電子ペーパーディスプレイに貢献するバイオミメティクス
情報をやり取りするために順応性、反射性のある表面を必要としているという点で、電子ペーパーと一部の生物は共通している。両者の目的は、光学的な損失なしに、さまざまな色や模様、偏光、コントラストの変化を使用することである。その理由は、希望の物理的な外観をエネルギー効率の観点から最大限に引き出し、制御するためである。米シンシナティ大学や米海洋生物学研究
所(USA Marine Biological Laborator)、米ライト・パターソン空軍基地の空軍研究所(Air Force Research Laboratory)、そして米陸軍研究所(Army Research Laboratory)の研究者らは、これらのディスプレイの共通点を認識している。そして、ヤリイカ、コウイカ、タコなどの頭足類に焦点を当てて、生物の順応的な配色や外観に利用されるバイオミメティクスの知識基盤と、一連の科学的メトリクスを使用する反射式電子ペーパーディスプレイ(アマゾンのKindleやソニーのReaderなど)の合成法を融合しようと試みている(1)。
順応的反射メトリクス
特に色の生成においては、電子ペーパーは生物組織から1 億年も遅れをとっている。そのため、光電子工学のディスプレイエンジニアはバイオミメティクスをより詳細に研究すべきである。ヤリイカとアマゾンのKindle との比較はあまり意味あるものではないが、色素胞、虹色素胞、白色素胞といった生物色素や反射体と、類似の機能を持つ合成ピクセルやe インクのような光電子工学の構成要素との間で機能、性能を比較することは重要であると、研究者は述べている。
頭足類では、色素胞は嚢内に詰め込まれている色素によって色を作るが、この嚢はおよそ300msの時間スケールで、直径約0.1mm から2.0mm の大きさをとる(図1)。最も関係が近い電子ペーパーディスプレイは電気泳動運動型や電気流体型である。前者は数百ms以上で電場を使用して色素を拡散、集合させる。また電気流体型は数十ms以上で色素の気泡を伸縮させるために、電気機械構造を使用している。
2つのアプローチのうち、シアン、マゼンダ、イエローの電気泳動膜は、原色を用いた合成適応色技術では現在の最高性能を持つ新聞印刷に近いフルカラーのイメージを作成できる。もうひとつの電気流体法は、より短い時間スケールで作動し、フルカラーのディスプレイを製造できる。
生物の配色を作り出す色素胞とは異なり、虹色素胞や白色素胞は背景反射として機能することが多い。虹色素胞は細胞質や反射タンパク質、グアニン結晶による周期的な層から構成されている。幅は1mmほどで、多層の反射系として機能し、おおむね100nm 以上の波長において60 から80% の反射ピークシフトを生み出す。虹色素胞の一部には、紫外線から赤外線までの波長帯に特化したものもある。
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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2013/03/201303_0012wn01.pdf