スーパーコンティニウムファイバレーザに極めて明るい未来

アダム・デバイン、アナトリ・グルディニン

わずか10年で、スーパーコンティニウムのパワーレベルは、380〜2400nmのスペクトラル範囲で1桁あがった。光ファイバのスーパーコンティニウム生成について理解が深まったことから、製品やアプリケーションの継続的展開が可能になっている。

スペクトル広がりと新しい周波数生成が、何十年も前から利用され、研究されている非線形オプティクスの特徴になっている。1970年代、光パルスの極度の非線形的スペクトル広がりによって広がった「白色光」の生成が「スーパーコンティニアム」という言葉を生んだ。しかし、ガラスの非線形が相対的に低いため、バルク材料で大きなスペクトラル広がりを作り出すには非常に高いピークパワーが必要になる。相互作用長はスポットサイズに反比例する。集中が強ければ強いほど、有効相互作用長はますます短くなる(一般には数センチメートル)。わかりやすい解は、光を閉じこめ、光ファイバの導波特性を利用して相互作用長を延ばすことだ。
 しかし光ファイバを使用することは問題の部分的な解決にしかならない。と言うのは、標準ファイバ(SMF-28タイプ)の非線形特性によるスペクトル広がりは、主に長波長側にスペクトルが広がり、1064nm近傍の励起では、スペクトルの可視光側には何もないからだ。
 フィリップ・ラッセルとジョナサン・ナイトによるフォトニック結晶ファイバ(PCF)の発明により、スーパーコンティニウム生成の展望全体が1990年代半ばに変わった。PCFは、従来のファイバのように添加物ではなく、コアを取り囲む微細な穴の配列で光導波路を劇的に変えたものだ。
 これらPCFの普通ではない構造には、比較的安い製造コスト(全体的な構造は添加物を用いないピュアシリカガラスをベースにしている)から固有の光特性まで、多くの利点がある。最も注目に値する点は、ゼロGVD(群速度分散)波長を1μm領域、さらに短波長側に動かせる、分散特性の調整能力だ。これら固有の特徴は、2000年にベル研がTi:sapphireレーザでPCF を励起してスーパーコンティニウム生成を実証し、初めて認識された(2)。
 今では、もしポンプ波長がゼロGVD波長近傍にあれば、ストークス信号とアンチストークス信号の群速度が釣り合って非線形スペクトル広がりはほぼ対照的に長波長、短波長の両側に広がると言うことがよく理解できるようになっている。そうすると、400-2400nmの波長範囲全体をカバーする極めて広いスペクトルを実現することができる。
 2005 年、ターンキースーパーコンティニウムファイバレーザは非常に斬新なものであり、先行導入者の注目を集めた。それは主に研究者や企業の研究グループで、その技術をどのように自分たちの研究や製品開発に組み込むかに興味を示した。今日、スーパーコンティニウムは研究の中では確立された光源であり、産業および医療ツール、あるいは計測ではコモディティ化された光源になりつつある。
 過去10年、スーパーコンティニウムレーザの発展を後押ししてきたのは技術的進歩と絶えず変化する市場要求である。科学的視点からは、スーパーコンティニウムレーザメーカーは技術の限界を認識せざるをえなかった。それに対して市場は、ビジネスで勝ち残り、スーパーコンティニウムレーザが産業用途で主流となるように、パフォーマンスを特殊アプリケーションに合わせることを要求してきた。根本的な技術をよく理解することでレーザを経済的かつ高信頼に造ることができるようになる。
 初めて紹介されてから、スーパーコンティニウムレーザが発展してきた方向は3つに分けられる。ハイパワー化、広帯域化と量産。それらが実現したときに、ローコストと信頼性評価が最高に達したのである。

パワー拡大

ほぼ全てのスーパーコンティニウムファイバレーザが同じ基本構成をとっている。高いピークパワーのポンプ光源は光ファイバで効果的に非線形効果を発生させるためのものだ。スーパーコンティニウム発生のためのPCFの長さも重要だ。
 ポンプ光は一般に、MOPA(主発振器パワー増幅器)アーキテクチャをベースにしている。このアーキテクチャでは、主発振器からの約1064nmの超短パルスが高出力イッテルビウム添加ファイバアンプで増幅される。励起光源は、1個かそれ以上の数の高輝度励起レーザダイオードまたはダイオードモジュールとなる。
 このMOPAアーキテクチャを利用したパルスはピーク強度が高い。それが高非線形のPCFに注入され、次にスペクトル広がりが起こりスーパーコンティニウムが生成される。大雑把に言えば、スペクトラル広がりはパルスのピークパワーによって決まる。MOPAの所定の平均パワーとしては、パルス幅とその繰り返しレートの両方に反比例する。
 MOPA設計は柔軟であるので、主発振器やファイバアンプのパラメータは独立に変更することができる。PCFに入力する光パワーは、比較的効率的に無理なく拡大できる。繰り返しレートが高いマスター光源と、高い平均パワーを維持できるファイバアンプ使うだけでよい。このような現象は、スーパーコンティニウム生成で最高光パワーは、ファイバ励起光源が連続波(CW)動作する時に達成できる、と言うことに相当する。一見、スペクトル広がりを非常に大きくするには、数kW 級のCW ファイバレーザからの平均パワーが必要なように思われる。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2021/07/lfwj1309_P22.pdf