北極海を横断するファイバケーブル

東京とロンドンを接続する通信回線の需要の高まりが、北極海を横断する最初の光ファイバ海底ケーブルの構築を牽引している。この大容量ケーブルは2つのルートが計画され、1つはカナダの北西航路とアラスカ領海を通過し、もう1つは北極の反対側になるロシア領海を通過する。これらの海底ケーブルは世界で最長のルートになり、北極沿岸の地域と各国の高速接続を可能にする。

北極海の氷床の縮小

北極海への海底ケーブル敷設は、過酷な環境と広大な海氷のために、まったく考えられないことだったが、現在は氷床が縮小して海面が十分に開き、8月中旬から10月中旬までの期間はケーブル敷設が可能になった。しかし、この作業には氷海用の改造されたケーブル敷設船が必要となり、砕氷船も同伴されるだろう。ケーブル敷設は計画されたケーブル経路を追随しなければならないため、敷設船の運航はふつうの船よりも難しい。米TEサブコム社の造船担当役員を務めるクリス・キャロベン氏は、「ふつうの船は氷を避けて一度だけの航路を選択できるが、砕氷船は航路を変更できない」と語っている。
 ケーブル敷設には特殊な装置が必要になるだろうが、キャロベン氏は「われわれはケーブル構造の変更を計画していない」と語っている。標準の光ファイバ海底ケーブルはスピッツベルゲンのような高緯度でも使用され、2003年以降、そこでは北極海諸島とノルウェイが接続されている。深海底はケーブルには特殊な保護をしなくても、氷や人的活動による損傷がなく、高圧と低温に耐えることができる。浅い海中は損傷リスクが高いため、ケーブルは鉄線外装による保護が必要になる。
 ほとんどのケーブルは深海底に敷設して氷の移動による損傷を回避する。グリーンランドから離れる氷山は170mの深さにまで達するため、カナダのアークティックファイバ社の社長を務めるダグ・カニンガム氏によると、ケーブルはグリーランド沿いのデイビス・ストライトの600から3500mの深さに敷設し、浅い氷山しかない場所では海底から3m までの深さに埋設する。他の場所は海氷の深さが18m以下であるため、アークティックファイバ社はほとんどのケーブルを深さ50m以下の浅い海底に敷設する。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2012/06/201206_0016wn03.pdf