TDLAS燃焼測定で威力を発揮するVCSEL

独物理工学研究所(PTB)、独ダルムシュタット工科大学、および独デュースブルク・エッセン大学の研究チームは、内燃エンジン内の水(H2O)蒸気測定を目的として、垂直共振器形面発光レーザ(VCSEL)を組み込んだ最初の波長可変ダイオードレーザ吸収分光 (TDLASまたはTDLS)システムを開発し、実証した(1)。このシステムは分布帰還形(DFB)レーザダイオードを使った従来のTDLAS配置の改良版である。内燃エンジンにおける排気再循環(EGR)は、①ガスを排気ダクトから吸気側に戻すか (外部EGR)、または、②シリンダ内の燃焼後残留ガスを排気工程末端に保持することによって (内部EGR)、シリンダ内の不活性ガスの量を増大させる。EGRは燃焼に大きな影響を与える。したがって、点火前の残留ガスの量とその時間および空間分布に関する知見が重要になる。最も重要なEGRガス種、H2Oと二酸化炭素は、非現実的なほど高温にしない限り、蛍光を使って測定することはできない。幸いにも、両ガスは比較的大きな近赤外(NIR)吸収断面積を持つので、NIR領域における吸収を利用すれば検出できる。

なぜTDLASか

広帯域吸収分光法(BAS)や固定波長吸収分光法(FWAS)は、これらのEGR種の測定に利用できるとはいえ、高速で強い透過損失または明るいバックグラウンド放射に合わせた調節が困難なので、特異な場合や複雑なキャリブレーションルーチンに限定されている。その代わりとしての、改良型TDLAS、すなわち直接TDLAS(dTDLAS)は、(レーザ減衰または信号アクセス窓上の微粒子による)透過損失を効率よく補正し、火炎または高温表面からのルミネセンスを抑制する。さらに、dTDLASは、キャリブレーションなしで測定や、走査速度マルチキロヘルツでの高解像度のスペクトル吸収線プロファイルの測定も可能であり、これによって高速エンジン測定で重要なガス温度、圧力、バックグラウンド放射などのデータも得られる。この研究チームは、かつて、内燃エンジンの圧縮工程における水濃度を250μsの時間分解能で決定するDFBレーザベースのdTDLAS装置を開発した。しかし、当初使用した30mWの通信用DFBの有限のダイナミックレンジは高い変調周波数領域で著しく狭まり、エンジンの圧縮工程後半に見られる増大した圧力でのスペクトル吸収線の捕捉は不可能であった。

VCSELの利点

次に、この吸収分光セットアップで使用されたのは中心波長1369.84nmのVCSELであり、これは、出力がわずか0.17〜0.25mWであるが、その高い変調帯域幅と5-8Xの広い同調レンジ(1368.2〜1371.3nm)とによりTDLAS測定に有利であった(図1)。

図1

図1 ダイナミック同調レンジ対レーザ変調周波数をDFBレーザ(緑)とVCSEL(赤)光源とで比較した。(資料提供:PTB)

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2014/02/WN1-LFWJ1401.pdf