500TW/15J/30fs パルスを目指すオハイオ州立大学のSCARLETレーザ

「SCARLET レーザは、2012年6月13日(実験開始は8 月)にオンライン化された暁には、世界で最も強力なレーザの1 つとなり、米国内で最も高いピークパワーをもつサブ百フェムト秒レーザになるであろう」とオハイオ州立大学(OSU)の高エネルギー密度物理(HEDP)グループのレーザ工学ターゲット先進研究科学センター(Science Center for Advanced Research on Lasers and Engineered Targets:SCARLET)レーザ施設におけるペタワット開発チームのリーダを務めるエナム・チョードリ主任研究員は語っている。中心波長815nmのSCARLETレーザはパルス幅が30fsで繰り返し速度は1分当たり1ショット、スポットサイズは5μm(半値全幅)、1パルス当たり15J、そして500TWのピークパワーと1021W/cm2強度レベルに達するように設計されているという。2013年の可変形ミラーの設置をもって、SCARLETのピーク強度を1022W/cm2以上に高めるレーザチェーンが完了する予定である。
 その仕様はもちろんであるが、特に注目に値するのが繰り返し速度である。チョードリ氏は、「現在の超高強度レーザシステムのユーザビリティは低い繰り返し速度によって制限されている。一般に、大規模レーザシステムは、せいぜい1 日あたり数スポットを照射できるにすぎない」と語っている。
 HEDP 研究所チームのリーダを努めるリチャード・フリーマン教授は、「SCARLETの主要な目標の1つは、1日あたり数百スポットから成る実験を確実に実行することである。これはHEDPチームが高エネルギー密度システムをより正確にモデル化し、超強度光‐物質相互作用の瞬間に何が起きているかを真に理解することを可能にするであろう」と言う。

SCARLETレーザパラメータ

SCARLETは、500TWの最大ピークパワーを目指しているが、レーザ損傷研究用の波長範囲0.8〜4.0μmを使った短パルスキロヘルツモード(1kHzで0.1〜0.8mJ、25fsパルス)を含む2モードで動作する0.5PW またはペタワットクラスのレーザとして知られることになるであろう。
 SCARLET では、最大パワーは交差偏光波(XPW)発生器系を含む、各種パルス浄化器を備えたデュアルチャープパルス増幅器(DCPA)アーキテクチャ内の追加ミラー‐ストライプ格子ストレッサ(パルスを最高800psにまで拡張)を通してキロヘルツレベルのレーザ出力を送ることによって達成される。またそのパルスは、2台の25J/パルスネオジムポンプレーザの527nmで励起される最終増幅器などの多数のTi: サファイアマルチパス増幅器と、長さが36cmと56cmの1対の回折格子を使った新しいコンプレッサを通過する。全レーザシステムは入口のエアシャワーとネットワーク化された温度および湿度センサを備えたクラス1000のクリーンルーム内に格納される。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2012/08/201208_0012wn01.pdf