CMOSベース特殊撮像素子が新たなパフォーマンスレベルを達成

エルス・パートン、ジェローム・バロン、ピエット・デ・ムーア

今日のCMOSベース特殊撮像素子は非可視光感度および低消費電力レベルでの高データ取得レートを向上させた。これによって以前のCCDのみのアプリケーションを射程に収めるシステム・オン・チップ(SoC)撮像素子が実現する。

相補型金属酸化膜半導体(CMOS)撮像素子は、スマートフォンやデジタルカメラではおおむね電荷結合素子(CCD)撮像素子に取って代わっている、これはローコストと高集積性によるものである。しかし医療アプリケーション、顕微鏡、宇宙用途、マシンビジョンでは、CCD撮像素子はまだ市場で優位を占めている。つまり、これらの分野におけるCMOSの市場シェアはわずか10〜15%と推定され、これはパフォーマンスの問題によるものである。
 これに応えてimecの研究者は、ハイエンドアプリケーション向けのCCD撮像素子と同等、それをはるかに凌駕するCMOS撮像素子を開発している。もっと正確にいうと、1000倍までの速度、可視光域を超える波長感度が現在までのところで実証されている。

光レイヤーのイノベーション

特殊撮像素子の性能に対し光レイヤーの最適化が最重要である。反射防止コーティングで、撮像素子表面の反射を最小限に抑えることで高感度シリコンへの光透過を最大化する。非可視光UV光を検出するとき、設計者はシリコンの上のレイヤーの誘電体材料における光吸収を考慮する必要がある。同時に、シリコンへのUV光浸透は極めて浅いことも考慮する必要がある。
 極紫外光(EUV)検出では、非常に薄いボロン(B)のパッシベーションコーティングが用いられている。ボロンは吸収が最小であり、高線量下でも撮像素子の動作は安定する。たとえば、この技術によって最新のリソグラフィ装置の線量モニタリングができる。
 ハイパースペクトルフィルタによってCMOS撮像素子は新たな特性が加わる。アプリケーションとしては、工業検査、偽造防止、食品品質コントロール、それに皮膚癌検診などの医療用途がある。imecの研究者は、100のスペクトルフィルタを組み込んだハイパースペクトル撮像素子を開発した。フィルタは、市販CMOS撮像素子上にくさび形形状で設置されている。結果は、量産対応、完全CMOS適応加プロセス技術によるコンパクトな高速ハイパースペクトルカメラとなっている。
 組込まれたスペクトルフィルタは、狭帯域ファブリペロー(FP)干渉フィルタだ。FPフィルタは一般に、両端にミラーを持つ透明層(キャビティ)でできている。キャビティ長によって光フィルタの中心波長が決まり、ミラーの反射特性によってフィルタの半値全幅(FWHM)が決まる。
 これらのフィルタを利用して、様々なハイパースペクトル撮像素子デザインが実現できる。例えば、ライン走査ハイパースペクトル撮像素子は、直線運動をする物体の完全3Dデータキューブを記録できる。ハイパースペクトル撮像素子は、多様なアプリケーションの要求仕様に合うよう、原理的にどの画像センサでも処理ができるようになっている。同様にして、スペクトル範囲も調整可能であり、現在拡張スペクトル範囲400〜1000nmが開発中である。

改善された読出回路

アナログ・デジタルコンバータ(ADC)専門技術を使い、省電力大規模撮像素子の高速読出を可能にする新たな撮像素子設計を開発した。次世代高解像度テレビのピクセル数は8倍以上となり、読み出し速度は120フレーム/秒(fps)まで高速化される。
 従来の撮像素子では、カラム毎にピクセルを読み出し、続けてデータが1個のADCに多重される。そうではなく、撮像素子カラム毎に1個のADCを使うと、並列的にデジタル化でき、消費電力を下げながらフレームレートを高速化できる。最近実証した成果は、シグマ・デルタ(ΣΔ)アーキテクチュアを利用したカラムベース、12bit ADCだ。このデザインによって、60フレーム/s(fps)の速度で8Mpixel撮像素子の読み出しができる。
 回路集積では、組込CCD(eCCD)技術は両分野の最良のものを組み合わせている。CCDの電気・光性能と、CMOS読出エレクトロニクスの複雑さとスピードとを組み合わせた。CCDモジュールを0.13μm CMOSプロセスフローに加えることにより、CCDのようなピクセルとCMOS読出エレクトロニクスの両方を1個のデバイスで実現している。CCDピクセルの正常動作にとって重要パラメータの1つは電極間のサブミクロンギャップ(約150nm)で、これは最先端のリソグラフィで達成したパラメータである。このeCCDモジュールにより、アプリケーション要求にしたがったカスタムデザインが可能となり、裏面照射(BSI)にも適応している。
 eCCDのアプリケーション例として時間遅延積分(TDI)がある。CCDピクセルの電荷移動は、動画と同期した無雑音移動と積分を可能にする。これはCMOS撮像素子を使っていては、達成が極めて困難である。eCCD技術によって、超高速イメージングも可能になる(最高10億フレーム/秒)。この場合、CCD素子をアナログメモリとして使用して非常に多くの画像(約100)がピクセル内に蓄積される。100の画像を高速取得した後、ピクセルは従来の撮像素子と同じように読み出される。このバーストモードイメージングは、流体力学のような科学アプリケーションで用いられている。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2014/02/FT3-LFWJ1401.pdf