光学系の設計に利益をもたらすハイブリッド光学部品
ハイブリッド光学部品は多要素の光学系の設計を置き換えることができ、標準的な光学部品に利点を提供する。それらはイメージング、広帯域照明、レーザアプリケーションなどにおいて理想的な光学系となる。
マシンビジョンやフォトニクスなどの分野の進歩は、高性能の光学部品と小型の光学系の増加を可能にし、光学部品設計の継続的な変化を牽引している。現在は多要素光学系の設計を置き換えできるハイブリッド光学部品が登場し、より優れた性能を最小の光学系サイズで実現して、顧客の要求に対応している。
ハイブリッド光学部品の名称は、光を操作する屈折面と回折面の両方に由来している。ハイブリッド光学部品の光学的な力は、2つの面からの光の相互作用で定義され、2つの面のそれぞれの力を加算して算出する。方程式1aと1bは、ハイブリッドレンズの与えられた波長におけるそれぞれの屈折力と回折力を示す。
回折面(C2)の波面出力係数はラジアンの単位で特定され、高次球面収差の項が含まれ、光学的な力よりも大きな影響を及ぼす。光線追跡シミュレーションソフトウエアを用いてハイブリッド光学系を設計するときは、ユーザマニュアルの参照が重要になる。いくつかの符号はラジアンではなく、光学系の位相を特定している。
ハイブリッド光学系の製作
通常のハイブリッド光学系の製作は2つの技術のうちの1つ、つまり、ダイヤモンド旋削または射出成形を使用する。ダイヤモンドチップ工具によるレンズの機械的成形が含まれるダイヤモンド旋削は、単一部品の繰返し製作に適している。しかしながら、ダイヤモンド旋削は個別のレンズを製作する機械的工程と時間が必要になるため、10mm以下の直径をもつレンズの大量生産への適用は難しく、不可能な場合もある。
溶けたプラスチックを金型に充填してレンズを製作する射出成形は大量生産に適している。射出成形は量産コストがダイヤモンド旋削よりも安いが、プラスチックはガラスに比べると安定性に欠けるため、特別な注意が必要になる。適切な冷却に失敗すると、成形後のレンズには収縮と物理的応力の付加が起こり、いずれもレンズの光学的性質に障害をもたらす。赤外(IR)スペクトルの場合はカルコゲナイドガラスを射出成形することでハイブリッド光学系が得られる。
ハイブリッド光学系の利点
ハイブリッド光学部品は伝統的な光学系に比べると、部品数の減少による光学系サイズの簡素化ばかりでなく、いくつかの付加的な利点が得られる。その1つとして、単一ハイブリッドレンズは色収差の低減や排除が可能になる。色収差は通常のレンズを使用して異なる波長を集光したときに起こり、その焦点は光学軸上の異なる場所に生成される。補正をしない色収差は像に沿った着色フリンジが明瞭に現われる。
最適な色補正を行うには色補正理論の理解が必要になる。ハイブリッド光学系の場合、回折面と屈折面の両方が光学部品として機能する。色収差を除去するには、分散を補正する補正光学系が必要になる。分散は波長による焦点距離の変化として定義される。方程式2は分散によるレンズの屈折力の変化と波長との関係を定めている(1)、(4)。
下付き文字のs、mおよびlは、それぞれ短波長、中波長および長波長を意味している。Vは分散の逆数である。可視光のVはアッベ数になり、不可視光のVはV数と呼ばれる。
従来の色補正レンズのアクロマートは2つの屈折レンズの屈折力と分散を釣り合わせて、短波長と長波長を共通の焦点にする。しかし、方程式3aと3bから明らかなように、屈折分散は正値だが、回折分散は負値になる。
したがって、ハイブリッド光学系は、屈折面の光学的力と回折面の光学的力を釣り合わせて単一レンズ内の色補正を実現する。方程式4aと4bを使用すると、屈折面の光学的力と回折面の光学的力を計算できる。
しかしながら、分散には非線形性があるため、この補正は2つの波長が両極端にある場合にだけ適用できる。したがって、分散非線形性の尺度としての部分分散は、中央の波長が両極端の波長と相対的にデフォーカスする2 枚レンズの二次色を計算するときに考慮すべき重要な因子となる。二次色は方程式5を用いて計算される。ここで、Δは屈折から回折への変化を意味している。
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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2012/02/201202_0038feature04.pdf