スペックルのない画像を作り出すランダムレーザ

イメージングの分野でランダムレーザは有望かもしれない。昨年、空間コヒーレンスの低いランダムレーザを作成した米エール大学のチームは、スペックルのない画像を得るために低コヒーレンスレーザの実証を開始した。この実証試験はバイオイメージング、ピコプロジェクタ、映写機などにレーザを応用する可能性を探るものである。
 コヒーレンスの副産物であるレーザ・スペックルとは、レーザビームが散乱体を通過する時に発生する明領域と暗領域の変動パターンのことである。レーザアプリケーションの多くは許容範囲であるが、スペックルはレーザ光で記録、またはレーザプロジェクタで映した画像を劣化させる。
 エール大学の物理学者であるホイ・ツァオ氏は、「人は、ランダムに表れる粒状のパターンであるスペックルに焦点を当てるので厄介だ」と言う。また、スペックルは医者が見ようとする詳細を隠すので医用画像分野では特に厄介な問題である。スーパールミネセント光源でさえもスペックルを発生させるため、多くの画像システムでは低輝度であってもインコヒーレントランプまたはLEDが使われる。
 ツァオ氏は無秩序物質でのランダムレーザ発振を最初に実証して以来、ランダムレーザに十数年以上取り組んでいる。ランダムレーザが特異な点は、レーザ共振器ミラーがないことと、発振の持続がレーザ媒質に分散された粒子からの光散乱が必要なことである。これらの点はレーザ色素と半導体を含む多くの物質で実証されたが、昨年まではそれらは常にコヒーレンス出力であった。

スペックルとOCT

ツァオ氏は、エール大学メディカルスクールのイメージングの専門家であるミハエル・コーマ氏と、彼の光コヒーレンストモグラフィ(OCT)の研究におけるスペックルノイズ問題について議論を重ねて、コヒーレンス低減研究を開始した。「この問題の解決にランダムレーザが使えるのではないかと考えた」とツァオ氏は言う。
 ツァオ氏とコーマ氏は博士号取得研究員のブランドン・レディング氏と共同で、ランダムレーザのコヒーレンスを低減する方法を研究している。その中にはレーザ色素溶液中の240nm ポリスチレン球を使い、光散乱球の密度を変える効果、さらには532nmパルス光でポンプされたレーザ媒質のサイズと形の研究がある。彼らは、ポンプ領域を高くして、散乱体間の距離を短くするとレーザモード数が高くなり、空間コヒーレンスが低減することを発見した。また、昨年発表したこの研究はコヒーレンスを低減させるランダムレーザ設計法も示している(1)。
 今回、彼らが報告したのは、空間コヒーレンスを低く調整したランダムレーザによるスペックルのない画像の実証である(2)。空間コヒーレンスを低くしたランダムレーザにより照射された物体の画像を、LED、増幅自然放出光、広帯域レーザ、狭帯域レーザ照射などで記録した画像と比較する一連の実験を行っている。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2012/09/201209_0016wn03.pdf