ファイバ伝送システムを利用したフローサイトメトリ設計の改良

フィオナ・エバンス

ゲノム学で使われている分析機器は、迅速、丈夫、安定かつコンパクトで、試料にレーザビームを送る単一モード光ファイバシステムによって可能になった高画質解像度が得られるフローサイトメトリシステムをさらに利用するようになっている。

遺伝子発現の先端研究や、ハイスループットな臨床・診断スクリーニングの市場の拡大は、バイオフォトニクスの技術に大きな変化をもたらしている。これらの進歩によって、その用途が学術研究の分野から離れ、大量な工業規模の研究に使われることが可能になった。その究極の目標は、パーソナルゲノム学と、それによるオーダーメイド医療をより身近にもたらすことである。
 多くのスクリーニング機器は、マイクロ流体力学やマイクロアレイ中の極小の標的試料の分析において、信頼できて迅速・高解像度な結果を得るために、高性能なレーザや高度な光学システム、検出器を使う。DNA・血液分析といった分析処理はいずれもフローサイトメトリ技術によって分析可能で、光学システム設計を利用しており、さらに光学システム設計は自由空間光学系や光ファイバ伝送システムを基盤としている。

DNA・血液分析

DNA 分析は、免疫蛍光に次ぐフローサイトメトリの重要な用途であり、フローサイトメトリ機器の進歩をもたらしたものである。最初のヒトゲノムのマッピング完了には10年かかったが、現在ではデータ分析にはより多くの時間がかかるものの、マッピングは3日以内で可能である。また遺伝病や、ガン指標といった細胞・遺伝子変異に関するような具体的な課題解決に向けて、DNA鎖の目的の部分を研究するために、より短い断片的なDNAやRNAのリード長から、より早く情報が集められている。
 しばしば代替が効かない試料を取り扱うときに、この分野の研究者は短時間で信頼できるデータを得られ、そして長期に渡って繰り返し可能な計測を必要とする。機器の安定性と解像度は重要で、あらゆる変化はデータや結果の質に深刻な影響をもたらす。
 同様な流れとして、診断・免疫学目的の血液分析があり、広く急速に拡大している市場である。ゲノム学研究の進歩が、今では新たな診断検査や検査装置を生み出している。
 これらのすべての分析機器の設計は、パフォーマンスを向上させると同様に、エラー源を減少させることが重要で、レーザの光ファイバ伝送は両方の問題に対処する有用なツールである。光ファイバは機器設計者に対して、レーザを現場での使用のために、容易に接続できる場所に設置できるという、さらなる利点を持っている。

分析技術

このような遺伝子発現や薬理ゲノム学の新たな分野で使われる機器は、顕微鏡法とフローサイトメトリの原理が基盤となっている。これらの機器の設計では、常に繁忙なスケジュールとなっている中核施設で、大きく広がっている分析要求に対応できるように、スピードと処理量が重要となる。
 こういった施設の中には、研究スペースを拡大しないとアウトプットを増加できないところもある。そのため、既存の研究施設により多くの機器が配置できるように、設置面積がより小さい機器が求められている。
 通常のフローサイトメトリでは、1回のランにおいて、試料中の1つのプローブに対してそれぞれの励起レーザ光源が割り当てられている。分析スピードを上げる方法のひとつは、試料に対
して励起する複数の光の波長を使って並列処理を行うというものである。第1の課題は、フローストリーム中に流れている試料に光の焦点を合わせることで、通常は幅が100μm以下である。
 動いている標的から有意なデータを得るためには、検出器と照明源を可能な限り安定・固定させる必要がある。そうしなければ、どちらか一方でも動いてしまったときに画像がぶれたり低解像度になってしまう。第2の物理的な課題は、フローセルに焦点を当てる並列な照明スポットを作るために、十分に近づけた複数の光源からのレーザを位置調整するということであるが、これは検出チャネルにおいて放出光と蛍光を同時に検出してしまうクロストーク防止のために、これらのスポットを十分に離すための位置調整でもある。
 さらに、遺伝子分析においてはよりサイズの小さな試料を扱っており、現在では1 分子レベルの画像を得るようになっている。これは、フローサイトメトリが本来直面している課題をさらに増やしていることを意味する。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2013/01/201301_0032feature04.pdf