科学的な InGaAs FPAカメラで近赤外画像処理の感度を高める
深冷式で大判のInGaAs焦点面アレイカメラは、近赤外領域と短波長赤外領域という重要な範囲における量子効率と感度が高いことから、研究開発における多くの応用分野に適用されている。
近赤外(NIR)領域と短波長赤外(SWIR)領域で実施される画像処理および分光法の手法は、多くの最先端の科学的および産業的研究において、ますます重要な役割を担うようになってきている。例えば、太陽電池や半導体の改良、光線力学療法における最先端手法の進歩、ハイパースペクトル画像処理による地質/地形に対するより深い理解の追求を目的とする研究開発においては、この分野の探究が不可欠である。
近赤外領域(0.9〜1.7μm)において高い感度を達成するための鍵を握るのは、InGaAs(インジウムガリウムヒ化物)焦点面アレイ(FPA:focal plane array)に基づくセンサーの使用である。InGaAs FPAは、読み取り集積回路(ROIC:readout integrated circuit)にインジウムバンプで接合された2 次元のフォトダイオードアレイで構成される。このフォトダイオードアレイ自体は、リン化インジウム(InP)基板、InGaAs吸収層、および超薄膜InPキャップで構成される。
InGaAs FPAにおいて、2次元アレイは、入射光を検出し、電荷を生成および収集する。ROICは、クロックを生成して収集された電荷を電圧へと変換し、その結果得られた信号をオフチップの電子回路へと転送する。InGaAs FPAは通常、背面から光が照射され、80%を超える優れた量子効率(QE)を実現する。
現在、多くの生命科学および物理科学の応用において、シリコンベースの低光量CCDカメラが光学画像処理や分光法に利用されている(表1)。これらのSiCCDカメラは、シリコンのバンドキャップの特性により、紫外領域から近赤外領域までの範囲におけるQEに優れているが、NIR向けに最適化された最良のCCDでも1100nmを超える感度を実現することはできない(図1)。
InGaAs FPAカメラの性能
InGaAs FPAセンサーを搭載する商用の近赤外カメラは通常、暗視や温度検査の用途向けに設計されている。一方、科学的な応用分野では、カメラシステムにかなり高い要件を課すことによって、可能な限りの信号雑音比(SNR:signaltonoise ratio)が実現されている。
上述のように、InGaAs FPAの一般的な感度は900〜1700nmである。しかし、光子を最大限に収集するには、入射光がセンサーに達するまでの間に多大な注意を払う必要がある。例えば、カメラにおいて単一の光学ウィンドウを使用し、反射防止(AR:antire flective)コーティングを施して、光子スループットを最大化することが重要である。InGaAs FPAの特に注目すべき動作の1 つとして、冷却されると長波長カットオフが低下するというものがある。大まかな目安としては、センサーが10℃冷却されるごとに長波長カットオフが8nmずれる。実際のところ、この現象は好都合といえるものである。センサーが、ずれた波長カットオフの端を超えるバックグラウンド信号を検知しないためである。つまりセンサーは、「調整可能な」ローパス光フィルタのように動作する。
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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2012/08/201208_0024feature02.pdf