ナノメカニカルスイッチング機能をもつデュアルコアファイバ

英サウサンプトン大学の研究チームは、2 つのコア間の結合を変化させ、コア間の光のジャンプを微小な圧力によって実現する斬新なデュアルコアファイバアーキテクチャを発表した(1)。
 オプトエレクトロニクス・リサーチ・センター(ORC )の研究チームは、10年ほど前から、この技術の開発に取り組んできたが、ついに独創的なファイバを線引する技術的な課題を解決した。これによって、複数のコアをもち、精密センシングや光バッファリングからビーム走査までの広範な用途をもつファイバへの道が開かれた。
 ORC のウェイ・ロー氏(Wei Loh)は、マルチコアファイバはすでに成熟した技術であるが、これまでのところ機能的柔軟性に欠けることに注目した。同氏は、「従来のファイバは完成した直後から、機械構造的には完全な剛体になってしまう」と説明する。「現在では、技術改良が進み、コアがメカニカルに可動するファイバも作製できるようになった。これは、マイクロメカニカルシステム(MEMS)デバイスに極めて良く似ている」と付け加えた。
 研究チームは、珪酸鉛ガラス(低い融点と押出加工の容易さから選択)とそれぞれ円形の空孔がある2 つのスロット付きスチール金型を使って製造を開始した。押出加工したプリフォームを直径が1mm ほどになるまで引き、クラッドとなるガラスジャケットチューブ内に挿入し、それを線引きして最終ファイバ形状を得た。2つのサブミクロンファイバは、全ファイバの外壁に固定された200nm厚のガラス膜によって所定の位置に保たれた。2つのコア間距離は約2μmとした(図1)。

図1

図1 (a)デュアルコアファイバを図式的に示している、(b)プリフォームの写真、(c)、(d)完成したファイバとしての走査電子顕微鏡写真。(資料提供:ORC)

空気圧の変化によるスイッチング

1つのコアを他方のコアに対して相対的に移動させて、それらの光結合を変化させるために、1本のスロットをコアの1つに隣接するファイバ端に追加した。他方のコアに隣接するファイバ壁をエッチングによって除去した。こうすることで、閉じたままのファイバの残り半分に窒素ガスでわずかな圧力を加え、その力で1 つのコアを含むガラス膜を他方に向けて曲げることが可能になる。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2013/05/201305_0014wn02.pdf