腫瘍血管系とその治療反応を撮像するin vivo 光音響スキャナ

光音響法は光誘導超音波放射を画像に変換する研究分野である。英ロンドン大学ユニヴァーシティ・カレッジ(UCL)の研究チームは、癌性の腫瘍血管系をイメージングする場合に、最高10mmの深度まで非侵襲で腫瘍を撮像することができるユニークな画像再構成アルゴリズムを備えたファブリ・ペロー高分子膜超音波センサに基づく新しい光音響スキャナを開発した(1)。
 このin vivo(生体内)無標識技術は、一般に血管の撮像に造影剤を必要とする従来型の磁気共鳴イメージング(MRI)とX線CTスキャン、ならびに大きな散乱により軟組織イメージング深度が1mmに制限される光コヒーレンストモグラフィ(OCT)や多光子顕微鏡法などの比較的新しい光学技術を大いに改善する。

低散乱の音波

軟組織内の高い散乱に悩まされる多光子顕微鏡法における弾道光子と違って、光音響セットアップで組織試料に当てる近赤外(NIR)と可視光は急速加熱を引き起こし、光エネルギーを光子に比べてはるかに散乱の少ない音響エネルギー(音波)に変換する。この音響信号を再構成すれば、組織の光学的性質に依存する組織の吸収エネルギー図が可視化される。多波長で画像を取得すれば、3D深度画像に加えて血中酸素飽和とヘモグロビン濃度の定量的な分光測定さえもできるようになる。
 腫瘍とその周辺の血管が治療用の血管破壊剤の影響をどのように受けるかを調べるために、研究チームは全光学式光音響スキャナを使ってヒト結腸直腸腺癌の異種移植片をヌードマウスの生体内で時間をおいて撮像した。このセットアップでは、ファイバ結合された波長可変パルスNd:YAG 光パラメトリック発振器(OPO)レーザシステムからの50Hzの7nsパルスが試験組織に照射された。光音響波の検出に使用するファブリ・ペロー(FP)センサヘッドは水性ゲルを使って皮膚表面と音響的に接触するように配置された。
 FPセンサヘッドは、ファブリ・ペロー干渉計(FPI)を形成するため楔状高分子基板上に堆積された薄い高分子スペーサ(40μm)によって分離された2つのダイクロイックミラーから構成されている。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2012/07/201207_0015wn02.pdf