ファイバレーザ:技術と応用の最先端

ジェフ・ヘクト

ファイバレーザは小型かつロバストで、アラインメントの狂いもなく、熱エネルギーを容易に放散する。他のレーザと同じくさまざまに構成できるという利点をもつとともに、独自の優位性も生む。

ファイバレーザは標準的な固体レーザの一種だが、その媒体はロッド、スラブ、ディスクなどではなく、クラッドしたファイバから構成される。レーザ光はファイバの中心にあるコア中のドーパントから放射されるが、コア構造は簡単なものからかなり複雑なものまでさまざまに構成できる。ファイバレーザの重要な点は、ファイバが大きな表面対体積比をもつので、熱が比較的容易に放散することにある。
 ファイバレーザは光学的にポンプされ、そのほとんどは半導体レーザを使うが、ごく一部は他のファイバレーザも使用する。これらのシステムの光学系は一般にファイバ部品が使われ、そのほとんどがファイバを用いて相互に接続される。バルク光学系を使用する場合もあり、内部のファイバ結合系を外部のバルク光学系と組み合わせる場合もある。
 ポンプ用の半導体レーザ光源はファイバを取り付けた単一レーザ、アレイレーザまたは多数の個別レーザが使われ、それぞれがファイバカプラと接続される。希土類元素をドープしたファイバは両端に共振器ミラーを配置するが、実際のミラーはファイバ内部に製作されたファイバブラッググレーティングを使用する。ファイバの出力ビームがファイバ以外の部品に結合する場合を除いて、ファイバレーザの両端にバルク光学系が配置されることはない。ファイバはコイル状に巻きつけられるので、必要な場合は何メートルものレーザ共振器を使うことができる。

二重コア構造

ファイバレーザに使用するファイバは構造が重要になる。その最も一般的な形状は二重コア構造である(図1)。ドープなしアウターコア(インナークラッドと呼ばれることもある)はポンプ光を捕集し、ファイバに沿って導波する。ファイバから発生する誘導放出は一般に単一モードでインナーコアを伝搬する。インナーコアはポンプ光によって誘導放出を発生するドーパント(イッテルビウムまたはエルビウム)が含まれる。アウターコアの断面は多数の非円形状が使われる。その六角形、D字型、長方形などの形状はポンプ光が中心コアから失われる機会を少なくする。
 ファイバレーザは端面または側面からポンプされる(図2)。端面ポンプの場合は1つ以上のポンプレーザからのポンプ光がファイバ端面に入射する。側面ポンプの場合はポンプ光がファイバの側面に結合する。実際には光が中心軸の直角から入射するレーザロッドの側面ポンピングとは異なり、ポンプ光をアウターコアに結合するカプラが使われる。
 ファイバレーザのポンピングは多数の設計が検討された。ポンプ光のコアへの結合、その光吸収との整合およびポンプ光のインナーコアへの結合を注意深く設計することで、インナーコアに誘導放出を起こす反転分布が形成される。レーザコアの利得の度合いはファイバへのドーピングとファイバ長に依存する。設計者はこれらの要因を調整し、必要とされる性能を確保する。
 得られるパワーには限界があり、とくに単一モードファイバ内部の働きが制約要因になる。このようなファイバコアは断面積が非常に小さいので、通過光の強度は非常に高くなる。強度が強いほど非線形ブリルアン散乱が重要になり、マルチキロワットレベルの出力に対して限界をもたらす。出力があまりにも高いと、ファイバ端面には光学的損傷が発生する。

図1

図1 ファイバレーザの構造にはレーザ本体としての希土類元素ドープインナーコア、ポンプ光を導波するドープなしアウターコア(インナークラッドとも呼ばれる)およびアウタークラッドが含まれる。

図2

図2 ファイバレーザは単一または多数のレーザによる端面ポンプ、または側面からポンプ光をアウターコアに結合する側面ポンプ(一般に多数のレーザを使用する)が使われる。

ファイバレーザの特徴

ファイバをレーザ媒質に使用すると、半導体レーザによるポンピングに十分な長い相互作用長が得られる。この幾何学形状は高い光子変換効率をもたらし、ロバストで小型の設計が可能になる。ファイバ部品を融着接続すると、調整の必要な離散光学系は不要になり、アラインメントからも解放される。
 ファイバベースのレーザ設計は高度な適応性が得られ、重い鋼鈑の溶接からフェムト秒パルスの生成まですべての用途への対応が可能になる。ファイバレーザには多数のバリエーションがあり、厳密に言えば、ファイバレーザでない構造もある。ファイバ増幅器は単一光路による増幅が可能であり、多数の波長を同時に増幅できるので、光通信に使用される。ファイバ増幅はファイバレーザの出力を意図的に増強するマスタ発振器パワー増幅器(MOPA)にも使用される。ファイバ増幅器が連続波(CW)レーザと一緒に使用される場合もある。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2012/07/201207_0028feature03.pdf