チューニングなしで中赤外をカバーする広帯域OPO

ニック・ラインデッカ、コンスタンチン・ボドピャノフ

二重共鳴中赤外光パラメトリック発振器(OPO)は、非縮退OPOとは異なり、厄介なチューニングなしで超広帯域出力を瞬時に発生する。

長い間OPO は、レーザ光源が達しえていない重要なスペクトル領域の光出力を生み出す多用途手段と認識されてきた。中間IRは豊かな分光情報を含むが、便利なレーザ線が不足する領域である。数年前から、われわれのチームは広帯域の中間IRを発生する特殊なクラスの二重共鳴OPO の研究を実施している。
 典型的なOPOでは、強力なレーザで適切な光学材料の2次非線形感受性をポンプする。これを光フィードバック用の適切な共振器と組み合わせて、ひとつ以上のより長い波長の発振を成する。一般に、その発振波長は共振器または非線形材料のパラメータの選択によって調整することができる。
 OPOは、それらの広い波長同調性と強い出力パワーとによって、中赤外(IR)分光で広範囲に利用されている。量子カスケードレーザ(QCL )は現在期待の持てそうな選択肢であるが、個々のデバイスの可変同調範囲が狭いので超広帯域測定向きではない。
 一方、OPOは広いスペクトル範囲にわたって同調可能であるが、精密で連続的な方式での同調はいまだ挑戦である。

二重共鳴縮退OPO

これらとは対照的に、われわれは瞬時広帯域OPOシステムを開発した。これは特に、フーリエ変換IR 分光法の原理に基づく並列式高分解能分光に適している(1)。このOPOは低いポンプ閾値(10mW以下)で二重共鳴動作し、出力の中心波長がポンプ波長の2 倍になる近縮退で同期するように設計されていて、非線形プロセスのアクセプタンス帯域幅が非常に広い。これを低分散の共振器と組み合わせることによって、われわれは波長チューニング(またはノブ)なしで極めて広い出力帯域幅を達成した。
 これらの設計を可能にした鍵は、近赤外(NIR)領域で安定にモードロックされる超高速ファイバレーザの商用化であった。われわれのシステムの同調ポンプに使用することによって、NIRポンプレーザの「コム」モードは、二重共鳴縮退OPO の特徴である広いスペクトル線幅広がりを使った位相同期と周波数同期ダウンコンバージョンによって中IR へと厳密に変換された(2)。
 われわれは、すでに、エルビウム(Er)ファイバ(1.5μm)、ツリウム(Tm)ファイバ(2.05μm)、Cr:ZnSe(2.45μm)モード同期などのレーザをポンプ光源として、周期分極ニオブ酸リチウム(PPLN)と配向パターン化ヒ化ガリウム(OPGaAs)を非線形光学材料として使用することにより、広帯域の中IR 発生を多数のシステムで実証した(3)〜(5)。われわれの最新システムは(図1)、ポンプレーザに、米IMRA アメリカ社(IMRA America)製の中心波長2.05μm、平均出力600mWのTmファイバ発振器‐増幅器系を使っている。これは75MHzの繰り返し率で93fs 幅のパルスを発生する。このOPO共振器は、ポンプ繰り返し率に長さを整合させた4m長のリング共振器である。この内部共振器光学系は、ポンプ光に対する高い透過率と3〜6μm 範囲における高い反射率をもつ平坦な誘電体ミラーM1と中IRで高い反射率をもつ数枚の金めっきミラーからなる。

図1

図1 図は同期的にポンプされた広帯域低調波OPO システムの構造を簡略的に説明している。ポンプレーザは75MHzの繰り返し率と93-fsのパルス幅で動作する600mWのTmファイバ発振器‐増幅器システムである。このポンプビームは誘電体ミラーM1 を通ってOPO に入る。残る共振器光学系は金属製の金ミラーである。共振器の短いレッグ位置にある曲率半径50mm の複数ミラーが0.5mm 長のOP-GaAs 結晶内に固有モードを厳密に集光させる。共振器長は圧電アクチュエータ(PZT)によって正確に安定化される。CaF2またはYAG(OCとして設計)板は、GaAsの分散を補償し、フレネル反射に基づくアウトカプリングを提供する。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2012/09/201209_0028feature03.pdf