パワーを増強するビーム結合

ジェフ・ヘクト

コヒーレントおよび波長ビーム結合はここ数年の間にそれらの出力パワーを増倍し、ファイバレーザコヒーレント結合とダイオード波長ビーム結合においてキロワットが達成された。

ファイバレーザとダイオードレーザは小さな体積から驚異的なパワーを発生させることができるが、単一のレーザ開口部からの出力は非線形損失、熱影響、光損傷などによって制限される。これらの制限は多数のレーザ開口部の出力を結合することで乗り越えられる。
 最も簡単なアプローチは多数のレーザビームを同一方向に向けるインコヒーレントなビーム結合であるが、これは全体のパワーを増強するものの、ビーム輝度を高めることはできない。輝度を高めるには、より巧妙な技術が必要になる。1つは、振幅を構造的に加算するコヒーレントビーム結合である。もう1つは、波長分割多重方式と同様の、異なる波長のビームを結合させる波長ビーム結合であり、これは位相整合の複雑さを避け、レーザ放射の帯域幅が拡大する。4年前にこの領域のレビューをLaser Focus World誌(1)に掲載してから今日までの間に、両アプローチとも非常に高いパワーを発生した。しかし、これまでのところ、インコヒーレント結合がパワーの記録を保持し続け、レーザ兵器用途に向けて開発が進められている。

インコヒーレントビーム結合

半導体ダイオードレーザのモノリシックアレイは最も確立されたインコヒーレント結合の例である。多数のレーザストライプはブロードな高パワービームに結合するが、指向性に乏しい。これは、高度の指向性を必要としないレーザポンピングや熱処理用として有用である。
 ファイバレーザからの高品質ビームのインコヒーレント結合はかなり指向性の強いビームを生成することができ、これはレーザ兵器としての利用に向けて真剣に取り組まれている。米国海軍研究所(Naval Research Labora to ry)のフィリップ・スプラングル氏(Phillip Sprangle)の研究グループは、「光源のビーム輝度が重要になるのは擾乱大気中における現実的な “指向性エネルギー” 伝達シナリオを検討する時に限定される」と2008年に報告している(2)。ファイバレーザアレイはこのことを保証する。米海軍は33kWのレーザ兵器システム( LaWS )の生産を目的として6台の5.5kW産業用ファイバレーザアレイを組み合わせ、2010年に1 海里離れた距離にある水上の代表標的で確かめた。これらのテスト結果に満足した米海軍は、2014年完成を目標に、LaWSの100kW級へのスケールアップを進めている(3)。

ダイオードコヒーレントビーム結合

コヒーレントビーム結合は、位相を伝送してコヒーレント出力を発生させるエミッタアレイ、いわゆるフェーズドアレイレーダに類似する。原理的に、位相におけるエミッタ操作とそれらのビームの適切な結合とによって操舵型ビームを発生させることができるが、これまでのところ最大の努力は出力の結合に払われてきた。
 ダイオードコヒーレントビーム結合は1990年代に最高900 個のレーザストライプを使って実証されたが、シングルモード出力の必要性と厳密な位相同期要求とによって、その出力は最高5.5W に制限された。この限界は多数の並列増幅器を駆動する新しい技術と主発振器光源の使用によって乗り越えられた。昨年、米MITリンカーン研究所のツオ・イー・ファン氏(Tso Yee Fan)のグループは218の個々に操作可能なスラブ結合光導波路(半導体)増幅器(SCOWA)アレイを使って38.5Wの連続波を発生させることに成功した(4)。
 図1に示すように、まず、回折光学素子がシードレーザビームを21の出力に分割し、それらを200μmピッチ上の大きな円形モードプロファイルをもつ並列増幅器に供給した。増幅器アレイを通過する二重経路は21の平行ビームを生成し、それらを監視して位相同期信号を発生させた。それから、第1の回折光学素子に対して直角に配置された第2の回折光学素子は21の並行出力のそれぞれを11部分(11の並列SCOWAアレイそれぞれの二重光路増幅用)に分割した。それらは第2 ステージSCOWA アレイにおける231のストライプのうち218から位相同期された出力を生成した。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2012/08/201208_0036pf.pdf