デジタル・プロジェクション・ディスプレイに向けた高出力RGBレーザエンジン
色調整可能な赤および緑のカラーモジュールと、緑色に対するスペックル除去技術を備えた、RGB(赤緑青)ライトエンジンを紹介する。同ライトエンジンは、2Dおよび3Dデジタルシネマなどの用途に適用可能な状態にある。
1950年代から、ハイエンドのプロジェクタ、特にシネマプロジェクタには、必要な照明を得るための手段としてキセノンアークランプが採用されてきた。これらのランプはエネルギー消費量が大きく、コストが高く、定期的な交換が必要である。長年にわたる研究開発を経て、現在ではレーザ照明が、2Dおよび3Dシネマやその他多数の応用分野に向けて商用提供できる段階に近づきつつある。
レーザ照明を採用する最初の試みは、20年も前のフライトシミュレータディスプレイだった。試行システムが開発されたが、次の4つの点において失敗に終わった。つまり、出力と効率が低いこと、求める波長で出力しないこと、映像を損なうスペックルノイズが発生すること、適切なプロジェクション技術がないことである。
これらの問題は現在、効率と輝度が高く調整可能な赤、緑、青(RGB)のレーザ技術、スペックル除去サブシステム、そして高性能デジタル・プロジェクション・システム向けに設計されたレー
ザ照射エンジンの組み合わせによって解決されつつある。その結果として、光源の寿命が長くなって、定期的に高価なキセノンランプを交換する必要がなくなり、消費電力が低くなって、ランプ消費電力量だけでなく、暖房、換気、空調(HVAC)の運用コストが削減される。
より最近では、すべての3Dシネマシステムにおける本質的に大きな光損失を補償するために、ランプの輝度を3倍にした光源が必要であることがシネマ業界において認識されている。また、3Dの導入によって、デジタルシネマへの移行が世界規模で加速する中、すべての商用レーザ照射システムが今後、新しく設置された膨大な数の2D および3D システムに適応可能でなければならないことが明らかになっている。
米レーザライトエンジンズ社(LLE:Laser Light Engines)は、成熟したレーザおよび非線形光学技術を組み合わせて、多用途に適用可能なモジュール型の高出力RGBライトエンジンを開発した。同ライトエンジンは、レーザスペックルノイズを除去し、業界の画質水準を引き上げる。高いビーム品質によって、任意の既設デジタルシネマや、それと同等の性能を持つプロジェクタに対し、効率的な光ファイバ伝送を実現する。これによって、「オフボード照明(off-board illumination)」と呼ばれる斬新な使用モデルが可能となる。これは、リモートの高出力光源を必要とする、多くの看板やシミュレーションなどのマルチプロジェクタ応用において非常に重要なものとなる。
RGBレーザエンジンの要件
レーザプロジェクション応用の出力範囲は、3000 lm(LED プロジェクションの実質的な上限)〜10万lm(既存のデジタルプロジェクタの限界)である。ここで、3万5000〜10万lmの範囲の
出力は、デジタルプロジェクタにおけるキセノンランプの限界をはるかに上回っており、レーザでしか達成できないことは注目に値する。
必要となるレーザ入力電力は、RGB波長とプロジェクタのスループットの関数で表される。RGB原色が最適化されており、スループットが良好であると仮定すると、存在する応用分野の全範囲に対応するには、10〜800WのRGB合計出力電力が必要である。目標寿命としては、2万〜5万時間が望ましい。
レーザエンジンは、7つのサブシステムで構成される。赤、緑、青のカラーモジュール、制御可能な電源、冷却、プロジェクタインタフェース、そしてシステム制御ソフトウェアである。複数のエンジンを組み合わせれば、IMAXスクリーンやテーマパークのアトラクションなど、非常に高い輝度が求められる分野に対応することができる。
スペックルを除去
シネマやディスプレイの用途に適した緑色レーザのカラーモジュールに求められる要件は独特である。出力、スペクトル、コスト、寿命の要件に対応するために、このようなモジュールの設計には革新的な技術が採用されるケースがますます増えている。LLE 社の設計では、キャビティ内周波数2倍化やスラブ構造結晶といった、効率と熱管理を改善するための手法がいくつか採用されている。
当社が採用した設計手法では、ネオジムをドープしたフッ化イットリウムリチウム(Nd:YLF)を利得媒体として使用した。この材料を選択することによっていくつかの重要な利点が得られ、また、この材料はLLE社のレーザスペックル除去技術に必須である。周波数を2倍にしたNd:YAG やバナデート(Nd:YVO4)レーザは、許容できるレベルの緑色光源として機能しない。ハリウッドのデジタルシネマ仕様で求められる非常に厳しい画質要件を満たさないためである。
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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2013/01/201301_0040pa.pdf