蛍光捕捉を向上させる光学系デザイン

クリストファー・コットン

単一および多光子顕微鏡での蛍光捕集の最大化は、励起光源からのノイズを低減し、レンズ性能の向上も図れる。

蛍光顕微鏡は医学および生化学ですでに広く応用されているが、最近の画像品質向上でさらにその応用範囲が広まっている。しかしながら、より複雑な分子・細胞構造を研究する技術を使用しているライフサイエンス企業にとっては、試料から情報を取得する場合に深刻な問題が存在する。
 ライフサイエンス企業の光学系デザインは、照明が効率的であり、信号損失を伴わずに蛍光を照明から分離する十分なフィルタリング性能をもち、試料からの光を効果的に捕集するものでなければならない。またシステムの性能を向上させることは、試料サイズの減少や、迅速で正確な試験につながる。
 米ASEオプティクス社(ASE Optics)はライフサイエンス企業と共同で、光学系デザインの向上、研究を進めるための新たな技術の特定、さらには、米ラピッド・マイクロ・バイオシステム社(Rapid Micro Biosystems)のグロース・ダイレクト・システム(Growth Direct System)のようなシステムリスク低減などを行っている。ルイ・パスツールが研究していた当時から微生物学の試験方法は変わっていないが、グロース・ダイレクト・システムなどの新しい試験システムにより試験の自動化と高速化が実現され、増殖時間の短縮と必要となるサンプル・サイズが減少した(図1)。
 光学蛍光とは、分子が吸収帯内の波長で励起光を吸収すると同時に、発光帯内で長い波長を発光する現象である。フルオロフォアは、試験で同定する必要がある特定の分子、または細胞構造に結合させるために、しばしば試料に加えられる。多くの場合、フルオロフォアは試験されている分子、または細胞の構造内に天然に存在する物質である。光学蛍光系デザインには、次の点が必要である。
●励起光で試料を照射すること。
● 試料が発光した光を効率的に捕集すること。
● 検出器に到達する前に散乱励起光を除去すること。
 蛍光顕微鏡システムは単一光子とフルオロフォアとの反応による蛍光を検出する。通常、このシステムで発光する波長は励起波長より長いが、これら2つの波長の違いはわずかでしかない。これに対して、典型的な蛍光顕微鏡システムは、適切な波長の光を供給する励起源とフィルタ、さらには励起光をサンプルに向けると同時に、適切な放出フィルタに通過させて放射光を検出器に向けるダイクロックビームスプリッタからできている(図2)。

図1

図1 サンプルを照射する青色LEDからの蛍光捕捉を効率的に行うために、米ASE オプティクス社は米ラピッド・マイクロ・バイオシステム社とグロス・ダイレクト・システムの顕微鏡システム(左図)を共同開発している。

図2

図2 照射および信号チャネルの両方で光を分離するために、標準的な蛍光顕微鏡デザインは複数のフィルタを使用している。フィルタの能力を上げるのは困難な課題であり高コストである。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2012/09/201209_0020feature01.pdf