2012年度光産業国内生産額、全出荷額調査結果

井上 憲人

光産業技術振興協会(光協会)は、2012年度の調査結果をまとめた。
 アンケート調査は2012年10月に335社に対してアンケート調査票を発送、2012年12月〜2013年2月に回収。102社から回答を得た。

差が広がる国内生産額と総出荷額

調査結果によると、2011年度国内生産額(実績)は7兆2,999億円(成長率▲10.3 %) 、2011年度全出荷額(実績)は 15兆7,162億円(成長率 ▲ 2.7 %)。全体では、国内生産はプラス成長だったが、全出荷は輸出の減少によりマイナス成長に転じた。
 2012年度国内生産額(見込み)は7兆 624億円(成長率 ▲ 3.3 %)、2012年度全出荷額(見込)は15兆6,798億円(成長率 ▲ 0.2 %)となっている。
 表1から分かるように、国内生産額と出荷額の差が大きい分野は、情報記録分野、入出力分野、ディスプレイ・固体照明分野。これらの分野の2011年度実績を見ると、国内生産は出荷額の1/4〜1/3程度となっている。国内生産そのものは、情報記録分野とディスプレイ・固体照明分野は金額ベースで強い減少傾向を示している。光ディスク装置記録型は、2011年度と2012年度の比較では国内生産は激減。出荷額自体も半減となっており、この分野で使われる短波長半導体レーザにも強い影響が出ている(表2)。
 入出力分野は、出荷額、生産額とも横這いであるが、全出荷額に対する国内生産額は、2011年度、2012年度とも40%前後で、生産が海外移転していることがうかがえる。
 入出力分野よりも一段と生産の海外移転が進んでいるのはディスプレイ。2011年度実績では、国内生産比率は15%であったが、2012 年度見込ではわずか6%となり、この分野の国内生産は壊滅と言ってよい。
 固体照明は「ディスプレイ・固体照明分野」として扱われているが、このセグメントは2011年の東日本大震災の影響もあって高い成長率が続いている。また、国内生産比率も8 割弱を維持している。この分野で使用される発光ダイオード(LED)は、100%国内生産であることが表から読み取れる。

レーザ加工分野

レーザ加工分野の2011年度出荷実績はわずかに減少であるが、2012年度出荷見込額は22.7%の減少と見られている。装置だけを見ると、炭酸ガスレーザは、2011年度実績では22.5%成長した後、2012年度は前年度の増加分を帳消しにする23.3%のマイナス成長が見込まれている。一方、固体レーザは2011年度実績で約30%減となった後、2012年度見込では3.7%の成長見込。レーザ応用生産装置の50%以上を占めるエキシマレーザは、2011年度実績で10.2%減となった後、2012年度見込では約30%減と見込まれており、さらに激しく落ち込む。この分野の「2011年度の全出荷額」について光協会は、次のように分析している。
 「炭酸ガスレーザは、スマートフォンやタブレット端末の普及によりプリント基板穴あけ用が継続して伸び、また、切断用も自動化機能を強化するなどにより堅調に推移して22.5%と増加した。固体レーザは、景気の低迷により半導体関連の設備投資が落ち込みトリミング・リペア装置を始めとして全分野で低下して▲ 29.6%と大きく減少した。エキシマレーザは、KrF露光装置は増加したものの価格の高いArF液浸が減少して▲ 10.2% と減少。全体としても▲2.2% と僅かに減少した」。
 さらに、2012年度全出荷見込額については、「炭酸ガスレーザは、2年連続大きく伸びた反動で調整局面となり▲ 23.3%と減少が見込まれている。固体レーザは、スマートフォンの伸び及びLEDへの設備投資増加により切断穴あけ用が59.8%と大幅に増加して、3.7%の増加が見込まれている。エキシマレーザは、景気低迷による半導体関連への投資が抑制され▲ 29.6%と減少が見込まれている。全体としては▲ 22.7%と減少が見込まれている」と分析している。
 この分野は、出荷額と生産額の差はほとんどないので、ほぼ全面的に国内生産であると考えてよい。
 レーザ発振器だけを見ると、2011年度実績は8.3%の成長、2012年度(見込)は22.0%のマイナス成長。個別に見て特に成長率が高いのは、ファイバレーザ発振器。2008年度実績ではわずか2億6800万円だったが、2〜3桁成長を続けて2011年度実績は16億1500万円、2012年度(見込)には21億8500万円に達すると見込まれている。これにより、レーザ発振器全体に占めるファイバレーザ発振器のシェアは増加トレンドが鮮明になっており、2012 年度にはシェア4.5% が見込まれている。同様にシェアを伸ばしているのが固体レーザ発振器。固体レーザ発振器は、2010年度以降成長を続けており、2012年度には60億円を突破し、レーザ発振器に占めるシェアは2 桁(12.5%)に達する見込だ(表2)。

情報通信分野

この分野の出荷金額と生産金額とに大きな差は見られないので、ここでは出荷金額を中心に見ていく。
 2011年度出荷実績は全体としてはほぼ横這いだが、個別に見ると成長、後退、停滞が入り乱れている。光伝送機器・装置で映像伝送が69.3%減となっているのは地上デジタル放送への切替が一段落したため。これに次いで下落幅が大きいのは幹線系(11.7% 減)。光ファイバ増幅器は、幹線系、海底ケーブルシステムなどロングホールや映像伝送に使用されるため、装置類の不調の影響を受けている。
 加入者系は、まだ2011年度の段階では成長の波を維持しており、10.5%増だった。しかし、FTTH加入者増加ペースは、2012年になると前年比で平均10万件/ 四半期ほど落ちており、2012年度見込にはそれが反映されて、前年度比26.7%減となる。
 新たに設けられたセグメント「光インタフェースが装着できるルータ/スイッチ」は、光協会の説明によると、以前からデータは取っていたが、金額が大きくなってきたため、独立の項目とした。このセグメントは、2011年度実績は前年度比プラス成長だが、2012年度はマイナス成長を見込んでいる。一般的な傾向として、データセンタなどで使用されるスイッチは、半導体プロセスの進化により10GBASE-T の消費電力が下がってきているため、光ポートの代わりに銅線ポートを持つ製品が普及しつつある。この場合もアップリンクは光ポートになっているが、光インタフェースの数は大幅に減ることになる。このセグメントは、数量が多少増えても金額的には、よくて「横這い」となると見られている。
 2012年度で成長が見込まれているセグメントとして「メトロ系」が目につく。光協会の説明によると、「メトロ系は、LTEサービスの開始によりモバイル系ネットワークの大容量高速化への投資による」。モバイルバックホールが成長の原動力という説明だ。ブロードバンドは、有線(FTTH)からワイヤレス(LTEなど)に移行するのが世界的な傾向となっており、国内でもスマートフォンユーザーの増加、トラフィックを運ぶLTEの高速化にともない、モバイルバックホールは、今後一段と太くなる傾向にあると見てよさそうだ。
 光部品のうち、発光素子は2011年度実績では8%減だったが、2012年度見込では22.7%の成長。この成長の原動力は1.3μm帯の製品で、デバイス(35.3%)もモジュール(61.5%)も大きく成長すると見られている。これは、価格の高い40G/100G 光トランシーバが出始めていることを反映している。一方、光増幅器の励起光源として使用される1.48μm/0.98μm帯のレーザは、2011年度実績で68.2%の大幅減だった。これは、アクセス系に使用されている1.49μmレーザの需要減を反映した数字と言える(表2)。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2013/05/201305_0020mw.pdf