スチルベン結晶による中性子検出の改善

米国土安全保障省(DHS)との契約HSHQDC-12-C-00020の下、米インラッド・オプティクス社(Inrad Optics)とローレンス・リバモア国立研究所(LLNL:Lawrence Livermore National Laboratory)は共同で、有機シンチレータのスチルベン(炭化水素の結晶。化学式はC14H12)のサイズと入手しやすさの両方の向上に取り組んだ。
 ガンマ線バックグラウンドにおける高速中性子(1〜20MeV)検出のための材料としてよく知られるスチルベンは、溶融成長結晶手法を用いた場合、これまでは広範囲にわたる低コストの商用中性子検出応用向けに十分な量を生産できなかった。しかし、LLNLは最近、スチルベンの経済的かつ高品質な溶液成長を実証し、大量生産に向けてそのプロセスをインラッド・オプティクス社に移譲した(1)。
 サイズが大きく高品質なスチルベンに関する取り組みは、高速中性子検出用の新材料の研究と、溶液成長手法の根底にある科学原理の理解を目的として米エネルギー省の国家核安全保障局(NNSA:National Nuclear Security Admin is tration)が出資するLLNLにおける継続的な活動の副産物である。
 ガンマ線バックグラウンドにおいてシンチレーションによって中性子または核物質を検出するプロセスは、粒子がシンチレーション物質に衝突して、光子または粒子を放射することによって生じる。高エネルギーの中性子とガンマ線が、スチルベンなどのシンチレーション物質と衝突する際に得られる蛍光信号のパルス波形の違いを解析することによって(このプロセスをパルス波形弁別[PSD:pulse shape discrimina tion]という)、中性子の相互作用を一意的に検出することができる。これらの蛍光信号は、光電子増倍管(PMT:pho to multipliertube)を使用してシンチレーション検出器から記録される。

結晶成長

溶融プロセスとは異なり、スチルベンの溶液成長プロセスでは、結晶化タンクとシードホルダーが採用される。これらは有機溶媒を扱い、回転にともなう温度低下を制御することによって成長プロセスを改善するように構成されている。溶液成長によって既に、垂直方向と水平方向のサイズが4 インチのブールのスチルベンが製造されている。溶液成長によるこのブールは、いわゆる「X 線ロッキングカーブ」のFWHM(半値全幅)が20arcsec未満で、結晶品質に優れていることを示している。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2013/01/201301_0014wn01.pdf