2013年度太陽光発電分野国内生産額、3兆2,878億円を見込む

井上 憲人

光産業技術振興協会(光協会)は光産業動向調査委員会を設置し、2013年度の調査結果をまとめた。特に目立つのは、太陽光発電分野の急成長。アンケート調査は2013年10月に348社に対して調査票を発送し2013年12月〜2014年2月に回収することで実施。回答は116社。これに加えて、市場シェアの大きい企業については、電話調査を行い、調査の市場カバー率向上を図った。「市場カバー率は70%を超える」と光協会は説明している。

FIT依存度高まる光産業の成長

光協会の調査結果によると、2012年度の光産業国内生産額(実績)は7兆1,398億円(成長率▲2.9%)で、マイナス成長になった。2013年度国内生産額(見込み)は8兆6,182億円、成長率は20.7%となって、国内光産業は成長力を取り戻したかに見える。
 2001年度からの光産業国内生産額推移を見ると、光機器・装置+光部品の合計額で最高額を記録したのは2007年度(9兆8202億円)だった。その後、世界的なリセッションと東日本大震災に見舞われ、国内生産額は8兆円台、7兆円台と下降トレンドになっていた。2012年度の実績は10年前の水準に逆戻りということになる。2002年度に7兆円台だった光産業国内生産額は、2003年度から2007年度まで9兆円が続き、好調を維持した。光産業国内生産は、今後数年にわたり同じように好調を維持できるだろうか。
 表から今回の調査の目立った特徴を拾ってみよう。2012年度国内生産額実績で構成比が大きい分野は、ディスプレイ・固体照明分野(34.7%)。次に太陽光発電分野(26.4%)、さらに入出力分野(20.5%)と続く。これら3分野の合計で80%を超えることになる。2013年度見込みでは、若干ではあるが、さらに増えると見られている。
 しかし注意を要するのは、この中で成長分野は太陽光発電分野だけであるという点だ。2013年度の見込額では、入出力分野の構成は約14%程度に落ち込む。ディスプレイ・固体照明分野も31.3%に減少する見込みだ。太陽光発電分野のみ、38.1%に大幅増となる。太陽光発電分野が伸びる理由について、光協会は寸評でコメントしている。
 「7月にFeed-in Tariff (FIT)が導入されて産業・事業用と電力事業用が大幅に伸び、住宅用も余剰電力買取制度・補助金により増加して、58.0%と大きく増加した」。
 FIT(固定価格買い取り制度)は、エネルギーの買い取り価格を法律で定める助成制度。日本では、太陽光発電の買い取り価格は、kWhあたり42円。既存電力システムの発電単価は6円程度といわれているので、7倍の高価格で買い取ることになる。この買い取り費用は電力料金に上乗せされるので、ドイツでは電力料金が高騰し、累積設備容量5200万kWに達した後はFITは廃止されることになっている。ドイツのシュピーゲル・オンラインは、「PV補助政策はドイツ環境政策の歴史で最も高価な誤りになりうる」と指弾している。要は、FITはドイツで失敗した制度である。
 ドイツで失敗した制度が、日本で成功するという保証は、今のところどこにも見いだせない。光産業国内生産額に占める太陽光発電分野のシェアが、40%に近づこうとしている。光協会の2014年度国内生産の予測・寸評では「FIT導入により、設備認定が急増したものの運転開始されている設備量は1/4程度で、引き続き産業・事業用及び電力事業用を中心に投資が進められ、増加が予測されている」と分析している。
 設備の稼働率が低いのは、「お天気任せ」の太陽光発電を系統に接続するには、バックアップ用の火力発電を建設する必要があることが理由の1つ。太陽光発電は、必要な時に発電せず、必要でないときに発電するという難点がある。今後、ドイツの例に倣って日本でも電力料金が高騰すれば、国内の製造業は海外に移転することになるだろう。FITは、国内製造業の空洞化促進に貢献する可能性がある。太陽光発電分野の構成比が40%に近づいたことを国内光産業への警鐘ととるかどうかは、それぞれの企業の立場によって異なるが、「太陽光発電頼み」の国内光産業がこのまま成長を維持できるかどうかは、いよいよ不透明になってきたと考えた方がよさそうだ。

レーザ加工分野

レーザ加工分野の2012年度国内生産額実績は3,457億円、17.9%減だった。レーザ応用生産装置の中で、エキシマレーザの落ち込みは半導体産業の設備投資が一段落したことを反映したものだが、炭酸ガスレーザについては、光協会は「利用分野の70%弱を占めている切断分野のファイバレーザへの置き換えが進んでシェアを低下させ、伸長していたスマートフォン向けの基板穴あけ用が設備投資の調整局面を迎えた」ことを34.7%減の理由としている。裏を返せば、ファイバレーザを採用した装置が大幅増とならなければならないが、「その他」の成長率は57.2%と大幅増になっているものの、金額的にはCO2レーザよりも1ケタ少ない。その理由について光協会は表立ったコメントは載せていないが、海外製の装置に市場を奪われたと見ているようだった。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2014/05/a7b48e1c79aa18ffb6bfcde1e0008d16.pdf