OCTの能力を増強する補完技術

ジェフ・ヘクト

最近の20年間に光コヒーレンストモグラフィ(OCT)は放射線障害のない医療用の非侵襲イメージング技術としての重要性を確立した。新しい光源や手法、さらにはOCTを他の物質や別方式のセンシングに拡張する努力が、表面侵入深さや走査速度の限界を緩和している。

20年前に発明された光コヒーレンストモグラフィ(OCT)は、生物医学分野の診断および研究用のイメージング装置として、ニッチな用途を開拓している。OCTは生体組織を撮像する際に、高い空間分解能、非侵襲性、無害な近赤外(NIR )放射線といった強みがある。これらの強みによって、ほとんどの組織の分子組成に対する非感受性や散乱と吸収による約3mmに限られる侵入深さの弱みが相殺される。さらに、オーストリアのウィーン医科大学(Medical University of Vienna)のライナー・A・ライトゲブ氏( Rainer A. Leitgeb)はレビュー論文のなかで、「OCTは細胞の撮像と組織や器官の撮像との間の失われていた環をつなぐものになりそうだ」と記述し、医用イメージングにおける重要な能力を付言している(1)。
 今までのOCTは眼科の診断において最も成功した眼の透明性によって眼の後方まで光が完全に侵入できることにより、高い分解能での網膜の検査を可能にしている。もう1 つ、心臓病への応用が急速に進んでいるが、この場合は光ファイバのイメージバンドルを冠状動脈に通し、OCTによる動脈プラークの前例のないほど明瞭な検査が行われている。その他の多数の応用も登場し、蛍光やラマン測定などの診断技術を組み合わせたOCT 装置が開発されている。本稿は非常に活性化した応用分野を概観し報告する。

OCTの基礎

OCTは、生体組織から散乱する音波を記録して画像化する超音波イメージングの光学的な類似技術であり、干渉計を使用して試料を走査したときの後方散乱光と遅れのある参照ビームを結合して画像データを取得する。限定されたコヒーレンシーをもつ光源を使用すると、検出器に到達した多重散乱による光子は位相が参照ビームと一致しないため、直接散乱した光だけが記録される。画像のコントラストは組織内の屈折率の変化から得られる。
 画像データは図1に示す3つの方法のうちの1つを用いて取得する。最初に開発された時間領域測定法は、干渉計内の参照ビームの長さを調整して、深さの異なる散乱を測定する。時間領域システムは今でも使われているが、現在の測定の多くは周波数(またはフーリエ)領域装置を用いて行われる。周波数領域装置の1 つは、波長を固定した広帯域光源を使用し、散乱光と参照ビームの組み合わせを分光計に入れ、記録したデータを計算機で解析する。この第2の方法は反復走査して出力スペクトルを生成する光源を使用し、散乱光と参照ビームを結合して単一検出器に入れて、周波数掃引スペクトルを発生させる。この方法は多数の変形があり、多重ビームを走査して異なる深さの組織を測定する方法もある。
 OCT は組織内の屈折率差の検出ばかりでなく、光の位相、振幅または偏光に影響を及ぼす組織内のすべてを画像化して検出できる。例えば、組織内の偏光を監視すると、哺乳動物に共通して広く存在し、自然の複屈折を生成するコラーゲンの状態変化を検出できる。一連の周波数領域OCT画像を検出すると、組織を流れる血液のドップラーシフトを決定できる。
 800〜1300nmの波長の侵入深さは1〜3mmが標準になる。組織の1次近似は水であるため、水の1400nmの吸収バンドはOCTの侵入深さを厳しく限定するが、1550nmバンドは検査に有用な侵入深さが得られる。より短い800〜1300nm バンドの波長は最適のコントラストを確保できるが、その侵入深さは長波長よりも浅い。したがって、最適の波長は用途に依存する。
 広帯域光源はOCTに必要な短いコヒーレンス長が得られる。ランプが使われる場合もあったが、主として、パルスまたは波長可変広帯域レーザ、スーパールミネセントダイオード(自然放出を増幅するが共振器は不要)およびスーパーコンティニューム光源が使われる。周波数掃引OCTはレーザを使用し、狭いスペクトル線を発生して広帯域を迅速に同調する。標準の出力は1〜100mWの範囲にあるが、眼科がこの範囲の高い方を使うことはない。周波数掃引光源はスペクトル走査用のMEMSスキャナやその他の可動ミラーにも使われる。
 技術の進歩がOCT の進歩を牽引してきた。光源と検出器の改善が走査速度、分解能および検出感度を増加させた。ライトゲブ氏は、最初のOCT スキャナが1991年に実証されて以来、その走査速度は1000倍になったと記述し、空間分解能がさらに向上し、近未来のOCTはその場生検が細胞の分解能で可能となり、手術の失敗率は減少し、精度が向上すると付け加えている。

図1

図1 3種類のOCTを示している。(a)時閻領域OCTは低コヒーレンス光源の出力が干渉計の2つのアームに分岐され、その1つが試料を走査し、もう1つが調整可能な時問遅れを生成する。2つのアームは位相整合されているため、戻り光は特定の深さから後方散乱した光だけによる建設的干渉が起こる。(b)周波数領域OCTは広帯域光源からの光を試料アームと参照アームに分離し、次に、両者のビームを再結合し、分光計を通して検出器アレイに入れる。(c)波長掃引OCTは高速波長掃引レーザ光源からの光を試料アームと参照アームに分離し、次に両者を検出器アレイに入れて再結合する。いすれの場合も出力は計算機に入り、データ処理と画像再生が行われる。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2012/02/201202_0022pf.pdf