さらなる溝の追加なしに改善された回折格子分光計の分解能

回折格子分光計で使われている回折格子の溝または線間隔は入射光の波長の1/2が限度であるため、分光計の分解能を改善するために多数のハイブリッド技術、例えば、回折格子とファブリ・ペロー干渉計または格子分光器との統合や、回折格子とフレネルレンズの組み合わせまでも開発された。しかし、これらのハイブリッド設計はメカニカルな走査が必要であり、応答がスペクトル的に変動し、場合によってはデータの後処理が必要になる。韓国標準科学研究所(KRISS)の研究チームは、これらの機械的走査が必要な装置を使うハイブリッド設計ではなく、平面平行反射鏡を使用する純粋に光学的な方法を開発し、2対の反射鏡を利用することで回折格子分光計の分解能が4倍に増加することを実証した(1)。

並進対称性の利用

回折格子は並進空間運動の下で対称である。二重反射によって回折格子から回折されたフィールドを並進させるための平面平行反射鏡対を回折格子の上または直上に配置させると、この反射鏡対はオリジナルな回折格子のそばにもう1つの仮想回折格子を作り出し、溝の数を2倍に増やす(図1)。さらに反射鏡対を追加すれば、溝の数がさらに2倍になり、分光計の分解能は実際的な実施限界に達するまで改善されることになる。
 この実験では、回折格子に入射した平面波は、平面鏡M1上へと回折され、その光の50%が第2の平面鏡M2の方向に反射されて、効率の良い入射光の並進を起こす。オリジナルの回折されたフィールドと並進したフィールドが同じ位相を持つ条件を見出すために格子方程式を解き、回折格子面に対する反射鏡の最適角度と物理的間隔を計算した。例えば直角入射の場合、反射鏡の間隔は格子サイズの半分であり、反射鏡面は格子面に対して90°であった。入射ビームが斜めになるにつれて、反射鏡の角度も90°から逸脱した。

図1

図1 回折格子に接近させて平面反射鏡対(M1とM2:M1は反射率50%)を追加すると、溝の数が2倍になり、分光計の分解能を改善するフィールド並進効果が起きる。追加の反射鏡対(M3とM4:M3は50%の反射率)は分解能をさらに2倍にする(挿入図)。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2012/06/201206_0014wn02.pdf