配備が進むレーザダズラー

非殺傷性レーザ兵器の利用が増加している。米陸軍は、アフガニスタンおよびイラクの複数の検問所でグリーンレーザ「ダズラー」(Dazzler:目をくらませる光線発射装置)を試験導入した後、2011年11月にはさらに数千台もの「GreenLaserInterdictionSystem」(グリーンレーザ阻止システム)を配備に向けて発注し、今後2年以内のさらなる購入を計画している。米食品医薬品局(FDA)が2011年8月、高度な安全システムを備えた民生用レーザダズラーの販売を認可したことから、警察機関による同兵器の利用は増加するものと思われる。最大出力が1Wまでの類似のグリーン固体CWレーザは、インターネットで自由に販売されているが、中には販売対象を警察機関のみに限定していると主張するベンダーもある。
 人間の目が最も明るく感じる緑色の波長で光線を発射するダズラーは、検問所に近づく人々に対する無言の警告から、攻撃対象が確認できないように敵軍の目をくらませるための強力な光線の発射にいたるまで、軍や警察機関によるさまざまな用途を目的としている(図1)。典型的な動作距離は、日中で300〜500m、夜間で最大数km である。この距離を実現するにはクラスIIIBのレーザが必要だが、後遺症となる損傷を目に与えることのないように、出力は約200mWまでに制約される(失明させることを目的として設計されたレーザの使用は、1995年に国際連合によって採択された盲目化レーザ兵器議定書によって禁止されている)。
 米国防総省によるレーザダズラーの開発を率いるのは、合同非殺傷兵器理事会(JNLWD )である。JNLWDの広報を担当するケリー・ヒューズ氏は、「視覚錯乱兵器は、多くの非殺傷兵器と同様に、戦場における武力行使の段階的拡大のための選択肢の1 つであり、民間人の犠牲や巻き添えの被害を最小限に抑えることを目的とするものである」と説明する。これまでに、数種類のダズラーが、検問所、都市部の巡回、護送、および国境警備の目的で使用されている。JNLWDのディレクタを務めるトレーシー・タフォーラ大佐によると、不正行為をはたらく人々に対して、十分に離れた安全な距離から対応する場合に、ダズラーが極めて有効であることが現地の報告から明らかになっているという。ダズラーによって、兵士が加害者となることを防ぐとともに、戦闘に従事しない人々に危害が及ばないようにすることができる。
 実地でのこの状況に基づき、米陸軍は米B.E.マイヤーズ・エレクトロオプティクス社から、1万2542台の「GlareMoutPlus」レーザを、購入することを決断した。同システムは、波長532nm、定格出力が200mWで、数ヘルツでのパルス、または連続波の発射が可能である。動作距離は20〜500m。至近距離からの使用は眼障害を与える危険性があるため、20m 未満の距離での使用は禁止されている。

図1

図1 ハンヴィー(Humvee:高機動多用途装輪車両)からレーザダズラーを使用する様子(提供:合同非殺傷兵器プログラム)

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2012/05/201205_0012wn01.pdf