質検査、小さな加工部品の検査に使われる」とサンタバーバラ・イメージングの設計技師、ジェフ・マーカキス(Jeff Markakis)氏は言う。「高倍率顕微鏡は一般に組込アプリケーションに使用される、例えば半導体検査、半導体ボンディング、ディスポーザブル医療用散布器検査、表面処理適正判定、微細部品のアライメントなどだ」。
 一例を挙げると、同社のμScopeはコンパクト、無限補正、単一対物レンズ顕微鏡で、専用アプリケーション向けに同軸LED照明を組み込んでいる。装置は、焦点移動範囲50mmの電動クロスローラフォーカスステージを搭載している。位置決めはサブミクロン精度、ステッピングモータ駆動、ステッピングモータコントローラ組込となっている(図1)。米ナノトロニクス・イメージングは、主に市販のコンポーネントで組み立てる、設定変更の可能な産業グレードの多様な光学顕微鏡を製造している。その顕微鏡は、ガン研究所、医療試験研究所、半導体研究所のほか製造の現場でも使用されている、と同社工学技術者、ヤコブス・キース(Jacobs Keith)氏は語っている。キース氏によると、同社の狙いは数百万ドルの検査器具一切合切を提供することであり、これを自動カセットやウエハハンドリング、OCR(光学文字認識)統合、ウエハアライメントで補完する。
 キース氏は、自動化は重要であると言う。ナノトロニクスは、自動化ハードウエアに同社顕微鏡を組み込むだけでなく、顧客と協力してユーザの現行手動顕微鏡に自動化システムをとりつける。同社は、光学顕微鏡だけでなく、原子間力顕微鏡(AFMs)も提供することができる。
 ナノトロニクスのnSPEC顕微鏡は、内蔵レーザシステムで、ユーザが選択した範囲を走査することで画像を取得する。次に画像処理ソフトウエアを使用して、ミクロンサイズおよびそれよりも大きな欠陥を特定し分類する。結果は、業界標準のプロトコルで出力する。多くの操作タイプがサポートされており、これには転送、明視野、暗視野、微分干渉コントラスト法(DIC)、落射蛍光計測、偏光計測が含まれる。

図1

図1 サンタバーバラ・イメージングのコンパクトな単一対物レンズ顕微鏡(a)は、マイクロエレクトロニクス検査(b)でユーザーを獲得している(サンタバーバラ・イメージング提供)。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2014/05/654586201e7594a4926d0ce59d0ac12b.pdf