さらに明るくなった太陽光励起Nd:YAGレーザ

1966年に「太陽光励起連続波1ワットレーザ」に関する最初の報告があって以来、光学材料とレーザ材料の進歩によって太陽光励起レーザの性能が継続して改善された(1)。これまで、「再生可能エネルギー」レーザの宇宙空間と地球上でのアプリケーションが真剣に検討されたことはなかった。しかしながら、こうした発想も、ポルトガルのリスボン新大学の研究チームが太陽光励起レーザビームの輝度性能指数を6.6倍向上させたことによって、変化するであろう(2)。この輝度改善はフレネルレンズと非球面および放物面光学との統合からなる太陽光集光配置を使って実証された。
 レーザパワーとMx2とMy2の積の比として定義される、輝度性能指数パラメータのこれまでで最高の値は端面励起レーザ(フレネルレンズ使用)で0.086Wであり、側面励起配置(ヘリオスタット放物面ミラー使用)で0.29Wであった。残念ながら、120Wの高い出力がいくつかの太陽光励起レーザで達成されたとはいえ、ビーム品質(M2)値は非常
に高く(低品質ビームを意味する)、例えば、xとy両軸で137となり、結局、輝度性能指数はたった0.0064Wの惨憺たる値であった。

最低基本モード

リスボン研究チームは、太陽光励起レーザの輝度を改善する目的で、米ZEMAX(Radiant Zemax)と独LASCADソフトウエア(LAS-CAD)を使って最適化された光学式太陽光集光方式を採用した。これによって、低いM2値への集束を容易にする低発散と滑らかなビームプロフィルをもつ最低基本モード、TEM00におけるレーザ出力が得られた。
 その光学系の第1段は、2軸ソーラートラッカー(太陽光追尾装置)に搭載された焦点距離1.3m、透過効率76%の1.0m径フレネルレンズから成る(図1)。レーザヘッドはx、y、z位置の機械的調整によってフレネルレンズに対するアラインメントが最適化される。フレネルレンズの焦点に集光されたソーラパワーの2分間の平均値は、13mmの半値全幅(FWHM)焦点ウェストでの全太陽放射照度890W/m2において、590Wであった。
 太陽光は第1段フレネルレンズを通して入射面半径が43mmの第2段石英ガラス非球面レンズ上に集光される。

図1

図1 フレネルレンズは非球面レンズ(b)を備えたレーザヘッド(a)上に太陽光を集光させる。次いで、この非球面レンズ(右にその画像の詳細を示す)が放物面集光装置上に、そして最終的にレーザロッド上にビームを集光させる。(資料提供:リスボン新大学)

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2014/03/WN3-LFWJ1403.pdf