2013年技術20選から今後を展望

ジョン・ウォレス

レーザフォーカスワールドのシニアエディタ、ジョン・ウォレスが再び、2013年に掲載した最も興味深いフォトニクス技術開発上位20を選定。

フォトニクス世界を作り上げる人々は、既存のフォトニクス技術の改良にも、新しいアイデアやデバイスを創り出すことにも長けているので、今年の技術レビュー上位20選、掛け値無しのリストには、実際は100程度の次点補充リストがなければならない。おそらく数百の選外傑作があり、単純なユニーク賞は数え切れない。とは言え、編集者は選定しなければならない。したがって、次の20項目を見て、賛否はあろうが、Laser Focus Worldの最近の12号に必ず目を通し、あるいはオンラインを見て、気に入った記事をもう一度チェックしてもらいたい(それから、こちらに意見を寄せてもらいたい)。

メガネにひろがる世界

ヘッドマウント・ディスプレイ:最近、公衆通信やコンピュータ技術の「解約率」が高くなっており(ネットブックは記憶にあるだろうか)、フォトニクスと消費世界との交差が始まりそうになっている。メガネのようなヘッドマウント・ディスプレイ、グーグルが追求してきた最も有名なものは液晶ディスプレイベースのGoogle Glass(グーグルグラス)であるが、このようなディスプレイは至る所で開発が進められている。ディスプレイ技術やオプティクスは他の形態を取る、たとえば有機LEDやリキッドクリスタル・オン・シリコンなどである。(「ヘッドマウント・ディスプレイは有用な道具か、それとも目新しいニッチか」Laser Focus World 日本語版2013年9月号, P34参照)。
 白色LEDの解明:標準的な白色LEDは、窒化ガリウム(GaN)ベースの半導体青色エミッタと黄色発光リンを化合したもので、すでに最も効率的な白色照明光源として今日でも入手可能になっている。しかし、これが一段と効率化するのを妨げる要素が一つある。いわゆる「効率の低下」であるが、電流が増えるにともない白色LEDは効率が低下する。この原因は何年も前から議論されているが、米国のカリフォルニア大学サンタバーバラ校(UCSB)と仏エコール・ポリテクニークの研究者たちはついに実験的にその原因を特定した。これにより、おそらく最高300lm/Wの発光効率を持つ白色LEDへの道が開ける(図1)。(「ついにLED効率低下の原因を実験的に特定」Laser Focus World online, April 2013; http://bit.ly/17bTXiE参照)。
 最も強力なレーザとその計測法:産業分野では、材料加工用のレーザは今まで以上に強力になっていく。事実、その用途が見つかるよりも前に非常に強力なレーザが存在することなる。もちろん、これによってレーザをどのように活用するかという研究が促進される。100kWのファイバレーザを米IPGフォトニクスが開発し、現在市販されている。
 最初の製品は今年(2013年)初めに名古屋市のNADEXレーザR&Dセンターに出荷された。同センターでは、そのレーザの材料加工能力を研究する。特にこのレーザのために、米オフィール・フォトニクスが、1070nm出力100kWを完全に計測できるレーザパワーメータを開発した。(「オフィール・フォトニクスが100kWレーザパワーメータを発表、最初の製品はすでに実用化されている」Laser Focus World日本語版本号, P12参照)。
 ダイレクト・ダイオードシステム:ハイパワーダイレクト・ダイオードレーザデリバリでは、レーザダイオードからの光が光ファイバに結合してキロワットレベルまでの光出力が得られる。レーザダイオードの電力変換効率(WPE)が高い(最高70%)が高いため、このレーザは非常に効率的である。最大の課題は、実用向けに十分な輝度のビームを得るために小さなファイバにいかに
してレーザパワーを結合するかと言う点にある。これまでに多くのアプローチが行われている。(「ダイレクトレーザダイオードを一段と高輝度にする」Laser Focus World, March 2013; http://bit.ly/I8wYJP参照)。
 分光測定用VCSEL:可変ダイオードレーザ吸収分光法(TDLAS/TDLS)への面発光レーザ(VCSEL)の適用は、ドイツの物理工学研究所(PTB)、TUダーマシュタット、デュースブルク・エッセン大学の研究者が確立した。目的は内燃機関の水蒸気計測で、VCSELは分布帰還型レーザ(DFB)の置き換えとして採用した。VCSELの広い可変範囲は高い変調レートでも縮小しないので、吸
収線全体をカバーする。(「VCSELはTDLAS燃焼計測に有用」Laser Focus World 日本語版2014年1月号, P12参照)。
 レーザ -モデリングソフトウエア:作製に先立って(あるいは、実験的に最適化している間に)特性を明らかにできるように、レーザの数値物理学モデルをいかにして作るか。米シノプシスは、RSoft LaserMODというソフトウエアを開発した。これはレート方程式や計測によるモデルを使ってレーザダイオードやVCSELsをモデル化するためのソフトウエア(「レーザモデリングソフトウエアは、最小知識で十分」LaserFocus World, September 2013; http://bit.ly/1elhAaE参照)。おまけが1つある。Laser Focus World 2012の上位20技術選で取り上げたレーザと増幅器モデリングスイートを開発した米シンフォテックのエンジニアが事例研究を発表した。事例では、非常に複雑なレーザやフォトニクス-材料物理学を素早く簡単にモデル化している。(「アクティブフォトニック材料向けに迅速特性評価および参照ツール」Laser Focus World, December 2013, P24参照)。

図1

図1 順方向バイアスで発光する超高真空チャンバ内のLEDは、同時電子放射エネルギーを示している。これによって、GaNベースLEDsの効率低下の背後にオージェ再結合があることを明らかにしている(エコール・ポリテクニーク、Ph. Lavialle提供)。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2014/03/FT1-LFWJ1405.pdf