低雑音ファイバレーザで広範囲の光センシングが可能になる

ソーレン・ロブグリーン

干渉型光センシングや他の光システムにおける単一周波数、低雑音分布帰還型レーザの利用は、これらのシステムの世界的な普及に寄与した。

干渉型光センシングシステムは、石油やガスの開発、パイプラインの完全性モニタリング、国境の安全確保、風力検出の重要ツールとなっている。これらのセンシングシステムは、圧電式水中聴音器などの電気変換器をベースにした従来技術に対して数々の利点があることから、支持を集めている。光センシングシステムは、パッシブ(電子回路なし)、コンパクトで軽量、高信頼であり、多重化することで非常に大きなセンシングアレイとなる。また高いダイナミックレンジと感度によりセンシング範囲を広げることができる。
 たとえば、コヒレントレイリー後方散乱検出に基づいた干渉型光センシングシステムでは、一般に光ファイバが長い連続的なセンサとして機能する。このセンサは周囲の音響攪乱に対して極めて高感度である。環境に起因するわずかな影響が、ファイバの光路長に変化を起こす。コヒレントレーザ光と、レーザ光源そのもの(コヒレント検出方式では局発光)からの攪乱されていない参照光との再結合をフォトディテクタで調べ、データ処理によって音響的な「指紋」(フィンガープリント)が生ずる。
 このフィンガープリントは、ファイバの特定箇所でのイベントについて詳細な情報を提供する。国境監視では、干渉式光システムは高度なアルゴリズムを使って雨滴や航空機などに起因する背景雑音を識別し、関連のある、重要であると考えられるイベントによってのみアラームが作動するようにしている。
 石油業界や長距離パイプラインで水や廃水を輸送する業界では、パイプラインの完全性と状態をモニタできることが極めて重要である。経済的な重要性から、これらのパイプラインは侵入の潜在的標的でもある。さらに、機械的な亀裂や疲労は膨大な量の流失の可能性につながり、重大な経済的、環境的影響をもたらす。干渉型光センシングシステムは、早期に予防措置がとれるように予防的かつ正確な手段で事故を、正に起ころうとしている機械的な事故を検出する。

低雑音レーザ光源が決め手になる

光センシングシステムに対する要求の結果、低雑音レーザ光源が必要になった。NKTフォトニクスは、世界中の研究所、光センシングシステムインテグレータ、宇宙および防衛産業向けに、1997年から低雑音、単一周波数ファイバレーザの製造を続けている。
 このファイバレーザのタイプは、いわゆる分布帰還型(DFB)デザインであり、本質的に短く耐久性のあるレーザキャビティになっている。高いQ値と相対的に長尺のDFBキャビティは、シリカにおける希土類イオンの長い放射寿命と相まって、位相雑音とスペクトラル線幅が基本的に低値になっている。注意深いパッケージデザインと低雑音ポンプ光源の利用により、振動と音響雑音、さらに技術的雑音の影響が減る。その結果、低位相雑音と狭線幅を特長とするコンパクトで消費電力が少なく、使いやすいレーザ光源が得られる(図1)。
 低雑音レーザは現在、様々な油田に導入されている。目的は、海底の下からの反射音響信号を取り込む大規模光ハイドロフォンアレイを監視することにある。音響信号は石油発見のために大型エアガンが発している。
 将来に向けて、さらに海底システムが計画されている。また、現在、陸上設置の多チャネル(チャネル数は非常に多い)光地震計測システムも検討されている。これらのシステム全てで、信頼性の高いデータや鮮明な画像を得るには低雑音が重要な性能パラメータとなる。また、この場合、レーザの位相雑音が中心的な役割を果たす。したがって光地震計測システムの継続的な開発はレーザ技術のコンパクト化、ファイバ結合技術、最高の低雑音性能を持つ高信頼デバイス化に寄与してきた。

図1

図1 光センシングシステムでは、低位相雑音、モードホップのない単一周波数動作、線幅サブkHzの光源は、重要な技術的特性であり、これによって数10キロメートルの光ファイバを高感度かつ正確に監視することができる。図で示しているのは2つのKoherasレーザ:X15(黒)とE15(赤)の相対強度雑音(RIN)。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2014/03/FT3-LFWJ1405.pdf