世界規模の逆風を克服するレーザ市場

ゲイル・オーバートン、アレン・ノジー、デイビッド・A・ベルフォルテ、コナード・ホルトン

国債の動向や気まぐれな消費者支出に左右されやすい市場分野を対象とするレーザ供給メーカーの苦戦はまだまだ続く見通しだ。しかし全般的には、レーザは、旧来の非レーザ技術を置き換える「ツール」としての地位を確立しつつあり、販売は増加傾向にある。

世界経済の逆風が引き続き吹き荒れる中、大不況後の数年間にその「余震」として味わった不安感や恐怖心からレーザ市場はいまだ抜け切れずにいるが、長期的な販売予測においては、レーザは、経済的見地から重要性が高く、多数の分野に利点をもたらす成熟した技術であり、さらなる地域的または世界的な不況が押し寄せたとしてもほとんど影響を受けることはないと評価されている。世界規模の債務危機によって、2013年の一部の設備投資支出は抑えられることが予測されるにもかかわらず、レーザは製造の自動化を可能にし、(世界的な優先課題である)消費エネルギー削減のための効率改善を達成することによって、厳しい経済情勢における企業の競争力強化に貢献する。
 レーザは今や、実証済みの産業用ツールであり、多くの分野においてますますコモディティ化が進んでいる。競合するレーザ企業をしのぐことだけでなく、機械的切断、トーチ溶接、熱加工といった従来の非レーザ技術に勝る能力を提供することを目的として製品が開発されている。これと同時に、超小型半導体レーザやナノレーザもまた別の種類のツールとなっており、かなりの微細化と小型化が実現されていて、光通信トランシーバのみならず、広域監視、環境モニタリング、移植(埋め込み)可能なLab-on-a-Chipの診断センサの用途においても汎用的に使用される日が近づきつつある。
 米ディレクテッド・ライト社(Directed Light)の社長を務めるニール・ボール氏(Neil Ball)は、「欧州ソブリン債務危機と中国における景気低迷という現実に直面する中、レーザは50年も前に登場したにもかかわらず、今なお『新
興』技術であるとわれわれは捉えている。当社はレーザ部品供給および委託メーカーとして17種類の異なるレーザシステムを扱い、インプラントやプローブなどの医療機器およびクラウドコンピューティング用コンポーネントの量産や、米国が金型産業の国内回帰を推進した恩恵をうけてモールドやダイのリペアに従事しているが、レーザ材料加工、特に500W未満の微細加工は、まだ最大限の可能性を発揮してはいないとわれわれは考えている。再び景気後退が訪れたとしても、レーザは世界中で旧来の切断および溶接技術を置き換え続けるとともに、レーザでしか実現できない新しい応用分野を開拓していくだろう」と述べている。
 レーザアニール、リソグラフィ、高度なパッケージングを行う米ウルトラテック社(Ultratech)も同意見だ。ウルトラテック社のレーザ製品マーケティング担当バイスプレジデントを務めるジェフ・ヘブ氏(Jeff Hebb)は、「当社が行っている作業をレーザなしで行う手段はない。半導体のノードが45nm未満になると、素子の性能強化とリーク電流の低減にミリ秒レーザアニールが絶対に必要である。従来の熱とフラッシュランプによるアニール処理では、到底これにかなわない」と言う。ヘブ氏は、レーザスパイクアニールが現在、論理素子には広く採用されているが、メモリ市場にはまだ導入されていないことを指摘した。これが、レーザアニールの大きな飛躍を予測させる材料となっている。またウルトラテック社は、同社の新しい「デュアルビーム」技術によってレーザアニール市場の拡大を図っている。同技術では、主要なCO2レーザビームに加えて固体レーザを使用することで、加工の柔軟性をさらに高める。
 「イネーブラーとしてのレーザ」という概念は、バイオフォトニクス業界においてさらなる支持を得ている。米ルメニス社(Lumenis)のAdvanced Products Groupシニアディレクタを務めるレイ・ショイエ氏(Ray Choye)は、「波長の特定性を持たない熱エネルギー源や広帯域光源もレーザで実現可能だ」と述べる。「蛍光研究、光線力学療法、さらには外科的応用分野を対象とした、特定の発色団をターゲットとするレーザ波長の使用に加えて、当社ではレーザとその制御された温度プロファイルを、特にWounded Warriors(イラクやアフガニスタンでの戦闘によって負傷し障害が残る帰還兵)を対象とした瘢痕形成の目的に向けて研究している。レーザによる『治癒反応』によって、瘢痕化した皮膚の機能と外観を復元することができるためである」と同氏は言う。
 また、負債に苦しむ欧州においても、超高速レーザを製造するスイスのワンファイブ社(Onefive)は楽観的な展望を抱いている。「産業用レーザは、従来の機械的手法が行き詰まっている応用分野において引き続き勢いを増している。例えば、医療、生命科学、ディスプレイ、照明の分野である。レーザを採用するソリューションが最終顧客に対し、明確で多大な付加価値を提供し、高水準の支出を維持する限り、マクロ経済での出来事は、これらの応用分野の売上高に直接的な影響を与えないだろう」とワンファイブ社の最高経営責任者(CEO)を務めるルーカス・クライナー氏(Lukas Krainer)は述べる。
 2013 年には、インテリジェントな光電素子が急成長を遂げ、帯域幅需要が爆発的に増加し、高齢化が進む中、通信、微細材料加工、医療といった一部の市場は屈することなく成長を維持する見込みである。しかし、展望は全般的に明るいというわけではない。マクロ材料加工、マイクロリソグラフィ、軍事産業や研究開発は今後も、国内総生産(GDP:gross domestic product)、政治動向、消費者支出傾向、つまり、この数年間にレーザ市場に悪影響を及ぼしたマクロ経済と同じ力に左右されやすい状態が続く。

債務危機

われわれは、1990年から1992年にかけての世界的な緩やかな景気後退と、2008/2009年の米国の大不況において再び、「歴史は繰り返す」という表現どおりの現象を目の当たりにした。レーザ販売は多くの分野(特に、製造と民生機器に対する消費者支出に密接に関連するマクロ材料加工の分野)で減少し、世界のGDP推移に追従する形となった。
 そして現在、表向きには米国は景気後退から脱却し、BRIC 諸国(ブラジル、ロシア、インド、中国)のGDP値は(緩やかながら)上昇しているにもかかわらず、欧州ソブリン債務危機の影響により、ユーロ圏17カ国(EA17)の2012年のGDP成長率は全体で−0.3%と、マイナス成長になることが予測されている。一部の欧州諸国に対しては、ユーロスタット(Eurostat)による2012年GDP予測はさらにひどく、ギリシャが−4.7%、ポルトガルが−3.3%、スペインが−1.8%、イタリアが−1.4%となっている。しかもこれらの予測値が出された後の2012年11月初頭に、欧州委員会(EC)は2013年度のEA17のGDP予測を、2012年晩春に出した当初の1.0%から、わずか0.1%へと下方修正している。
 米国に端を発した債務危機は、明らかに欧州と中国に影響を及ぼしている。2012年第2四半期の時点で、ユーロ圏の政府債のGDP に対する比率は、EA17諸国で90%に達した。また、英キャピタル・エコノミクス社(Capital Economics)は2012年11月、「(アジア新興諸国の)民間部門信用のGDPに対する比率がこの数年間で急騰し、現在は過去最高の値に達している。これについて、同地域が次の金融危機の種をまいている恐れがあるとする見方も出ている」と報告している(1)。キャピタル・エコノミクス社は具体的な懸念として、「中国において、急速な貸付の伸びが資産バブルを促進していることを示す兆候はほとんど見られない。しかし、製造部門における生産能力の急激な増加につながっている。過剰設備は、中期的な成長見通しを圧迫する可能性が高い」としている。
 「中国市場の低迷は、ドイツのような輸出志向の強い国に影響を与える」と独トルンプ社(TRUMPF)のレーザおよびエレクトロニクス部門プレジデントを務めるピーター・ライビンガー氏(Peter Leibinger)は述べる。「欧州の投資環境はやや低調で、ユーロ危機に関する情報が絶えず流れていることがその原因の1 つである。欧州の自動車業界における資本財投資は明らかに減速しており、これがレーザ業界に影響を及ぼすだろう」(ライビンガー氏)
 2013年にかけて不安は抱えるものの、トルンプ社は大不況後の複数年にわたって記録的な成長を遂げている。2010/2011会計年度(2011年6月30日締め)の売上高は25億8000万ドル、2011/2012会計年度(2012年6月30日締め)の売上
高は15%増の29億8000万ドルとさらに記録を更新し、増加率は2009/2010会計年度の51% よりは減少したものの、かなり素晴らしい業績であることにちがいはない。現在および過去のトルンプ社の従業員らは、同社の「加工機」メーカーとしてのルーツがこの成功の最大の要因であると考えている。トルンプ社は早い段階で、メーカーが自社の部品の切断または溶接に何が使われているかを特に気にしていないことに気が付いた。ROIの改善に向けて、より優れていて、より高速で、より操作が容易であればただそれだけでよかったのである。トルンプ社は現在、従来の機械式の加工装置に加えて、CO2、固体、ダイオード、超高速の各レーザ、つまり作業に使えるあらゆる「加工機」を提供している。
 トルンプ社レーザ部門のゼネラルマネージャを務めるクリストフ・レーナー氏(Christof Lehner)は、「この数年間のような急速な成長は期待していないが、自動車業界において、アルミニウムなどのより軽量な材料を使用する傾向が高まっていることから、レーザ金属加工の見通しは明るい」と述べる。多くの自動車メーカーが、さらに高い走行距離基準を満たすために、本体パネルをすべてアルミニウム製にする方向に向かう可能性があるといううわさが流れている。「また、電気自動車のバッテリに対するレーザ加工や、ホットスタンピング用のレーザ切断機に関しては、生産能力が過剰になるということは決してあり得ない。平板切断事業についてはこの10年間で危機を脱し、レーザ切断機の販売台数が穴あけ機を上回った」とレーナー氏は言う。また、ランプ励起固体(LPSS:lamp-pumped solidstate)レーザに代わってファイバおよびディスクレーザが使用されつつあると同氏は付け加えた。ただし、中国は例外で、同国では低出力LPSSの事業が依然としてかなり堅調であるという。

好調が続くファイバレーザ

トルンプ社以外に、独および米ロフィンシナール社(Rofin-Sinar)も自社のファイバレーザポートフォリオの活用によって、売上高の見通しを改善している。2012年9月30日を末日とする同社の第4会計四半期において、同社の売上高は前年同期比13%減の1億4700万ドル(年間売上高は前年比10%減)であった。マクロ材料と、それより程度は小さいが微細材料加工およびマーキングの低調が主な要因である。しかし、売上高は欧州とアジアで減少したが、北米では増加した。
 ロフィンシナール社は、低調が続くとして、半導体、エレクトロニクス、工作機械業界における2012年10〜12月の四半期の売上高を1億3000万〜1億3500万ドルと予測する一方で、2013年には同社の高出力ファイバレーザ製品ラインのコスト構造を最適化し、競争力強化を図る計画である。ロフィンシナール社は2008年初頭に、米ニューファン社(Nufern)とそのファイバレーザポートフォリオを買収している。
 ファイバレーザ以外でも、ロフィンシナール社は新しい技術に精通している。同社の技術ディレクタを務めるウルリッヒ・ヘフター氏(Ulrich Hefter)は、「ダイレクトダイオードレーザ技術は、ビーム品質を改善する新しい技術によって人気が再燃している。ファイバレーザやディスクレーザが衰退すると『過剰に騒ぎ立て』たり『予知』したりする人がいるが、私ははっきりそうとは言い切れないと思っており、3 つの異なる技術が今後長期にわたって共存すると考えている」と述べる。
 CO2レーザでさえもが引き続き好調に推移していることを考えると、ヘフター氏の意見はおそらく正しい。しかし現時点では、ファイバレーザ技術は、低出力の科学的および超高速分野と、高出力の材料加工分野の両方において、躍進し続けている。「レーザ供給メーカーは、産業プロセスの費用対効果を高めるために平均のワットあたりコスト($/watt)を引き下げなければならないという強い圧力を受けている。これによって、高出力ファイバレーザ市場の競争がさらに激化している」と仏イーオーライト・システムズ社(EOLITE Systems)のCEOを務めるフィリップ・メティヴィエ氏(Philippe Métivier)は述べる。
 米IPGフォトニクス社(IPG Photonics)の2012年第3四半期(2012年9月30日締め)の売上高は前年同期比21%増の1億5600万ドルとなり、米ニューポート社(Newport Corp.)をも上回った。ニューポート社の2012年9月29日を末日とする第3四半期の売上高は1億4300万ドルであった。Fortune 誌が選ぶ2012 年の急成長企業で第9位にランクインしたIPG社は、この3年間の平均売上高成長率が37%、利益成長率は100%を達成している。この素晴らしい業績は、IPG社の事業手腕だけでなく、レーザ業界におけるファイバレーザの成功をも証明するものである。
 IPGフォトニクス社の産業市場担当バイスプレジデントを務めるビル・シャイナー氏(Bill Shiner)は、「ファイバレーザの販売は、世界全体、特に北米において好調が続き、欧州でも計画どおりに推移する。自動車およびバッテリメーカーは、中国に営業拠点を開設し、IPG社のシステムを指定している。HSS(high-strength steel:高強度鋼板)部品が自動車メーカーによるCO2 排出量規制への準拠に貢献していることが、レーザに恩恵をもたらしている。HSS にスタンピング加工は適用できないので、レーザトリミングが一般的である」と述べる。シャイナー氏によると、航空宇宙市場の見通しも明るいという。「各ジェットエンジンには冷却用に300万個の高精度な穴が必要であるため、準連続波パーカッション工とトレパニング加工が好調である。機械式穴あけ装置が世界的に不足していることと、1秒間にあけられる穴の数が従来は2〜3個であったのに対してレーザは50 個可能であることも当然、これを後押ししている」と同氏は付け加えた。

半導体市場は険しい道のり

スマート電子機器部品の微細材料加工を対象とするファイバレーザメーカーの見通しは引き続き良好であるのに対し、堅調な半導体設備投資支出に依存する企業には2013年、険しい道のりが待ち受けている。
 米国半導体製造装置材料協会(SEMI)の業界調査および統計担当シニアディレクタを務めるダン・トレーシー氏(Dan Tracy)は、「半導体業界による45nmから20nm(およびそれ以下の)ノードへの移行に伴い、設備投資は増加する。さらなる層や新しい材料を処理するために、より多くの製造工程が必要になるためである」と述べる。「半導体業界は2010年と2011年、生産能力の拡大と最先端プロセス技術への移行において確実に回復した。2012 年には生産能力拡大のペースが鈍化して、半導体業界に不安が広がり、現在では多くのアナリストが2013 年の半導体設備投資支出が前年よりも減少すると予測している。半導体設備投資市場が循環的であることは周知の事実であり、最近報告された設備データには、2012年後半の同業界がそれまでと比べてかなり低調な状態であったことが示されている。2012年10月の出荷受注比率は0.75で、受注は2011年10月よりも20%近く減少した」とトレーシー氏は続けた。
 「マイクロエレクトロニクス業界は2013年、はっきりと二極化する」と米コヒレント社(Coherent)のマイクロエレクトロニクス部門担当マーケティングディレクタを務めるデイビッド・クラーク氏(David Clark)は述べる。「ノートPC、パソコン、デジタルカメラ、ハードディスク、テレビといった従来の民生電子機器は2013年、かなりの低迷が予測されるが、タブレットやスマートフォン、およびそれらに搭載される部品は驚異的なペースで成長する見込みである。これら
の携帯端末部品の多くが当社のレーザを使用して製造されており、当社事業のこの部分が引き続き堅調に成長することになるので、これは朗報である」とクラーク氏は述べ、「Windows 8 搭載のウルトラブックやタブレットがエンタープライズ市場で本当に躍進を遂げることになれば、それが2013 年のIC 販売の大幅増加につながるとわれわれは考えている」と付け加えた。
 米ICインサイツ(IC Insights)社も同様の動向を捉えており、2013年の電子機器売上高の成長率が2012年の3%から増加して5%になると予測している。クラーク氏は、より長期的な動向についても楽観視しており、「4G-LTE無線接続の構築、3Dパッケージの革新、インターネットトラフィックの継続的な増加、クラウドコンピューティングの普及、そして差し迫る450mmウエハ/EUV(extremeultraviolet:極端紫外線)リソグラフィへの業界の移行によって、今後数年間の半導体設備投資の著しい増加が促進されるだろう」と述べた。
 コヒレント社の2012年第4会計四半期(2012年9月29日締め)の売上高は1億8900万ドルで、前年同期の2億800万ドルから減少し、受注は直前の四半期から23%近くも減少した。ニューポート社は、R&Dと産業市場において好調であったことから過去最高の売上高を記録したが、半導体設備投資の低迷による影響も受けており、マイクロエレクトロニクス関連の売上高は、2012年9月29日を末日とする3カ月間で1億1000万ドルと、前年同期比9.7%減となった。
 半導体業界に対するリソグラフィ光源の主要サプライヤである米サイマー社(Cymer)は、2012年第3四半期(2012年9月30日締め)の売上高は約1億3200万ドルと、前年同期とはほぼ同水準だったものの、2012年第2四半期の1億4900万ドルからは減少した。2012年10月にオランダのASML社におよそ26 億ドルで買収されたサイマー社は、第3四半期に27台のDUV(deep ultra violet:深紫外線)システムを出荷し、同社初のEUV光源(露光出力30W)をASML社に提供している。
 サイマー社と日本のギガフォトン株式会社はEUV光源の主要メーカーであり、ムーアの法則に基づく需要によって引き続き事業成長が期待できるはずである。しかし、光と物質の相互作用に関する研究で使用されるELI(Extreme Light Infrastructure)など、超短波で超高出力のレーザパルスを研究するレーザメーカーは、ムーアの法則の限界以降を視野に入れている。
 「2007年において既に、米国エネルギー省(DOE)の基礎エネルギー科学諮問委員会(BESAC:Basic Energy Sciences Advisory Committee)による報告書には、分子レベルやナノスケールレベルの集積回路が製造され、ナノチップ搭載のスーパーコンピュータが人間の掌の上に十分に収まるほどのサイズになり、小さな住宅よりも低い消費電力で動作するようになると、ムーアの法則の限界を大きく超える状況が訪れると記されている」と米カルマーレーザ社(Calmar Laser)のマーケティングディレクタを務めるティム・エドワーズ氏(Tim Edwards)は指摘する(2)。「これによってレーザ業界は非常に興味深いものとなっている。分子スケールの未来は、レーザが中枢的な役割を演じなければ訪れない。フェムト秒ファイバレーザのメーカーは、眼科、分光法、DNA 解析、分子イメージング、薄膜太陽電池、計測工学の分野の厳しい要求を満たすために、パルス間の安定性向上に向けて日々奮闘している。すべての企業が、R&D レーザ市場におけるシェア獲得を目指して努力しているにもかかわらず、レーザ市場がもっと急速に成長しないのはなぜだろうか」(エドワーズ氏)

前進、そして上昇

これまでに米スペクトラ・フィジックス(Spectra-Physics)社、トルンプ社、コヒレント社と渡り歩いたエドワーズ氏の洞察とレーザの未来に対する同氏の熱意の自然な延長線上に、2013年およびそれ以降のレーザ市場に対するわれわれの予測がある。一部の大手レーザ企業の2012年第4四半期と2013年初頭の売上高はやや低調となる見込みだが、確実に言えることが1つある。つまり、これまでの数十年間の混乱によって、全体的な好ましい動向が隠されているということである。単純に1968年以降のレーザ総売上高を振り返るだけでも、さまざまな雑音の中、指数的な成長を遂げてきたことが見てとれる。
 メーカー各社は、レーザが今後も従来技術では実現不可能であった新しい市場を開拓し続けると考えている。Laser Focus World 誌、Industrial Laser Solutions誌、ストラテジーズ・アンリミテッド社は、その見解を支持する。2013年、レーザ市場はさらに前進し、総売上高は2012年から約3%増加して86億2000万ドルになるとわれわれは予測する。2012年の売上高は、昨年の予測である75億7000万ドルから83億4000万ドルに上方修正した。2012年に対する1.2%というわれわれの成長率予測は控えめすぎたことが明らかとなり、実際には5%前後という好ましい結果となったためである。欧州が抱える問題と中国のGDP鈍化にもかかわらず、レーザ売上高はほとんどの応用分野において増加を維持した。

市場別分析

通信と光ストレージを合わせた市場は、引き続きレーザ販売の最大の割合を占めており、材料加工が僅差でそれに続いている。2012年の予測と同様に、リソグラフィ用のエキシマレーザは材料加工の分野に含めている。2013年の市場別分析における唯一の変更点は、「ポンプおよびその他のレーザ」の売上高(2012年は2億9700万ドル)をそれが適用される分野に含めたことである。つまり、ファイバ励起用の半導体レーザやダイオード励起固体(DPSS:diode pumped solid state)レーザはそれらのレーザの数値に含まれ、光増幅器用のポンプレーザは通信分野に含まれることになる。

通信と光ストレージ

2012年、フォトニクス業界に携わるわれわれの同業者(特に太陽光発電システムを設置している人々)からは、インターネット、携帯電話、ケーブルテレビの使用料金が光熱費を上回ったという声も聞かれた。確かにこの母集団は特にハイテクを駆使する人々で構成されているが、技術業界とは無縁な友人の多くも、メガピクセルカメラで撮影した数千枚ものFacebook 画像を、メガバイトサイズのファイルに保存し、「クラウド」やデータセンターにアップロードするといったことを行っている。動画ファイルについては言うまでもない。レーザ通信市場が成長し続けるのも当然といえる。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2013/03/201303_0020lasermarketplace2013.pdf