目下試験中のバイキングの偏光航法に対する空の条件

千年も前に、バイキングたちはグリーンランド、アイスランド、ブリテン諸島、北米、ヨーロッパ本土にまたがる北大西洋を定期的に航海していた。彼らが曇天下でこれをどのようにして成し遂げたのか、いまだ完全に解明されていない。今から50年ほど前に、バイキングたちは複屈折結晶を使って空からの光の偏光方向を調べ、雲や霧に隠された太陽の位置を決定していたという仮説が提唱された。しかし、これは本当に正しいのだろうか? ヨーロッパの研究チームはこの解明に向けて心理物理学的な実験室実験と天空の偏光測定を実施した。
 この仮説は、バイキングたちはかれら自身がサンストーンと呼んでいた結晶を直線偏光子として使用したとする。太陽光のレイリー散乱は空全体に偏光パターンを生成する。晴れた日に偏光子を回転させると、空の一部が周期的に暗くなる。バイキングたちはサンストーンを使って空にはっきりとした斑模様を見たであろう。曇った日は残留偏光を測定したに違いない。彼らは、当時、このデータを日時計指針(有名なバイキングの道具)と組み合わせて使用し、太陽の位置を見つけていたと考えられる。
 ハンガリーのエトヴェシュ大学、スペインのジローナ大学、独ヤコブス大学ブレーメン、フィンランドのオウル大学、スイスのチューリッヒ大学、独ビュルツブルク大学などから集まった研究者たちは実験室内で被験者を使った実験を行った。被験者に、太陽が隠れている状態、または、さまざまな量の雲で部分的に覆われた薄明りの状態の全空写真を見せ、太陽の位置を推測するよう指示した。これらのデータはサンストーンなしで太陽の位置をどの程度うまく決定できるかを示す基準となる。被験者が熟練した航海士でなかったとはいえ、このデータは平均誤差が数度以上であり、最大値は163°に達した。これらの太陽位置の推定はかなり不正確で、あまり航法に役立つとはいえない。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2012/03/201203_0014wn02.pdf