分析科学への応用を見出したLDLS

ホーリン・チュー、ポール・ブラクボロウ

超広帯域レーザ駆動光源(LDLS)は、自然科学で必要とされる要求を満たす長寿命と高い空間およびスペクトル安定性を持つ。

今日の生命科学と材料科学における最先端の研究と生産技術は、明るく非常に安定した長寿命の光が得られる光源を必要としている。超高輝度を広い波長帯(170~2100nm)にわたり放射する新光源が分光およびその他の用途向けに開発され、その優れた費用対効果と長寿命は、従来の重水素(D2)ランプ、タングステン・ハロゲン(TH)ランプ および短アークキセノン(Xe)ランプの置き換えを可能にしている。米エナージェティク テクノロジー社(Energetiq Technology)が開発してレーザ駆動光源(LDLS)と名付けた新しい光源は、従来の光源の十倍にもなる非常に長い寿命が得られ、その高温プラズマはタングステン電極との相互作用がないため、競合品よりもはるかに安定に動作する。

従来の光源

今日の分光およびその他の分析機器は、その多くが試料の組成や構造の決定を支援する高輝度で広帯域の光源を必要としている。伝統的な光源は測定対象のスペクトル領域、つまり、深紫外(DUV)から可視を経由して近赤外(NIR)までの約170から1100nmの波長を1台で測定することはできない。例えば、一般の分析機器は高輝度のD2ランプをTHまたはXeランプと組み合わせて広帯域の用途に対応する。1台の機器に複数のランプを使用すると、光源の使用効率が低下し、余分な費用も必要になる。また、これらのランプの標準的な寿命は500~2000時間であるため、ランプの度重なる交換と機器の較正が必要になる。
 DUV波長の場合、従来の光源の多くは放射輝度が低く、このことが機器能カの制約要因になる。複数のランプを使用する機器はランプのスペクトルの不整合、低い輝度によるスループットと感度の低下、各ランプの使用時間の相違などが起こるため、それらへの対応も必要になる。多くの場合、光学装置の設計者は複雑性や費用の面で問題のある複数のランプを避け、1つのランプだけを使用するが、一般に、D2またはXeランプだけでは機器のスペクトル応答と応用の柔軟性が制約される。溶融石英の光学窓をもつD2ランプは180~380nmの波長範囲に有用なUV放射ランプになる。380nmより長波長では放射輝度が低いため、THまたはXeランプを使用して可視とNIRの放射を確保する。D2ランプは低圧放電が欠点であり、プラズマのパワー密度が低いため、200nmであってもUVの放射輝度が低くなる。また、プラズマサイズが比較的大きく、通常は0.5から1mmの直径になるため、小さなエタンデュヘの集光、例えばコア直径200μmの光ファイバや高分解能分光計の狭いスリットに集光することは難しい。溶融石英の光学窓をもつD2ランプのスペクトル放射ピークは200nm近傍にあり、その値は一般に0.1mW/mm2-nm-sr以下になる。この放射輝度はランプの標準的な寿命の2000時間にわたって連続的に減少する。
 THランプは、一般に400nm近傍からNIRまでのスペクトル範囲に使われる。THランプは動作温度が限定され、タングステンフィラメントのサイズが大きい(ミリメートルサイズ)ため、その輝度はかなり低く、とくに400nm近傍では低くなる。広帯域の用途の場合、THランプは一般に高輝度D2ランプと組み合わせて使用する。この組み合わせによる光源は2 つのランプの発光が低い400nm波長近辺の出力が低いことが欠点になる。つまり、2つのランプの発光体は同一の空間にスポットを結ばず、両者の輝度は低いため、光捕集効率が低下する。また、2つのランプの1つに何らかの劣化や変化が起こると、出力スペクトルが変化し、再較正が必要になる。
 Xeの短アークランプはNIR から250nmまでの広いスペクトル領域をもつ。このランプはタングステン電極により生成されるプラズマ温度が限られるため、300nm以下のスペクトル放射輝度は急激に減少する。Xeアークランプのスペクトル放射輝度のピークは500nm近傍にあり、1mW/mm2-nm-srの大きさになる。Xe ランプはD2およびTHランプに比べると安定性が非常に悪い。Xeランプのアークプラズマは基本的に不安定だが、それはランプが古くなりカソードが腐食すると、カソード面上のアークスポットが空間的に動くことによる。その雑然とした動きと点滅は使用時間とともに激しくなり、このランプの低雑音分光法への使用は許容できなくなる。短アークXeランプは1000時間が標準の寿命であるため、機器の寿命期間は何回もの交換が必要になる。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2012/02/201202_0034feature03.pdf