高繰り返しレートレーザのパルスエネルギーをリアルタイム計測

ドン・ドゥーリィ

これまでは難しかった高繰り返しレートレーザのパルスエネルギー計測が今や可能になっており、精度も向上して推定値は使われなくなった。

近年、高繰り返しレートのパルス励起個体(DPSS)およびファイバレーザのアプリケーションが爆発的に増えている。このようなレーザを使う産業はいくらでもある。アプリケーションの例を挙げれば薄膜のアブレーション、マイクロマシニング、レーザマーキング、マイクロビア穴開け、太陽電池スクライビング(図1)、ライダなどがある。
 これら高繰り返しレートパルスレーザの魅力は何だろうか? この種のレーザは、小型、高速、高効率であり、多様な波長を出力し、高繰り返しレート(rep rates)で動作する。数ミクロン範囲の精度で材料を正確に加工でき、ほとんど熱が発生しない。短(ピコ秒〜ナノ秒の範囲)パルスであるため、得られるピークパワーは数100メガワット(MW)になる、これは基本的に個々のパルスが光学的過程で材料を切断するレベルである。そこでは多光子吸収によって材料内の電子が励起され、分子結合を直接切断されている。
 この種のレーザは、数ミリ秒という短時間に数千パルスを放出するので仕事量が大きい。わずか数ミリ秒でメモリチップに「ビア」を開けるために使われる。あるいは、薄膜太陽電池にスクライブラインやエッジ・アイソレーション(絶縁)の直接加工を行い、ライダ技術を用いて飛行中に土地の輪郭を捉えるなどの用途がある。
 「高繰り返しレート」の意味は何だろうか? 例えば、QスイッチDPSSレーザは、1〜300kHzで動作可能であるが、ファイバレーザの繰り返しレートはさらに高く、500kHzを超える。とは言え、今日のアプリケーションの大半は、繰り返しレートの仕様を50、100、200kHz と定めている。パルスエネルギーレベルは、数ナノジュール(nJ)〜数ミリジュール(mJ)で、一般に266〜1550nm までの間で波長を選択できる。
 高繰り返しレートのアプリケーションは全て、それにとって不可欠の特殊パフォーマンスパラメータを持っている。これに含まれるのは、パルス間のエネルギー安定性、パルスジッタ、ミッシングパルス、エネルギーしきい値もしくはエネルギー密度しきい値を下回るパルス。これらのレーザ特性の全て、あるいは多くが、材料加工品質を決める。
 このようなパラメータのリアルタイム計測はどうすればよいか? 最近までこのような計測は非常に難しかった。平均パワーの計測には、熱量計を使用しなければならなかった。繰り返しレートや相対密度の計測には、高速フォトダイオードが必要であり、数パルスの形状を捉えるには、高価なデジタルオシロスコープを用いなければならなかった。次にエンジニアは、パルス形状についての推定をいくつも行い、パルスエネルギーとパルス間の安定性の計算を行わなければならなかった。この作業が全て終わった後に、ようやくレーザのパフォーマンスがどうであるかの評価をすることになる。

図1

図1 太陽電池スクライビングで用いられる重複切断パタンの概念図

高速応答のための新回路

現在、熱パワーメータに依存しない異なるアプローチがある。その効果は、簡素化向上であり、推量を減らして精度を高めることになる。この新しいタイプの測定器実現に必要だったものは一群の高速パルス−エネルギー検出器の開発と検証だ。この高速パルス−エネルギー検出器は、数100ナノ秒の中にナノ秒の短パルスを統合し、いつでも続いて次のパルスが出せる状態になっている。
 高速応答は、負荷キャパシタに検出器電流パルスを統合した回路に設計した小型の低容量検出器を用いて実現した。抵抗容量(RC)特性は極めて重要であり、電圧出力の立ち上がり時間が数100ナノ秒、立ち下がり時間が数マイクロ秒となるように設定した。これによって測定器は、230kHzまで正確に計測できるようになっている。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2014/02/201307_0040feature06.pdf