電気ポンピング式ポラリトンレーザ

新しいタイプの低出力半導体レーザは、重要なマイルストーン、最初の電気ポンピング動作に達した。2013年5月15日に数時間の差で出版されたNature誌とPhysical Review Letters 誌に、2つの研究グループが極めて類似したデモンストレーションを発表した(1)、(2)。どちらのグループもその論文を見るまで互いに相手グループの成功を知らなかった。
 1996 年にスイス連邦工科大学のアタク・イマモーグル(Atac Imamoglu)氏は、半導体内の光子と電子正孔対(励起子)との相互作用によって形成された準粒子であるポラリトンからコヒーレントな単色光を抽出するコンセプトを提案した。ポラリトンはボソンであるため、多数が同じ量子状態を占め、ボース・アインシュタイン濃縮体に類似した濃縮体を形成することができる。これらの状態にあるポラリトンはサブナノ秒の寿命を持ち、光子を放出して自然崩壊する。凝縮体中のすべてのポラリトンが同じ量子状態を占めるので、放出される光子はコヒーレントで、単色である。

潜在的な高効率

理論予測によれば、ポラリトンレーザは低出力で高効率であり、光インターコネクションなどの用途に魅力的である。英サウサンプトン大学のアレクシー・カボキン氏(Alexey Kavokin)は、ポラリトン機構は反転分布を必要としないと言う。「それゆえに、われわれは、従来の半導体マイクロレーザに比して、しきい値が多数ケタ低くなると期待している」と指摘する。ポラリトンは超高速も約束する。最初のポラリトンレーザが極低温に冷却された半導体微小共振器の光ポンピングによって実証されてから、ちょうど2年後のことだ。2007年に、カボキン氏のグループは室温での光ポンピングを初めて実証した(3)。
 これを電気ポンピングへシフトさせるには、大きな変革が必要だ。まず、ドーピングによって、p-n接合を形成し、電流を流すための微細構造を作製した。実験用として論理にかなった半導体はヒ化ガリウム(GaAs )である。なぜならば、技術的開発が十分に進み、ポラリトン発光ダイオードが2008年に開発されたからだ(4)。しかし、コヒーレントな単色光を放射し、その光がレーザ様の微小共振器ではなくポラリトン由来であるという説得力のある証拠を示すデバイスが開発されるまでには長い年月を要した。
 1つの重要な問題はポラリトン励起と凝縮過程の性質であった。「それは励起子ポピュレーションを発生する電子正孔プラズマを作ることで開始し、次いで、これらの励起子が共振空胴内で光子と結合してポラリトンを生成する」と、Physical Review Letters誌にこのアプローチを投稿した研究グループのリーダである、米ミシガン大学のパラブ・バッタチャリヤ氏(Pallab Bhattacharya)は語っている。

(もっと読む場合は出典元へ)
出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2014/02/0012wn02.pdf