ラージモードエリアMOPA設計に磨きをかける3C光ファイバ

ティモシー S. マコム、ジューナ J. コポーネン、ロバート J. マーチンセン、マイケル・アチレイ

カイラル結合コア(3C)光ファイバにより、高次モード(HOM)抑圧設計ができることから、ラージモードエリア(LMA)、回折限界に近いビーム品質、事実上のゼロモードポインティングが可能になる。

高精度レーザ材料加工アプリケーションは一般に、高いピークパワーと平均パワーを持つサブナノ秒パルスを必要とする。さらに、このような高いピークパワーは、高い整合性を持った小さな焦点で用いる必要がある。したがって、回折限界に近いビーム品質が極めて重要である。そのビーム品質は、至る所に姿を現すM2パラメータだけで捉えられるわけではなく、焦点範囲を通したビームの真円性の定量化、長期にわたるビーム指向性、出力安定性が含まれる。
 これら全てのパラメータが同時に働くわけではなく、ほとんどのレーザ加工は所望のパフォーマンスを達成しようと苦労している。MOPAは、2つの重要コンポーネントを結びつけることでそのようなアプリケーションの要求に応えることができる。時間的俊敏性があり、高い安定性を持つ短パルス種光源と、ラージモードエリア(LMA)光ファイバ、これらの技術だ。
 いくつかの先進的LMAファイバタイプは、モードエリアを拡大して非線形効果が始まるしきい値を高めることで高いピークパワー性能を実現できるが、これらの技術は最も要求の厳しい長期のシステム寿命でビーム品質パラメータを満たすことに四苦八苦していることが多々ある。ビーム品質要求を満足させる技術は一般に複雑で、使うには高価である。これは、空間光学系を必要とし、多くは空孔タイプの微細構造ファイバに高精度結合する必要がからである。
 幸いなことに、カイラル結合コア(3C)光ファイバは、このようなLMAの限界を克服することができる。nLIGHT社特許の3Cファイバと短パルス半導体シードレーザプラットフォームを組み合わせると、ピコ秒クラスの短パルスファイバレーザMOPAが実現する。パルス幅、繰り返しレート、パルスバーストサイズは柔軟に決められる。

3Cファイバアーキテクチュア

3Cファイバは、大きな中心コアに所望の利得媒体を添加してあり、1つあるいは複数のサテライトコアが巻き付けられている。線引き工程中に高速レートで回転し、これによってサテライトコアが数ミリメートルオーダーのピッチで、ファイバ長に沿って主コアの周りを周回する。らせん周期のピッチは、主コアのモードとサテライトコアのモードとの間に、疑似位相整合条件を作ることができる、ここでは両者の間に強い結合が生じている(2つのコアはエバネセント結合と考えられている)。
 強い結合条件は、βmc−βsc+m・2π/Λ=0で表される。ここではβは主コアまたはサイドコアの伝搬定数、Λはらせんピッチである(1)、(2)。ファイバは、主コアの基本モードが低損失となるように設計することができる。一方、主コアの高次モード(HOMs)はサイドコアに強く結合し、ここでクラッド方向に放射される。その結果、ファイバは数10dB/mのHOM抑制となり、事実上純粋なシングルモード動作となる(図1)。
 標準的なM2<1.15およびコア真円度95%以上で、3Cビーム品質は測定誤差に制限されることがよくある。33μmコア3Cファイバの寿命テストはピークパワー数100kWで今までのところ連続4500時間であるが、これはnLIGHT社の低フォトダークニングYbドープガラスのお陰でビーム品質の変化が無く、大きな出力劣化がないことを示している。
 すでに述べたように、モードに起因するポインティング効果も3Cファイバでは軽減されている、これは高純度基本モード動作によるものである。標準的な円形出力のニアフィールドプロファイルと、ファイバコア対パワーにおけるビーム位置のプロットは、この系で極小の動的モードに起因するポインティングを示している(図2)。
 ポインティングは、種光から約2.4Wステップで19.2Wまでの8つの異なるパワー設定の全体で計測した。ビーム重心を、カメラソフトウエアにより、各点で30s撮影し、サンプリングレート0.5sで約4分、ポイントを記録しプロットした。テスト全体で、どの方向へも最大モード偏差0.5μmという結果が得られ、これはモードフィールド径の1.8%に相当する。
 このポインティングは、完全な製品化システムで計測されたのではなく、ラボの実験用定盤システムでファイバ端をテープで留め、マウンティング台から片持ちして離した状態で計測した。y方向ではパワーに対して計測した動きの多くは、最小限固定したファイバの熱効果によるものである。x方向の動きは、計測システムの精度と同程度(約0.1μm測定精度、最大動約0.3μm)であるので、モードに起因するビームの動きは事実上無視でき、製品化されたシステムではさらに減らせる。
 他の発表では、33μmコア3Cファイバは、>511W連続波(CW)出力、10nsパルスでマルチミリジュールパルスエネルギーと報告した(3)。われわれの研究は、適度のピークパワー、数10ワットの平均パワー、バーストパルスの増幅での利用を達成する能力に注力している。

図1

図1 カイラル結合コア(3C)光ファイバのモード伝搬(a)、33μmコア径ファイバ画像(b)、最も低い2つのファイバモードでモード損失 vs.波長のシミュレーション(c)、よく整列しオフセットされた33μmファイバのモードビート解析を示す。スペクトラルビート解析は事実上ビートがないことを示しており、したがって高純度シングルモード動作を示している。ここでは、ファイバモードビートを入力信号のアライメントずれの関数と見なしている。

図2

図2 19.2W(>300kWピーク)で50ps、1MHzレーザからの出力ビームを示す(a)。ビーム重心のモードの動きが示されている(b)、研究室のベンチシステムにおいて各パワーポイントで30sサンプリング。種光からのパワー増は19.2Wになっているにすぎない。(b)のデータを10倍ズームを(c)に示す。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2014/05/bd4fa465ed4cf6787a7304a4ef369d181.pdf