サブトラクティブ法に対抗して、積層造形法をどう積み上げていくか

ゲイル・オーバートン

レーザ積層造形法(LAM)で製造される金属やポリマの構成部品が宝石や歯科インプラントで一般的になりつつあるが、企業は精巧なさらに多くのLAM素子を機能統合しようと競っている。

レーザフォーカスワールド本誌が、2009年にフォトニクス応用シリーズでレーザ積層造形法について書いたとき、「3Dプリンティング」という表現は一般的ではなかった。2014年に早送りすると、3Dプリンティングは最もホットな製造トレンドの1つとなっており、米グローバル・インダストリーアナリスツによると、市場規模は2018年に45億ドルに達する見込みである(1)。同様に米ウォーラーズ・アソシエイツは、積層造形法装置と関連するサービスの売上は2012年に22億ドルに達しており、これは2017年までには60億ドルに上昇すると予測している(2)。
 2013年5月、初の完全3Dプリント拳銃から38口径の弾が発射された。これはディフェンス・ディストリビューテッド(http://defdist.org)創始者、ディレクターであるコディ・ウイルソン(Cody Wilson)が作製した「リバレイタ」(Liberator)と名付けられた拳銃からだった。ディフェンス・ディストリビューテッドは、3Dプリント製造された拳銃で一般の人々を力を与える非営利組織だ。この製法に関してフォーブスオンラインのアンディ・グリーンバーグ(AndyGreenberg)は、「オリジナルのスチール製リバレイタと違い、ウイルソンの武器はほぼ全面的にプラスチックだ。16部品のうちの15が、8000ドルの中古のストラタシス・ディメンション(Stratasys Dimension)SSTの3Dプリンタで作製された。プリントされなかった唯一の部品は、一般的な金物店で売っているもので撃針として使われた釘だ」と説明している(3)。
 しかしフォトニクス業界にとっての問題は、米国とイスラエルに拠点を持つストラタシスの3Dプリンタがレーザを使わないことだ。ここでは熱を使って熱可塑性物質を整形する。したがって、全ての3Dプリンティングシステムがレーザベースでないことを認識しておくことは極めて重要である。3Dプリンティングに関する誇大宣伝は、家庭や小型店で使うための、ローコストで、熱を基盤にしてノズルでポリマを押し出すシステムに関するものが多い。この記事で扱うのは、より高価で、高分解能、より高品質の構成部品に関するレーザ積層造形システムとなる。
 レーザ積層造形法(LAM)、レーザ溶融堆積、選択的レーザ溶融(SLM)、バット光重合、レーザ焼結またはレーザキュージング、直接金属レーザ焼結法(DMLS)、レーザ3Dプリンティングなどと、名前と技術の変種はたくさんあるが、LAM業界の成功は物理的な構成部品製造の条件次第と言える。つまり、これらの部品が加工、モールディング、あるいは競合する電子ビーム溶融(EBM)技術など従来のサブトラクティブ法で製造した部品の強度、耐久性、製造容易性、製造量あたりのコスト目標に合致しているか、あるいはそれを凌駕しているかによる。では、LAMコンポーネントは、従来技術で製造されたパーツとどのように違うのか。

金属部品

独コンセプトレーザ社の商標登録になっているレーザキュージング(LaserCUSING)プロセスは、ステンレス、工具鋼、アルミとチタン合金、ニッケルベース超合金、コバルト・クロム合金、あるいは金や銀合金など貴金属で使える。同社は2013年後半に600m2のR&D工場を開設した。これは、宝石、歯科インプラント、さらには自動車や航空機部品のレーザ積層造形部品に対する需要増に応えたものである。
 最高出力1kWのファイバレーザを使ってコンセプトレーザの粉体層ベースのコンポーネントは15〜200μm厚で積層しており、粉体層のサイズは幅と深さが5㎝、高さ8㎝から、現在は最大63㎝幅、40㎝深さ、50㎝高さとなっており、積層レートは1〜100㎝3/hrの範囲となっている。歯科修復メーカー、スイスのユニシムは、コンセプトレーザの100W連続波(CW)ファイバレーザを搭載したMlab Cusing Rシステムを使って金属(チタンなど)歯科インプラントを造っている。同社によると、これは密度と歪がない点でフライス加工コンポーネントよりも品質が優れている。
 英レニショーによると、同社のLAMで作製したコバルト・クロムのレーザブリッジ(LaserBridges)は高精度で細部のかみ合わせが優れている。また、正確さを期すために歪を除去しており、優れた陶歯保持を提供している(図1)。レニショーのAM250レーザ溶融加工機は200Wもしくは400Wのイッテルビウム(Yb)ファイバレーザを採用している。25×25×30㎝粉体床でビーム径は70μmとなり、20〜100μm厚の層を堆積し、1時間に5〜20㎝3の構成部品を作製することができる。
 要言すれば、多くの歯科インプラント企業は、よりコスト効果のよいLAMによるインプラントを支持しており、一体成形やフライス加工/機械加工の終焉を予測している。それを証明する理由もある。2013年5月、「Lasers in Medical Science」誌は、前歯部へのシングルユニット換歯の歯科インプラントで機械加工(表面はアルミナブラスト/酸エッチング処理)によるものとレーザ焼結によるものの信頼度と故障モードを評価した(4)。総数42のインプラント(各グループ21)をステップストレス加速寿命テスト、偏光およびSEMフラクトグラフィ(破面)解析を行った後、機械加工とレーザ焼結のインプラント間で信頼度と破損モードの違いを観察した。
 米スマーテック社は、3Dプリント医療および歯科製品だけの市場は2019年までに28億ドルに達すると見ている(5)。しかし人の口腔よりも遙かに過酷な環境にさらされる、より高度な金属コンポーネントはどうだろうか。2013年7月、航空宇宙局(NASA)は米アエロジェット・ロケットダイン社の選択的レーザ溶融で作製したロケットエンジンインジェクタ(燃料噴射装置)のテストを終えた。液体酸素と気体水素のロケットインジェクタアセンブリの燃焼は、この極めて重要なロケットエンジンコンポーネントの完全性を実証した、恐らくさらに重要な点は、NASAによれば従来の工程を利用したインジェクタの製造には1年以上かかるが、選択レーザ焼結溶融では4 ヶ月しかかからないことで、3Dプリントコンポーネントは70%のコスト削減となる。

図1

図1 レニショーのレーザ焼結コバルト・クロスレーザブリッジのような歯科インプラントは、機械加工品あるいはフライス加工バージョンと同等の信頼度があることが研究により示された(レニショー提供)

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2014/05/db311168554c7ff0f963d2bfb8bddbfb1.pdf