PRISMで中空コアファイバをシングルモードに
「改良シングルモードに向けた摂動共鳴」(PRISM)アプローチにより設計された中空コアファイバは、基本モードを低損失で伝搬しながら高次モードを急激に減衰させる。
中空コアファイバ(HCF)は、劇的な影響を与える可能性があるために、興味深い技術となっている。ある意味で、理想的な導波路であり、光が導波材料との相互作用から逃れて自由空間を伝搬できるようにしながら、逆説的ではあるが光を制御する。コア材料を除去することで様々なシステムで画期的なパフォーマンス上の利点を提供する。通信リンクあるいは高精度計測システムでは、HCFは光の非線形性を取り除き、基本的なノイズ限界を格段に向上させる。低遅延システムでは、最小伝搬遅延が保証される。センサでは、全光出力で試料およびその他の関心対象物を捉えることができる。
これら質的利点は、HCFにいくつかの課題があるため、実施するのが難しいことが分かっている。実用面では、HCFは標準的なファイバと比べると製造も接続も難しい。より基本的な点では、ほとんどのHCFはシングルモードではなく、ファイバの損失は2005年の報告にある1.2dB/km の記録を破るに至っていない。通常のHCFでは、これらの課題はトレードオフの関係にあり、シングルモードにしようとすると損失が増えることになる。
シングルモード、低損失HCFへ
先頃、OFS 研究所の研究チームは、これまでにないクラスのシングルモード化したHCFを実証した。これは、損失と伝搬モード数という通例のトレードオフの影響を受けない(2)。研究チームはシングルモード動作が不可欠な様々なアプリケーションで、ソリッドファイバに即座に置き換えられる初のHCFを発表した。それはシングルモード動作が必須であるアプリケーションの現状の損失や接続性に対しても許容できるものとなっている。用途の一例としては、データセンタの低遅延ファイバがある。そこでは、短距離リンクなので現状のHCFの損失も許容できるが、不要なモードは直ちにファイバから除かれなければならない。
今日までに製造されたほぼ全てのHCFは、シングルモードにほど遠い。高次モード抑圧を全くしていない従来の20m長19セルHCFから得たビームプロファイルは、複数の高次モードのコヒーレントビートによって著しく歪められている。
さらに、基本モードと高次モード間の位相変動により、時間的にも波長的にもビームプロファイルが不安定になる。モード状態を計測する最先端の技術が最近開発されており、従来のHCFにおける問題の困難さを数量化できるようになっている(3)。モード干渉は別々のビートノートとして取り出し、HCFのスペクトログラムを得て(図1)、高次モード状態対波長と群遅延差(DGD)をプロットすることができる。多数の明るい線1つ1つが、個別の明確な高次モード(HOM)に対応している。
シングルモード実現のために、HOM抑圧特性を持つようにファイバを作製した(図2)。その格子(ホール間隔45μm、空隙95%)および「19セルコア」(19の格子エレメントを除去して形成)は、従来のファイバやこれまでの多くのHCFと似ている。特別な点は、一対のサイドコア、つまり「シャント」(バイパス)である。これによってコアの不要モードが外側のクラッドに染み出る。ファイバをシングルモードにするために、この漏出の選択性が強くなければならない。不要なモードは素早く消えてしまい( 1dB/m 程度のレート)、一方で基本モードの過剰損失は無視できる程度(例えば、1dB/km くらい)でなければならない。
選択性の高い損失の決め手は位相整合である。コアモードは直接クラッドには浸透しないが、シャントを踏み台として使う。まずシャントモードに結合し、次いで消失させる。コアモードとシャントモードが一致しているならば、この二段階結合は非常に効果的である。したがって、シャントはコアモードのうちの最も問題があるLP11 モードと位相整合された共鳴を持つように設計されている。しかし、位相が外れて伝搬するモードでは、コアから一点で結合する光はファイバから数センチメートル進んだところでコアに戻るだけだ。シャントは、基本コアモードと位相がずれるように設計されており、したがってこのモードは本質的に結合せず、結合に関連した損失も無視できる。
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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2014/02/201307_0028feature03.pdf